サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大そうじへの備え
souchi.cocolog-nifty.com
民法714条は,「責任無能力者の監督義務者等の責任」という見出しの下に,「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において,その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は,その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,監督義務者がその義務を怠らなかったとき,又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。」(1項),「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も,前項の責任を負う。」(2項)という規定を置いています。 そこでいう「前二条」とは,「責任能力」に関する規定で,「未成年者は,他人に損害を加えた場合において,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,その行為について賠償の責任を負わない。」(712条),「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は,その
小保方さんは,昨年末すでに理研を退職していました。退職した労働者には,懲戒処分はできません。したがって,小保方さんは,「懲戒解雇相当」との報告があっただけになりました。ただ,新聞によると,処分となっていたので,処分をしたということかもしれませんが,その処分の法的意味はどういうことなのでしょうか。何をどう処分したかは,しっかり報道してほしいです。理研が処分したということで,それをそのまま流したのでしょうか。 普通に考えると,懲戒処分ができない以上,懲戒手続を進めたのは,おかしいと思います。事実確認は必要でしょうが,それは懲戒手続とは違う場でなされるべきです。理研の他の幹部の懲戒手続と同じ枠組みでやったのかもしれませんが,個人の重大な利益にかかわることなので,簡単に一括処理するのはいかがなものかという気もします。懲戒手続は,刑事手続と同様の厳格な手続的正義が求められるものです。 懲戒解雇相
BSフジのプライムニュースは,よく見ているのですが,先日は,東大の石川健治さんが出ていましたね。前にも出演したことがあるそうですが,今回初めてみました。石川さんとは一緒に仕事をしたこともありますし,法学セミナーで座談会もやっています。彼は天才型の学者なので,テレビ向きではないと思っていましたが,わかりやすく語っていましたね。 憲法というのは,立憲主義という価値観を体現した規範であり,憲法を論じるというのは,そうした価値観に即したルールでやるべきで,そのルールを無視した議論をするのは,反憲法的なもので,憲法を語ることにならないということを言っていたと思いました。憲法を語るときに立憲主義と無縁な価値観を持ち込むのは,エセ憲法論であり,それをやりたければ,憲法屋の看板を下ろせということではないでしょうか。 石川さんと百地章さんを並べるのは,マスコミ的には面白いのでしょうが,石川さんにとっては
今朝の日経新聞によると,ホワイトカラー・エグゼンプションの適用対象について,年収要件を1000万円以上とするといった議論が出ているそうです。職務の範囲の明確性の必要性なども言われているそうです。それと課長代理は対象者としないそうです。 ちょっと変な議論です。職務の範囲の明確性は,職務の範囲が不明確だから長時間労働になるといった俗説があるからでしょうが,ホワイトカラー・エグゼンプションの議論では,仕事のために労働時間がある程度長くなるのは仕方がないという制度でもあるので,もし職務明確性を必須の要件とすると,それはかえって窮屈なものとなるでしょう。適用対象の業種を制限することは必要ですが,そのことと職務の明確性はまったく異なる問題だと思います。ホワイトカラー・エグゼンプションは「ジョブ型」に適しているという趣旨のことを,上智大学の富永晃一君が,中央経済社の「ビジネス法務」の7月号に書いており
産業競争力会議がホワイトカラー・エグゼンプションに関する提案をしそうだということで,それを先取りして朝日新聞が今朝の朝刊の一面で紹介をしていました。ホワイトカラー・エグゼンプションは,数年来に実現するし,実現させなければならないと,いろんなところで語ってきた私としては,いよいよかという気もしています(その後,日経新聞の電子版で実際に提言があったことを確認しました)。朝日新聞の見出しは,「残業代ゼロ」一般社員も,というもので,これを見ると労働者は不安に思うでしょう。一般社員に,どんどんホワイトカラー・エグゼンプションが押しつけられるというような不安を煽ってはいけないと思います。もし,ホワイトカラー・エグゼンプションが,普通のサラリーマンにも適用されるなんてことになると,政権は倒れるでしょう。 「残業代ゼロ」は,民主党が言い出したものだと思いますし,ホワイトカラー・エグゼンプションの本質を客
正社員という言葉には法律上の定義がありません。そのため,使い方を間違うと話の内容が支離滅裂になることがあります。正社員の多様化ということが言われますが,だからといって,正社員概念が混乱してよいということにはなりません。22日の日経新聞で「派遣会社 正社員を増員」という記事があったので,派遣会社が,自社の正社員を増員したのかと思っていると,そうではありませんでした。どうも無期の派遣労働者を増やしたということのようです。でもはっきりしません。派遣会社の社員には,派遣会社の事務などを行う正社員もいるし,派遣用の労働者(派遣労働者)もいます。派遣労働者とするときは,そうであることを労働者に明示しなければなりません(労働者派遣法32条)。この記事で正社員というのは,派遣労働者のなかで期間の定めのない者のことを指すようです。これは現在の改正案では,無期雇用派遣と呼ばれるものに従事する労働者たちです。こ
サッカーのJリーグの浦和レッズのサポーターが入口のところに「Japanese Only」という横断幕を掲げたことが人種差別的であるとして,無期限入場禁止の処分を受けたというニュースが,NHKの9時のニュースのトップでかなりの時間を割いて流されていました。日本人以外のサポーターは,ゴール裏の「聖地」には入ってほしくないというのが,この横断幕の意図であるということのようです(真意はよくわかりませんが)。確かに,こういう行動は好ましくないでしょうし,チームにとっては外国人の客も大切でしょうから,そういう営業妨害行為をした者に何らかの処分をしようとすることも理解できないではありません。しかし,報道で流れていただけの情報から判断すると,「Japanese Only」は人種差別に仮に該当するとしても,悪質性は弱いものでしょう。背景となる文脈が何かあって,この文言から,特定の人種や個人を排撃していること
先日発表された今年の4月から6月期の労働力調査(総務省)によると,前年比で雇用は増えたが,正社員の雇用は増えていないと出ていました。日経新聞の8月14日の記事では,「企業の多くは景気回復による労働力不足をひとまず人件費負担の軽い非正規で補っているようだ」と書かれていました。これを解雇規制の影響とみてよいかどうかはわかりませんが,経済学の研究者が言うような,解雇規制があると,景気がよくなっても,正社員の雇用は増えないという主張と整合的なデータではあります。 正社員は,長期的な雇用を保障する人材であるので,それに値する人でなければなりません。景気が少々上向きでも,簡単には正社員としては採用しないということでしょう。もう少し景気の回復の様子をみるということかもしれません。ただ正社員の数はすでに飽和状態で,景気がよくなっても,これ以上,増えない可能性もあります。また必要な正社員は,非正社員から入
最低賃金の引上げの記事が出ていましたね。もう悪口を書くのはやめておきます。これからいったいどういうことが起こるか,見守りましょう。最低賃金が上がると誰が利益を得るのか。誰が損をするのか。学生は喜ぶでしょうが,パートはどうでしょうか。配偶者控除も見直し対象とされるそうですが,それまでは103万円の壁があるので,主婦パートは就労調整の時期が早くなるだけで,収入は増えないのではないでしょうか。と,ついつい悪口になりそうですが,もう少し違った視点もあります。中央最低賃金審議会というのは,いわば中央での賃金交渉的な意味もあります。労使の委員が交渉をして,公益委員が行事をやるという感じでしょう。例年は意見が一致せず公益委員見解で目安の答申をして終結するのですが,今年もそうだったのでしょうね。日経新聞記事では,「徹夜で審議した結果,学識者の委員が14円の目安を示し,最終的に了承された」とありますが,わか
最低賃金のことはよく書いてきたのですが,私なんかがどれだけ書いてもインパクトがありません。ただ,意外にこのブログをジャーナリストの方も読んでいるようなので,同じようなことを書いておきます。 厚生労働大臣が,中央最低賃金審議会に出席して,最賃引き上げを要請したそうです。日経新聞には,仁田道夫会長に,田村厚相が頭を下げる写真が掲載されていましたね。仁田先生も困っているんじゃないですかね。 最低賃金を上げると,日本の労働者の賃金が上昇するのでしょうか。成長戦略において,家計の購買力を高めることが必要ということはよくわかります。でも,前に批判したような春闘での賃上げ要請と同様,これも政府が介入してよいことはないのです。 第1に,最低賃金は,通常,正社員にはほとんど関係しません。正社員にとって大事なのはボーナス額です。最低賃金をいじっても,一番,日本の経済に影響しそうな正社員は動かないでしょう
朴一『「在日コリアン」ってなんでんねん?』(講談社)を読んでみました。あまり大声では言えませんが,かなりxenophobia的な要素が強い私であり,西洋はいいけど,東アジアはちょっとね,というような感覚がどうしても捨てきれない日本人です。もちろん個人レベルでは,むしろ台湾人は好きな人ばかりですし,西洋人のなかでもイギリスなどアングロサクソンは好きではないというようなところもあります。そこで韓国です。ヨーロッパ人からすると,日本と韓国なんてほとんど同じで違いがわからなくて,どうして仲が悪いのか理解できないというところでしょう。歴史的には,日本と韓国はなんだかんだ言ってライバルであり友人であり,ときには先生であり生徒であり,という関係です。私個人の韓国に対する感情は難しいところで,食べ物は口に合わないし,幼い頃から,何となく母親の韓国嫌いの感覚をひきずっているし,韓流ブームに顔をしかめながらも
辻太一朗『なぜ日本の大学生は,世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)を読みました。センター試験の見直し論なども出ている昨今,日本の若者の学力の向上が大きな関心を集めています。私が雇用システムの見直しのようなテーマで話をするとき,最後に行き着くところは,人材育成は企業に任せられなくなっているなか,大学などの教育機関の役割が重要になるという話なのです。ただ,具体的にどういうところから手を付けていくべきかについては,具体的な提言はできないでいます。 この本では,日本の大学生は小学生よりも勉強していないというショッキングな(でも,そう言われてみればそうだろうなという)指摘をしたうえで,その原因は,企業,学生,大学の双方が自分の利益となるように行動した結果,負のスパイラルが生じていることにあると述べます。特に目新しくはありませんが,でも重要な指摘です。とはいえ,三者のなかで最も重要なの
池田真朗『民法はおもしろい』(講談社現代新書)を読みました。なんとなく買ってしまったのですが,これが,ほんとうに面白かったのです。タイトルに偽りなしでした。一般の人でも無理なく入っていけるでしょうし,法律屋でも民法を専門にしていなかったら,素直に読み物として読んでいける感じです。著者の民法へのアモーレもよくわかりますし,最後のほうは,債権法改正についての著者の抑制しながらも,明確な反発もうかがえて(ここが本当は書きたかったのかもしれませんが),市民のための民法という視点で一貫しているので好感をもてます。 法律家になって良かったことの一つとして(というか,私が法学部に入った主たる動機なのですが),法律の無知で騙されないこと,というのがあります。その意味で,保証人にならないということは,民法を学んで実践的に意味のある第一のことでした。私は,親族といえども,絶対に保証人にはならないということで
規制改革会議では,何が何でも「限定正社員」を導入したいのでしょうね。私は,雇用ワーキング・グループでもずいぶんとネガティブな発言をして,新聞報道では,やや取り入れられているところもあるような気もしますが,どうしても気になるのは,これを雇用に関するルールの変更の問題としてとりあげることです。私は現行法の下で,そのルールをしっかり知って,人事管理をきっちりやれば,問題は解決すると思っています。それなのに,これをルールの問題とすると,解雇ルール一般に波及することになり,これは理論上ないし体系上,大きな問題が出てくるのです。 労働法の体系とは何か。それは,一口で言うのはなかなか難しいです。かつて短時間労働者法8条で,正社員と,それと同視すべきパートとの間での均等待遇規定が導入されたとき,これが日本の労働法体系において,それまで労基法3条,男女雇用機会均等法,労働組合法にしか雇用における私法上の効
今朝(14日)の日経新聞で,「政府は職種や勤務地を限定した「準正社員」の雇用ルールをつくる。15日に開く産業競争力会議で提案し、6月にまとめる成長戦略の柱とする。職種転換や転勤を伴わない分、企業は賃金を抑え、事業所の閉鎖時に解雇しやすい面がある。」という記事が出ていました。具体的な内容がわからないので誤解があるかもしれませんが,政府は本気で「準正社員」というタームを使うのでしょうかね。正社員というのは,労働法における実定法上の言葉ではありません。極端な話,社長がうちの会社はパートが正社員だって言っても,誰もそれが法的に誤りとは言えないのです。正社員というのは,企業において基幹的とされている人材を呼ぶときの名称にすぎず,誰が基幹的かは,会社によって異なるわけです。普通は無期でフルタイムの人を指しますが,そういう定義が労働法上あるわけではありません(労働調査や統計などでの定義は,また別のことで
ちょっと時間が開きましたが,続きです。この本私にとっての大きな副産物は,最後の方に出てくるローティという哲学者です。東氏が紹介してくれたローティの相対主義論が,妙に私の感覚に合うことに驚いたのです。ローティの相対主義は,東氏によると,公的領域は,いかなる正しさとも無関係な原理のもとで運営されるような,価値中立的で脱理念的なものであるべき,というものです。人間の連帯は,偏見をぬぐい去り,理性によって基礎づけられるべき,というのではなく,苦しむ人への想像力によって実現すべきというのです。たとえば,外国の○○人は嫌いでも,その外国人が目の前で苦しんでいれば,思わず手をさしのべようとするというのが連帯で,そうしたことを眼前にいない人に対しても想像力を働かせて同様の感情移入することにより連帯を実現していくことが大事だというのです。私は外国人やヨソ者への偏見をなくせというのは無理なことで,むしろ偏見が
前から予告していたように,日本法令から新作を出しました。『歴史からみた労働法ー主要労働立法の過去・現在・未来』です。労働法をいろいろな角度からみていこうという『~からみた労働法』シリーズの第3弾です。『就業規則からみた労働法』,『通達・様式からみた労働法』に続き,これもかなり面白い本になったのではないかと思います。主要労働立法を制定された古い順にみていき,その立法制定の理由,その後の変遷,今日の課題について書いています。全体を通して読むと,労働法の理解が深まると思います。この本では,「歴史」とはいっても,渡辺章先生たちのグループがなさっている労働基準法などの制定史を丹念にたどるようなタイプのことをやっているわけではありません。この本の問題意識は,まさに現代あるいは将来の課題について考えることにあり,そのために,それぞれの法律がどういう変遷を遂げてきたか最低限知っておかなければならないことを
学部の期末試験や東京労働大学の試験の採点をしていて感じたことがありました。今回の受講生が必ずしもそうだというわけではないのですが,労働法の初学者や労働実務に携わるが,法学部卒ではない人たちが,つまづくポイントがどこにあるのかです。それは法的な作法とでもいうものに関するようなのです。 法的な作法というと,いろんな角度から論じれますが,ここでは非常にシンプルに,普通の人が法律を使うときに必要となる事柄程度のことです。たとえば,法律の議論について,条文をベースに考えていくことは,私たちにはあまりに当然のことなのですが,なぜか条文をおろそかにしている人がいます。これをおろそかにしていると,たとえば誠実交渉義務は,労働組合法の条文で定められていると誤解したりすることが起こるのです。誠実交渉義務という言葉や内容を知っていると,初学者は,それで満足してしまうかもしれませんが,法的な議論というのは,条文
少し前の日経新聞に,「雇用流動化へ「40歳定年を」政府が長期ビジョン」という見出しの記事がありました。国家戦略会議のフロンティア分科会が野田首相に報告書を提出したなかで,「40歳定年制」というものへの提言があったようです。私は,この言葉の意味がよくわからなかったので,本体の報告書の該当部分を見たのですが,雇用に関する部分は,申し訳ないのですが,論評に値しないと思いました。雇用の流動化が大切ということのようですが,そのことと定年,有期雇用がどう関係するのか,論理的に説明されていないと思います。再教育機会の保障義務,適性に応じた雇用の確保,70歳以上の活躍の場,生産性,競争力,個々人の働きがい,といった言葉が踊っているのですが,そういうものをどう論理的に組み立てて政策を進めていくかを示す必要があります。 この報告書に限らないのですが,法律家以外の人と議論をすると,改革を提案するときに,法制度
最低賃金は,労働法のテーマなのですが,経済学でも重要なテーマです。拙著『キーワードからみた労働法』(日本法令)でも,最低賃金は最初の第1話に出てくるテーマです。法と経済にまたがって議論のしやすいテーマということで,川口大司さんとの共著『法と経済で読みとく雇用の世界』(有斐閣)でも,踏み込んだ議論をしています。 最低賃金規制は,労働条件の最低基準規制の典型ですが,同時に,そうした保護規制の副作用を論じやすいものでもあります。最低賃金を引き上げると,労働者にとって良いことだと言えそうなのですが,実は,非正社員の雇用が減ったり,逆に正社員の労働条件が低下したり,場合によっては商品やサービスの価格に転嫁されたりと,いろいろな問題があり,労働者全体や社会全体にとって,ほんとうに良い結果をもたらしたといえるか,という疑問が出てくるところなのです。労働法を学ぶ第一歩は,こうした規制のジレンマを知ること
女子大で教えていれば,思いがけない反応をしてくれることがあります。本日,私の『キーワードからみた労働法』(日本法令)の第7話の「合理的配慮」を素材に,障害者雇用について講義をしました。例年にないような思わぬ反応があって,ちょっと驚きました。雇用率に達成した事業主に調整金が支給されるということについて,障害者を雇ってお金をもらうというのは「汚いやり方」と発言する女子大生が相次いだのです。こちらが唖然とするのですが,雇用率を達成しない事業主がお金を払って雇用義務を免れるほうが問題では,という言い方をしてみても,お金を払っているからいいのだ,と言うのです。「たくさん障害者を雇っているから立派ではないか,何が汚いの?」と尋ねても反応は鈍く,お金をもらうということに対する何か嫌悪感があるようです。ただ,だから現在の雇用率制度がダメということでもなく,結果として,仕方がないんだけれど,たくさん障害者を
先日,濱口桂一郎さんと企業の方二人と,株式会社ニッチモがやっておられる「第12回HRmicsレビュー」に呼ばれて一緒に座談会に登壇してきました。その内容(高齢者雇用や定年のこと)は,また後日,紹介するとして,その際に,JILPTの『日本の雇用終了-労働局あっせん事例から-』をいただきました。どうもありがとうございました。JILPTとは縁がなくなったので,どういう本を出されているか知らなかったので,たいへん助かります。この本は,JILPT編となっていますが,濱口さんの単著です。労働局のあっせん事例を詳しく紹介した資料的な部分が大半を占めますが,それはそれで面白いのですが,さらに重要なのは濱口さんの分析です。要するに,あっせん事例からわかることは,職場における生ける法(「フォーク・レイバー・ロー」と呼ばれています)が,裁判規範とは別に存在しているということです。「フォーク・レイバー・ロー」のな
労働法を知っているつもりの人でも,研究者以外では,就労請求権の議論を正確に理解している人は少ないと思います。現在の通説および裁判例の立場は,就労請求権は原則否定,例外肯定という立場です。労働は義務であって権利ではないのです。 ただし,否定説においても,使用者が就労を拒絶している以上,賃金請求権は認められるとします。その根拠は,民法536条2項です。就労を拒絶して履行不能にしたことについて,使用者の帰責事由があると考えるのです。教科書的には,この説明でよいのですが,先日の商事法務研究会の議論では,ここのところについて,民法の先生から問題提起を受けました。就労請求権がないのであれば,使用者は,労働者の提供する労務の受領を拒否することができるはずであり,それについて帰責事由があるというのは,どういうことか,ということだと思います。債権法改正で,もし,帰責性の要件が,義務違反の要件に変わったとす
元旦の夜中にやっていたものを,再放送で今日,見ましたが,なかなか面白かったです。テーマは「萎縮する日本」ですが,性描写の規制の議論と非正規雇用の議論については,思わず参戦したくなりましたが,私はツイッターをしていないオールド世代なので,できませんでした。 性描写の規制は,その当否はともかく,東浩紀の議論が面白かったです。性描写の規制はよくないが,性描写をいやがる隣人がいることも事実で,現実の社会では,こういう隣人とどうつきあうかということを考えたリアルな戦略が必要で,そのための規制であれば良しというものです。猪瀬直樹氏の意見だそうですが,規制があるだけでよく,実効性がなくてもよいという意見も,面白かったですね。これは,法律家なら,ソフトローとか,任意規定とか,もう少し踏み込んだ議論ができそうなところでした。 いずれにせよ,雇用社会においても多様な価値観をもつ労働者や企業がいるなかで,多
先日,女子大での授業で,『雇用社会の25の疑問(第2版)』(2010年,弘文堂)の第26話「派遣で働くことは悪いことなのか」について読ませて数人に報告してもらいました。第26話は書き下ろしなのですが,このテーマは毎年,神大でもやっているものです。女子大生が意外に冷静な評価をしていることに驚きました。昨年あたりでは,派遣なんて論外,というような報告が多かったように思いますが,今年は私の本を読ませたせいか,派遣にもメリットとデメリットがあるとはっきり述べて,自分は派遣で働きたくはないが,派遣という働き方は必要であり,登録型派遣や日雇い派遣も過剰に制限すべきではないという意見がほとんどでした。 自分たちが派遣で働いたことのある娘も何人かいて,非道いところであったという娘もいれば,いい経験ができたという娘もいて,派遣会社や派遣先によって,当たりはずれがあるような気がしました。 前にも似たようなこと
今日,秋山謙祐『語られなかった敗者の国鉄改革ー「国労」元幹部が明かす分割民営化の内幕ー』(情報センター出版局)を読みました。いま,法学教室の連載である「Live! Labor Law」の次号の原稿でとりあげる原稿は国鉄札幌運転区事件なので,参考にするために読んでみました。なかなか良い本でした。著者は,中卒で就職し,その後の転職先が国鉄でした。そして,組合活動に取り組むようになり,そして分割民営化のときには組合幹部になっていました。この本には,著者が,国鉄,そして国労のために捧げた半生が描かれています。特に,国鉄民営化の過程は,若き国労幹部として取り組んだ著者ならではの貴重な記録資料という意味をもっています。動労への憎悪は強く,国労を裏切った仲間への評価も辛辣であり,組織とそれをとりまく人間関係の愛憎物語という側面も,この本にはあります。文章は平易で,わかりやすく,300頁以上ありましたが,
今朝の新聞で,労働政策研究・研修機構(JILPT)の事業仕分けの結果,事業の一部が廃止となったということを知って驚きました。今回,廃止の対象となった事業内容については,私は十分に把握していないのですが,少し複雑な気分です。図書賞も,かつて受賞経験があるので,何とも言いにくいのですが,確かに税金を使ってやる必要がないと言われると,そうかなという気もします。 私は,大学院時代からこの組織に関わってきて(日本労働協会時代から),現在でも,JILPTの発行している日本労働研究雑誌の編集委員をしています。ある意味では,この組織に近い人間なので,適切なコメントをしにくいのですが,少なくとも,この組織が,過去やってきた労働調査研究のレベルは国内でも屈指のものと言われており,そのノウハウやデータの蓄積は高く評価すべきものだと思います。また日本労働研究雑誌にしても,労働研究の分野では最も権威のあるレフェリー
パナソニックプラズマディスプレイ事件の最高裁判決が出ました。会社側の逆転勝訴です(厳密には,リペア作業に従事させたことに対する損害賠償請求は,原審の高裁判決を維持)。専門家や実務家がたいへん注目していたこの事件は,口頭弁論が開かれたことから予想されていたように,高裁における,原告労働者と会社との間での黙示の労働契約の成立を認めた判断が,覆えされたわけです。 私は,高裁判決は,理論的にはたいへん問題がある判決だと考えていたので,この結論は妥当と考えています。法律時報の12月号の学界回顧でも紹介したように,この問題は,学界でも争点となっていますが,実質的には,いわゆる偽装請負をした会社に対するペナルティとして,当該労働者の雇用責任を引き受けるべきとするのかどうかが問われています。その結論を是とすれば,多少,理論的には無理があっても,黙示の労働契約の成立を認めるロジックはありえないわけではありま
大屋洋子『いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか』(講談社新書)を,知人の女性からもらったので読んでみました。お風呂の中で40分くらいでの読破です。 書かれている内容は,だいたい予想どおりでしたが,実例も豊富で,20代女性の気持ちもよくわかったので面白かったです。あえて注文すれば,20代女性という括りがやや苦しく,おそらく,25から35くらいが一括りになるのではないか,という気持ちがしています。特に,28から32くらいは同質層でしょう。20代独身女性が40代既婚男性にはまる理由の分析についても,一つだけ足らない部分があったと思うのですが,それはここで書くのは,はばかられるので,控えておきます。 それにしても,この本によると,30代男性の状況は厳しいですね。20代男性も大変です。私がみたところでも,確かに,20代,30代の男性は優しく,信頼できるという人が多いと思います。しかし,恋愛市
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『http://souchi.cocolog-nifty.com/』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く