野尻抱介氏は現在、日本を代表するSF作家だ。
92年に「クレギオン ヴェイスの盲点」で作家デビューし、代表作「ロケットガール」シリーズはアニメ化されている。SF小説専門の文学賞・星雲賞でも6回の受賞歴を持ち、まさに日本のSF界きっての存在と言える。
そんな野尻氏には、小説家以外にも「作家」としての顔がある。動画サイト「ニコニコ動画」で活躍する「尻P」だ。
尻Pは機械工作系の映像を投稿しつづける制作者集団「ニコニコ技術部」の代表的存在だ。その名を知らしめたのは、動画「空を飛ぶパンツのようなもの」。
これはアニメ「そらのおとしもの」にインスピレーションを受けて作られたもので、鳥の羽ばたきと同じ仕組みで空を飛ぶ、「オーニソプター」という航空機の設計案を応用して作られたものだった。
その活動は個人の枠にとどまらない。何人かのチームでロケットを作ったり、「あの楽器」という仮想の電子楽器の開発などにも関わっている。
さらにはNHKの番組「ネット☆スター」や「MAGネット」にもゲスト出演し、CGM文化の推進活動も欠かさない。「ゼロ年代ベストSF国内編で推したのは『初音ミク』と『ニコニコ動画』」とさえ明言し、多くのニコニコ動画ユーザーたちに愛されている。
しかし「プロの先生」がなぜ、ここまでニコニコ動画や初音ミクにハマっているのだろうか? 小説を書くことと、工作動画を投稿することは、どこでつながってくるのだろう。作家・野尻抱介氏の「未来提案」に、最後まで耳を傾けてほしい。