goo blog サービス終了のお知らせ 

ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

坂の上のクラウド:プライベートクラウドの始まりと終わり

2010å¹´12月26æ—¥ | ãƒãƒƒãƒˆãƒ¯ãƒ¼ã‚¯
かってのASPブームとその終焉を知っている人間からすると、今回のクラウドも一過性のブームと感じているかもしれないけれど、今回のクラウドブームは本物だろう。とはいえ、一口にクラウドと言ってもそこには大きな断絶がある。1つは「プライベート・クラウド」と呼ばれているものであり、もう1つは「パブリック・クラウド」と呼ばれているものだ。

実際、この2つは似て非なるもの。一般的に「パブリック・クラウド」とはサービス事業者が管理する「共通基盤」上のサービスを利用者に貸し出すモデル。多くのユーザーで運用コストを負担し合う分、利用料は安いものの、サービスの内容や品質、セキュリティポリシーは事業者側が定めた内容にならざろう得ず、柔軟性は低い。

これに対して「プライベート・クラウド」はユーザーのIT部門が独自に構築したり、ユーザー独自のサービスとしてクラウド事業者に構築・運用を委託したりするものをいう。当然ながら、ユーザー独自仕様のため、サービス品質も独自に定めることができるし、既存の他のシステムとの連携も自在だ。しかしその分、コストはかかる。

企業のIT部門・情報システム部門の立場からすると、パブリック・クラウドは使いたがらない。彼らは情報システムの運用に対して責任がある以上、そのシステムの仕組や品質、セキュリティに対しても自身で把握・管理したいと考える。パブリック・クラウドではどうしても「ブラックボックス」になってしまう。

しかし経営陣からのコスト削減の圧力は高まるばかりだ。最近ではシステムのことを分かっていない経営陣でも「クラウド」という言葉は知っている。しかも「クラウド=安価」という先入観が強かったりする。そこでIT部門のとる戦略が「(プライベート)クラウド化します」というもの。経営陣には「クラウド」という言葉で納得させつつ、自分たちが管理しやすいシステムを構築してしまうのだ。

もちろんプライベートクラウドであろうとも「クラウド化」するメリットはある。

もちろん定義の仕方や契約スキームによってそれは大きく異なるという前提にはなるが、

1)運用コストの削減
2)ITシステムのオフバランス

「運用コストの削減」というのは、例えそれが自社仕様のシステムだとしても、クラウド事業者に運用・保守までアウトソースすることで、IT部門のコストを削減することができる。ただし「パブリック」クラウドであればその効果は大きいかもしれないが、「プライベート」クラウドの場合、その効果を測ることは難しい。IT部門の稼動(内部コスト)は減るかもしれないが、キャッシュという意味では増えることだってありうる。

自社仕様のITシステムであろうとも、クラウド事業者側に資産を計上すれば、バランスシート上は軽くなる。これが「ITシステムのオフバランス」だ。こちらも「パブリック」クラウドであれば効果は大きい。クラウド事業者が用意する「共通基盤」に相乗りするのだから、クラウド事業者も積極的に投資を行うだろう。しかし「プライベート」クラウドの場合、そのシステムを他のユーザーに流用できるわけではない。クラウド事業者側からすれば、リスクを避けるためにも契約期間は必然的に長くなる。

クラウド事業者側での減価償却期間とあわせた5~7年くらいの契約となれば、クラウドが一般的にもつ「オンデマンド」での利用といったものからはほど遠い。

もちろん「パブリック・クラウド」では任せきれない部分はあるのだろうが、長い目で見れば、やはり「パブリック・クラウド」中心の時代になっていくのだろう。それは今の企業ネットワークの変遷とも重なる。

かって「専用線」中心の時代、DA1500(1.5Mbps)、DA128(128kbps)が登場し低価格化が進んでいたとはいえ、まだまだ高価だった。その一方でベストエフォード型のインターネットが登場し、VPNを利用すれば安価に利用できるようになった。しかし企業ネットワークとして利用するには、品質にしろ、セキュリティにしろ不安がある。IT部門としては、なかなか利用に踏み切れない。

そんな中に企業向けの「品質」「セキュリティ」、またIPの「特性」と「価格」を両立させたネットワークサービスが登場する。それが「IP-VPN」や「広域イーサ」と呼ばれるサービスだ。これらは「専用線」のように2点間をつなぐのではなく、キャリアの中継網の中に仮想的にユーザー毎の中継網を用意し、その中継網と各拠点を結ぶことで、多地点のデータのやり取りを可能とし、高速かつ安価なネットワークを作りあげることを可能とした。

それまでの専用線に比べれば高速かつ安価なネットワークが構築可能となり、インターネットVPNのようなセキュリティや信頼性への不安から解消される。企業への導入が進むことになる。

しかしそうしたサービスの登場から10年も経つと状況は変わりつつある。

企業ネットワークのトラヒックは増える一方で、IP-VPNのコスト削減が課題となり始める。その一方で
インターネットやBフレッツ/NGNのようなベストエフォード型サービスの品質も向上し始める。IP-VPNの方が「品質」や「安心」が高いことは間違いがない。しかし1拠点あたり10万以上するIP-VPNと2~3万で済むインターネットVPNやフレッツ網を使ったVPNとの間に、価格ほどの「差」があるのか――その結果、IP-VPNからエントリー型のVPNへのシフトが始まる。

これはまさにクラウドも同じ構図だろう。

「オンプレミス」型のITシステムは「専用線」、「プライベート・クラウド」を「IP-VPN」、「パブリック・クラウド」を「エントリー型VPN」に当てはまる。今はIT部門も「プライベート・クラウド」を重視しているが、やがて「パブリック・クラウド」の品質の向上と価格差によって「パブリック・クラウド」にシフトせざろうえないのだろう。

しかもプライベート・クラウドもパブリック・クラウドも利用している「技術」基盤は同じものだ。ネットワークの時以上にシフトは早いのかもしれない。


坂の上のクラウド:クラウド・SaaS普及の背景 - ビールを飲みながら考えてみた…

SaaS、クラウド時代に必要なSIerの営業思考 - ビールを飲みながら考えてみた…

4 ã‚³ãƒ¡ãƒ³ãƒˆ

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も同意します (らお)
2010-12-27 02:32:39
中間的な位置づけのインフラは価格と信頼性の折り合いがつけばつくほどより低価格志向に移行しますから、ベンダー側はここからどうやって金のなる木を作り出すのか見ものです。

ただ固定通信業界の場合、その後の価格競争と競合する技術(モバイルブロードバンド)との狭間に立たされてしまった事によって、今ではすっかりその存在自体が薄くなってしまいました。クラウド業界の皆様もそうならない事を祈っています。
返信する
Unknown (beer)
2010-12-28 14:10:29
モバイルブロードバンドの成長する要件が揃ってきたので、固定系は厳しいですね。
あくまで中継網へのアクセス回線として飲み込むか、安定性・速度・信頼性などで差別化していくか…難しいところですね
返信する
Unknown (cloud)
2011-10-11 18:33:15
プライベートクラウドが日常生活から遠いだと思う方が多いだけど、
実際にそれによると、医療、教育などの方面がますます良くなった例がいっぱいだ。
それから、営業側がコストも減るし。
確かに科学進歩がいいだね。
返信する
Unknown (beer)
2011-10-12 00:16:44
確かに公的な機関、セキュリティやプライバシー保護が求められるようなシステムはまだまだプライベートクラウドへの要望が高いですね。ただ心理的な観点が強いというのもまた事実で、本当にプライベートクラウドの必要性をもっとSIerは訴えるべきだとは思います。
返信する

コメントを投稿