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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第315回

暗号資産(仮想通貨)の税金、55%→20%になるか 与党が税制見直し検討も、財務省は前向きとは言えず

2024年12月24日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 暗号資産(仮想通貨)の税制が変わるかもしれない。

 自民党と公明党は12月20日、2025年度の税制改正大綱を公表した。「大綱」という言葉は耳慣れないが、与党の方針をまとめた文書だ。この文書の中で、暗号資産取引への課税について「見直しを検討する」という言葉が明記された。

 11月の米大統領選でトランプ前大統領が再選を果たしたことで、このところ暗号資産には強い追い風が吹いている。トランプ氏が暗号資産の「戦略備蓄」を示唆したことで、12月16日にはビットコイン価格が過去最高値の10万7000ドルを超えた。

 トランプ氏は2025年1月20日に米国の大統領に就任し、暗号資産への規制緩和を進めるとみられている。米国での規制緩和をトリガーとして、日本を含む各国でも規制緩和が進む可能性がある。自民、公明両党が税制改正大綱で「検討」を明記したのも、トランプ氏を源流とした流れの中に位置づけられるのかもしれない。

具体的な中身には触れていない

 暗号資産への課税について理解を深めるうえで、まず「税制改正大綱」という文書の位置付けを再確認したおきたい。毎年、与野党や財務省などには税金に関するさまざまな要望が寄せられる。こうした要望や、社会、経済の情勢を踏まえて、与党がどのような税制の改正が望ましいかを話し合い、「与党税制改正大綱」という文書にまとめる。

 この文書を基にした「税制改正の大綱」という文書が閣議決定され、大綱に沿った税金の改正法案が国会で審議される。今後の税金のあり方を決めるうえで、毎年末に公表される与党税制改正大綱は極めて重い役割を担う文書だ。

 それでは、20日に公表された大綱には、暗号資産についてどのような内容が盛り込まれているのだろうか。今後、検討するべき事項を列挙した「検討事項」のひとつとして、暗号資産課税について次のような記述がある。

 「暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置付け、上場株式等をはじめとした特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する」

 なかなか難解な文章だが、投資家保護のための制度を強化したうえで、何らかの見直しをする以上のことは書いていない。2025年度の与党税制改正大綱の内容からは、与党が仮想通貨への課税を増税したいのか、減税したいのかは読みとれない。

現行制度は最大55%の課税

 暗号資産をめぐる税制については、かなり前から議論が重ねられてきた。仮想通貨の取引所が「暗号資産交換業者」として法的に位置付けられたのは、2017年のことだったが、遅くともこの頃から、暗号資産に対する課税については国会でも議論されている。

 現行の税制では、暗号資産の取引で得た利益は「雑所得」とされ、最大で55%の税率が適用される。つまり、暗号資産の値上がりで大きな利益を得た場合、半分以上を税金として納付しなければならない。税金が高すぎるので安くしてほしいというのが、暗号資産の保有者(投資家)や業界の関係者の根強い声として存在する。こうした声を受けて、自民党のデジタル社会推進本部web3プロジェクトチームが2024年4月に公表した「web3ホワイトペーパー」で、暗号資産課税について以下のように提言している。

  1. 暗号資産の取引に係る損益を申告分離課税の対象とする
  2. 暗号資産に係る損失の所得金額からの繰越控除(翌年以降3年間)を認めること
  3. 暗号資産デリバティブ取引も同様に申告分離課税の対象にすることが検討されるべき
  4. 暗号資産取引に関する損益は、暗号資産同士を交換したタイミングでは課税せず、保有する暗号資産を法定通貨に交換した時点でまとめて課税対象とすることが検討されるべき

 どれも難解なので、1つひとつ読み解く必要があるだろう。まず、1番と3番の「申告分離課税」は、株式や土地・建物などの譲渡で得た所得について、他の所得金額と合計せずに、税額を分離して計算し、確定申告で税金を納める。株式の譲渡所得の税率は現在、所得税と住民税を合わせて20%だ。暗号資産については、他の所得と合算して、税額を決める。課税対象の所得が4000万円を超えた場合、所得税の税率が45%、住民税10%となる。端的に言って、1番の要望は「暗号資産も株式と同じ20%にして」と言っているのだと理解できる。

財務省は前向きとは言えない

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