2025-08-06

anond:20250806032019

瓦礫の山に腰を下ろし、深く息を吐く

爆風の焦げ臭さと、どこか生臭い匂いがまだ空気に混ざっている。

スマホ越しに彼氏の声がした。

「終わったように見えても、油断するな。あいつらは死んだふりが得意だ」

「……どうする?」

「索敵をかける。視界、貸せ」

言われるまま、額に指を当てる。

次の瞬間、俺の視界が一変した。

色はすべて消え、世界は黒と赤だけになる。

赤は生体反応――そして、彼氏能力サンタクロース

通常は「どんな場所からでも爆弾プレゼント」だが、配送先を正確に割り出すための副機能として、世界中の位置情報を感知できる。

瓦礫の隙間を覗くと、点々と小さな赤い光が瞬いていた。

生きている……何かが。

「……おい、これ卵じゃねぇのか?」

彼氏の声が低くなる。

「そうだな。ひとつじゃない。……十、いや、二十はある」

ズキリと頭痛が走る。視界の赤点ゆっくりと脈打ち、触手の影がそこから生えているのが見えた。

卵は丸いカプセル状で、半透明の膜の内側に小さな影が蠢いている。

膜越しに、まだ形になりきっていない無数の目が俺を見返していた。

「全部、やるぞ」

了解。……メリークリスマス

視界の中で、卵のひとつひとつに小さな赤いリボンがついていく。

次の瞬間、すべてが同時に爆ぜた。

瓦礫の隙間から熱風が吹き上がり、夜空に黒い灰が舞い上がる。

爆発の残響が消えたとき、赤い点はもうなかった。

だが、遠くの闇の中で――ほんの一瞬だけ、「チチチ、チギュ……」という音が聞こえた気がした。

記事への反応 -
  • 最近バイトを始めたんだけど、初出勤の朝は妙に静かだった。 まだ開店前の店内は薄暗く、冷蔵ケースの低い唸りだけが響いている。 制服の胸ポケットに名札を差し込み、控室から出た...

    • 瓦礫の山に腰を下ろし、深く息を吐く。 爆風の焦げ臭さと、どこか生臭い匂いがまだ空気に混ざっている。 スマホ越しに彼氏の声がした。 「終わったように見えても、油断するな。あ...

    • この時間じゃない方がもっと反応良さそう

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