ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

NTTが解決したケーキ分割問題と行動経済学

2010å¹´12月25æ—¥ | Weblog
NTTが「ケーキ分割問題」を新アルゴリズムで解決したという。ところで「ケーキ分割問題」とは何かというと、一つのクリスマスケーキを2人で公平に分けるには、どこにナイフを入れたらいいか―。」という問題らしい。

asahi.com(朝日新聞社):NTT、「ケーキ分割問題」を新アルゴリズムで解決 - 日刊工業新聞ニュース - デジタル

で、そのアルゴリズムはどのような考え方かというと、「(1)AとBがそれぞれ、切りたいケーキの場所を(第三者などを通じて)同時に申告する(2)切りたい場所が両者で異なっていた場合、そのちょうど中間にナイフを入れる(3)申告した場所を含む側のケーキを両者が得る―というもの」。もちろん、(1)で申告した場所が両者で一致した場合はそこで切り分ければいいし、この方法で行えば、2人が満足のいく形でケーキを分割することができる。

この結論だけを聞くと、正直、どこの何が凄いのだろうかと思ってしまう。いやいや、それは普通だろう、と。

しかしこれまでの解法が、「(1)Aがケーキを切る(2)Bが好きな方を選ぶ(3)残りをAが取る」というものだったらしいのだが、これだとBの好みが優先されることになる。

まぁ、はっきり言えば「数学」という象牙の塔の中での話でしかないのだけれど、結局、現実としては当たり前の話でも、こうした抽象化された数学的アプローチが可能となると、それが応用され様々な現実社会の問題を解決するためのシステムに利用することが可能となる。つまり「ケーキ分割」の問題だけでなく、利害関係の重なるような問題に対して「適切」/「公平」な配分が可能となるのだ。

しかしこれを現実に応用しようとするならばまだまだ解決しなければならない問題もあるだろう。

これはAとBという両者がそれぞれの「欲しているもの」を申告することで成り立つ解法だ。つまり相手の「欲しているもの」を気に留めずに、自身の「欲しているもの」を互いに並べるということが前提となっている。しかし現実には、相手の動きを読んだ上で自身の行動を決める。

例えば、Aはaとbとcとdが欲しいと思い、Bはcとdとeとfが欲しいと思った場合、cとdを分割することがこの解法となる。が、現実にはもしAがこのアルゴリズムを知っていたとした場合、Aはcとdの両方を手に入れるためにaとbとcとdとeとfを欲しいというかもしれない。そうなれば分割の対象はcとdとeとfとなる。cとd/eとfとで分割した場合、Aは欲しいものを全て手に入れることになる。

もちろん申告の際の条件を合わせるといったことも可能だろうが、欲しいものには「優先度」や「重み付け」がある。仮に欲しいものを4つに合わせるとしてもその重みが公平になるわけではない。

となると、いくら適切に働くアルゴリズムだろうとしても、「戦略」や「思惑」によってそれが本当に適切に働くかどうかわからない。「ゲーム理論」や「行動経済学」が示したように、結局は人間は静的な経済学的市民のように常に合理的な行動をするとは限らず、自身の利益のためにはズルいこともするし、感情的・ヒューリスティックな判断で行動を選択することもあるのだ。

そうした総合的な判断を解決しない限り、「使える」モデルにはならないのだろう。


経済は感情で動く― はじめての行動経済学 / マッテオ モッテルリーニ - ビールを飲みながら考えてみた…



経済は感情で動く―― はじめての行動経済学 / マッテオ モッテルリーニ

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