「これは、いったいどういう意味さ?」
階段を上りながら基の声はこれ以上ないくらい不穏だった。後ろをついてきた葵は、聞かれた意味が分からなくてぽかんと立ち止まる。
「…何が?」
「この‘お守り’とペンだよ」
「ああ」葵は何のことはない、という風に笑った。
「お母さんは毎年私たちにお守りを買ってくれるのよ。それから、このペンは、きっと一応受験生だからってことかな」
「受験生だから?」
「う~ん、だから、…筆記用具?」
基は、不意に立ち止まって振り返った。
「そうじゃないよ。なんだって、色違いの同じ物を俺たちに買ってきたのか、ってことだよ」
「…双子だからじゃない?」
きょとん、と葵は答える。
「ふん」と基は、冷酷な視線を階下へ向ける。「俺たちのことは分かってるっていう警告かと思うけどな」
ぽかん、と葵は弟を見上げる。
「何言ってんの?」
基は、そのまま階段を上りきり、部屋への扉に手を掛ける。
「待って、基。本当に、何考えてんの? お土産が気に入らないの?」
「そういうことを言ってるんじゃないよ」
「じゃあ、そんな言い方はやめてよ」
何故だか、葵は泣きそうな気持ちになった。扉を開けた基の背中に追いすがり、階下の母に聞こえないように声をひそめる。
「お母さんは、ただ、私たち…違う、きっと基に喜んでもらいたくて、一生懸命お土産を探して選んできたんだから」
一歩部屋に足を踏み入れ、振り向いて姉を見下ろした基の表情はとても冷たいものだった。
「だから、お前たちはおめでたいんだよ」
「どういう意味?」
基は、もう何も答えずに彼女の目の前で扉を閉めてしまった。
階段を上りながら基の声はこれ以上ないくらい不穏だった。後ろをついてきた葵は、聞かれた意味が分からなくてぽかんと立ち止まる。
「…何が?」
「この‘お守り’とペンだよ」
「ああ」葵は何のことはない、という風に笑った。
「お母さんは毎年私たちにお守りを買ってくれるのよ。それから、このペンは、きっと一応受験生だからってことかな」
「受験生だから?」
「う~ん、だから、…筆記用具?」
基は、不意に立ち止まって振り返った。
「そうじゃないよ。なんだって、色違いの同じ物を俺たちに買ってきたのか、ってことだよ」
「…双子だからじゃない?」
きょとん、と葵は答える。
「ふん」と基は、冷酷な視線を階下へ向ける。「俺たちのことは分かってるっていう警告かと思うけどな」
ぽかん、と葵は弟を見上げる。
「何言ってんの?」
基は、そのまま階段を上りきり、部屋への扉に手を掛ける。
「待って、基。本当に、何考えてんの? お土産が気に入らないの?」
「そういうことを言ってるんじゃないよ」
「じゃあ、そんな言い方はやめてよ」
何故だか、葵は泣きそうな気持ちになった。扉を開けた基の背中に追いすがり、階下の母に聞こえないように声をひそめる。
「お母さんは、ただ、私たち…違う、きっと基に喜んでもらいたくて、一生懸命お土産を探して選んできたんだから」
一歩部屋に足を踏み入れ、振り向いて姉を見下ろした基の表情はとても冷たいものだった。
「だから、お前たちはおめでたいんだよ」
「どういう意味?」
基は、もう何も答えずに彼女の目の前で扉を閉めてしまった。
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