新型インフルエンザを勝手に「シンフルエンザ」とよび、「フェーズはいま8くらいですか?」と聞いていた学生たちが冬休み明けで大学にもどってきました。
授業でエイズの話をしたら、「そういえば、感染は爆発したのですか?」という質問がでました。
・・・言っている本人が主語と述語が???なことに気づいてはいませんが、指摘そものもは大切な点なので紹介したいとおもいます。
『感染爆発』ということばは、HIV流行初期の「このままどんどん感染者が増えて感染爆発がおきるのだ」といった表現からくるものです。爆発の定義はとくにありませんでしたが、じゃんじゃん感染が広がるイメージではないかとおもいます。
現状はどうか。少しマニアックに書くとすると、日本では異なるリスク層・世代・地域にわたって広がっていない状況だとおもいます。
年にほんの数名だけ報告のある自治体も、「県内感染」ではなく、大流行地域からのお持ち帰りであることが多いことがわかっています。
全体では、新規に報告される9割以上が男性です。このうち多くは同性間の性的な接触・性交による感染です。「異性間」「不明」と報告される症例のウイルスを検討すると、同性間で流行しているタイプが一定数おり、実際には男性同性間の割合はもっと高いだろうと推定されています。
つまり、日本では数年間モニタリングし続けた結果、「男性と性行為をする男性に限局して流行」している状況があります。 その中では10代などの若年層にも広がっていますが、では、女性では本当に広がっていないのか?
バイアスがあるとしたら、自発的に検査を受ける人にMSMが多い、ということです。
しかし、保健所等からの報告は全体の3分の1です。他はほとんど医療機関です。
『爆発』が想定していたのは女性、それも性風俗産業従事者やハイリスク層ではなく、一般人口の女性に広がる事態です。
これを検証するためには、住民検診などの検体を用いるUnlinkedのサーベイをするしかありません。献血や妊婦健診・ルチン検査であがってくるなかでもそれほど大きな数にはなっていません。
「誰でも感染する」とか、「みんな検査を受けよう」というようなメッセージはミスリードになっています。(予算のムダともいう)
世界はどうでしょうか。WHOで長くAIDS対策にかかわってきたDr.De Cockもサハラ砂漠以外では異性間での流行は小さな規模であること、よりフォーカスをしぼった対策をしないと、と指摘します。
outside sub-Saharan Africa, it was confined to high-risk groups including men who have sex with men, injecting drug users, and sex workers and their clients.
"You will not do much about Aids in London by spending the funds in schools. You need to go where transmission is occurring. It is true that countries have not always been good at that."
http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/threat-of-world-aids-pandemic-among-heterosexuals-is-over-report-admits-842478.html
針を使う薬物使用でのHIV拡大ルートは日本ではほとんどありません(現時点で)。
セックスワーカーの調査は研究班がしていますが、定期健診に婦人科にきているグループでHIVが広がっているようなエビデンスはみつかっていないそうです。(慈恵の小野寺先生の研究班)
女性に広がるルートは男性間での流行からの伝播ですが、男性とも女性ともセックスをするHIV陽性の男性(MSM/W:Men who have sex with men and women)の人から聞く話では、例えば、「女性とセックスをするときはコンドームを使用する。だって避妊に必要だから」という説明もあり、女性にどのように拡大をしていっているのかがいまいちよくつかめていません。
1割弱、新規に報告される女性はどのように感染に気づいているのか?
日本の女性の新規HIV症例の半数近くが妊婦検診で判明しています。
(妊娠しないと気づけない?)
昨年のエイズ学会(名古屋)で国立国際医療センターから提示されたリスク因子として、人生のある時点で高プレバレンス地域出身の外国人との性的接触があった、ということが指摘されていました。これは理屈上もっともです。そしてそこでコンドームが使用されていないと考えられます。
日本でこのままgeneral populationにHIVが広がらないためには、HIV/AIDSが・・という以前に(あるいは、あえて持ち出さずに)地道にコンドームを適切に使えるような支援が必要なのだと思います。
ハイリスク層ではウイルス量を下げる「治療としての予防」が注目されています。
治療開始の基準を早めて、治療を受ける人の総数を増やせばお金がとてもかかりますが、先進国はよりそちらにシフト中。
授業でエイズの話をしたら、「そういえば、感染は爆発したのですか?」という質問がでました。
・・・言っている本人が主語と述語が???なことに気づいてはいませんが、指摘そものもは大切な点なので紹介したいとおもいます。
『感染爆発』ということばは、HIV流行初期の「このままどんどん感染者が増えて感染爆発がおきるのだ」といった表現からくるものです。爆発の定義はとくにありませんでしたが、じゃんじゃん感染が広がるイメージではないかとおもいます。
現状はどうか。少しマニアックに書くとすると、日本では異なるリスク層・世代・地域にわたって広がっていない状況だとおもいます。
年にほんの数名だけ報告のある自治体も、「県内感染」ではなく、大流行地域からのお持ち帰りであることが多いことがわかっています。
全体では、新規に報告される9割以上が男性です。このうち多くは同性間の性的な接触・性交による感染です。「異性間」「不明」と報告される症例のウイルスを検討すると、同性間で流行しているタイプが一定数おり、実際には男性同性間の割合はもっと高いだろうと推定されています。
つまり、日本では数年間モニタリングし続けた結果、「男性と性行為をする男性に限局して流行」している状況があります。 その中では10代などの若年層にも広がっていますが、では、女性では本当に広がっていないのか?
バイアスがあるとしたら、自発的に検査を受ける人にMSMが多い、ということです。
しかし、保健所等からの報告は全体の3分の1です。他はほとんど医療機関です。
『爆発』が想定していたのは女性、それも性風俗産業従事者やハイリスク層ではなく、一般人口の女性に広がる事態です。
これを検証するためには、住民検診などの検体を用いるUnlinkedのサーベイをするしかありません。献血や妊婦健診・ルチン検査であがってくるなかでもそれほど大きな数にはなっていません。
「誰でも感染する」とか、「みんな検査を受けよう」というようなメッセージはミスリードになっています。(予算のムダともいう)
世界はどうでしょうか。WHOで長くAIDS対策にかかわってきたDr.De Cockもサハラ砂漠以外では異性間での流行は小さな規模であること、よりフォーカスをしぼった対策をしないと、と指摘します。
outside sub-Saharan Africa, it was confined to high-risk groups including men who have sex with men, injecting drug users, and sex workers and their clients.
"You will not do much about Aids in London by spending the funds in schools. You need to go where transmission is occurring. It is true that countries have not always been good at that."
http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/threat-of-world-aids-pandemic-among-heterosexuals-is-over-report-admits-842478.html
針を使う薬物使用でのHIV拡大ルートは日本ではほとんどありません(現時点で)。
セックスワーカーの調査は研究班がしていますが、定期健診に婦人科にきているグループでHIVが広がっているようなエビデンスはみつかっていないそうです。(慈恵の小野寺先生の研究班)
女性に広がるルートは男性間での流行からの伝播ですが、男性とも女性ともセックスをするHIV陽性の男性(MSM/W:Men who have sex with men and women)の人から聞く話では、例えば、「女性とセックスをするときはコンドームを使用する。だって避妊に必要だから」という説明もあり、女性にどのように拡大をしていっているのかがいまいちよくつかめていません。
1割弱、新規に報告される女性はどのように感染に気づいているのか?
日本の女性の新規HIV症例の半数近くが妊婦検診で判明しています。
(妊娠しないと気づけない?)
昨年のエイズ学会(名古屋)で国立国際医療センターから提示されたリスク因子として、人生のある時点で高プレバレンス地域出身の外国人との性的接触があった、ということが指摘されていました。これは理屈上もっともです。そしてそこでコンドームが使用されていないと考えられます。
日本でこのままgeneral populationにHIVが広がらないためには、HIV/AIDSが・・という以前に(あるいは、あえて持ち出さずに)地道にコンドームを適切に使えるような支援が必要なのだと思います。
ハイリスク層ではウイルス量を下げる「治療としての予防」が注目されています。
治療開始の基準を早めて、治療を受ける人の総数を増やせばお金がとてもかかりますが、先進国はよりそちらにシフト中。