暴れる葵を散々陵辱した後、基はぐったりと彼の腕に崩れた彼女の身体を抱き起こした。額にかかる乱れた髪をかき上げて、基は葵を抱いたままベッドから足を下ろして腰掛ける。
「葵、俺の上に座れよ」
「や…っ、な、何―」
「だから」ぐい、とその身体を抱え上げて床に立たせ、葵の背を抱いて膝を開かせた。「ほら、こうやって」葵の腰を支えながら彼のそそり立ったままの肉棒の上にゆっくりと下ろしていく。
「ぁ―」小さく声を漏らし、基の胸に背を預けたまま、葵はふらふらとそれを深く咥え込んでいった。
「ん、ぅく…ぅぅ」いつもと感触が違って、葵は苦しそうに息を詰める。
「ほら、奥までいっただろ?」
ぐい、と葵の腰を押し付けて、基は満足そうに笑う。とん、と子宮の入り口を突かれたことがリアルに分かる。その途端、頭上に突き抜けるような快感が襲ってきた。
「ぅ…も、基」
「なんだよ。気持ち良いだろ?」
「ぁ…、ぁ、ダメ、ぅ…動かないで」
すでに一度イっているせいで、感覚が軽く麻痺していた。それなのに突き上げる熱さと痛みは強烈に感じる。このままではほんの少し動かれただけでまたイってしまいそうだった。
「ほら、見てご覧、葵」
必死に腰を浮かそうと下を向いていた葵の顎を、基は手の平でくいと上げてみせる。思わず正面に視線を向けてそれを見た葵は、そのおぞましくも恥ずかしい光景に口を開けたまま声が出なかった。
ベッドの真横の壁には母が使っていた大きな姿見が移動してあり、そこに映っていたのは、下半身を繋いだまま男の膝に座り、虚ろにこちらを見る女の姿だった。軽く開いた基の膝の上に、更に大きく足を広げて座っているせいで、彼の黒く青筋の立ったグロテスクな肉棒が、葵の膣にしっかりと咥えられて入り込んでいるのが遠目でも確認出来る。
「や…っ、ぁっ」
思わず腰を浮かし、膝を閉じようともがいてみたが、基の腕がしっかりと腰を抱いていて身動きなど取れなかった。
「ほら、自分がイク瞬間なんて滅多に見られないんだから、よく見ておけよ」
言うが早いか、基は腰を抱いていた左手で葵の胸を掴みあげ、右手が繋がった穴の前、すでに真っ赤に膨張し、てらてら光っているクリを探り当てて押し潰す。
「いやぁぁっ」
びくんと背中がはね、葵は顔を背けながら必死に基の腕を引き剥がそうと彼の腕にすがりついた。
「葵、ちゃんと鏡を見てろ」
「いやぁ、いやぁぁっ」
くるくると右手の指先は葵の一番敏感な部分を執拗に刺激し、同時に大きな手の平で両胸を交互にもみしだいていく。身体から力が抜け、思うように動けない葵は、見るまいと思っても思わず目の前の鏡に視線が行ってしまう。まるで別の生き物のようにうねり、悶え続ける彼女の乳房、そして、だらしなく半開きの口から喘ぎ声が漏れ、腰が小さく痙攣している雌の姿がそこには映し出されている。
虚ろに、淫らに、男の手で狂わされるその姿は目を塞ぎたいほど醜悪で卑猥で淫乱に見えた。
「葵の中はもうぐちゃぐちゃだよ」
くく、と耳元で基がささやく。
「ほら、溶け出した愛液が俺の足をこんなに濡らしてるよ」ぺろりと耳たぶを舐められ、熱い息を吹きかけられ、葵の理性は消し飛んでしまった。
「いやぁ、やめ―」
「何言ってるのさ、こんなに自分で腰を動かしてるのに」
かああっと羞恥に頬を染める葵を鏡越しにじっと見つめながら、基は激しく指を動かしていく。
「ぁぁ、ぁぁあああ、ぁぁああっ、ぅああ、ああああ、あああっ」
葵の身体を知り尽くしている基の手は、絶妙に彼女の感じる部分を愛撫する。気が遠くなるような激しい官能に、葵はがくがくと腰が痙攣していた。しがみついていた基の腕に必死にすがりつき、葵は何度も突き抜ける電流に声をあげ続け、遂に足のつま先までびくびくと痙攣が走った。
やっと刺激が止み、一気に脱力した葵の身体を抱きとめて、基もうっすらと汗を浮かべていた。両腕でしっかりと葵の胸を抱き、基は鏡の彼女に向かって笑う。
「なかなか良い表情(かお)をしてたよ、葵。今度は別の角度から見せてあげようか」
もう、身体が動かないのに、と葵は声を出すことすら億劫で、僅かに懇願するような目を鏡に向ける。しかし、基はただ嬉しそうににやりと微笑を返しただけで、汗ばんだ葵のうなじに唇を寄せて舌を這わせた。
「ほら、葵。しっかり腕を突っ張って」
やがて、基は、ゆっくりと葵の腰を抱いたままベッドの上にあがり、一旦身体を離すと彼女を四つん這いにさせた。顔は鏡を見るように指示し、彼は再び葵の中に自身を沈めていく。もう、反応する力のなかった葵は、僅かに顔を歪めた程度だった。もう、とろとろと溶け出したままの彼女の中は受け入れる準備が出来上がっていて、葵自身にすら、それをどうすることも出来ない。
「ほら、気持ち良いだろ? 葵」
つん、と奥を突かれて、きんと快感が走る。
「ぅ…」
「気持ちが良いだろ?」
基は、屈みこんで葵の背中を抱き、ぎゅっと胸を掴む。すると葵の身体は勝手に反応して、ぴくんと背中がのけ反った。
「ぅ、あっ」
「気持ち良いって言えよ、葵」
「ぁ、…い…良い」
はぁはぁと呼吸をするのが精一杯で、今にも腕から力が抜けそうで、葵はとにかく言われたことをそのまま繰り返す。
「俺が欲しいだろ?」
「ぅ―」もう、声を出すことすら切なくて、葵はこくんと頷く。聞かれている内容など、彼女にはもう理解出来ていない。頭の中は白く霞み始め、思考を紡ぐ力など残ってはいなかった。
「もっと、俺の腕の中で狂いたいだろ?」
こくり。
「中にいっぱい欲しいんだろ?」
こくり。
「良いよ、葵。望み通り、今日は気が狂うまで抱いてやる」
背中にキスを落としながら、基はしっかりと葵の腰を抱く。そして、ゆっくりとなぶるように、或いは激しく早く大きく、緩急をつけて葵の身体を貪っていった。まるで満たされなかった渇望を、狂った欲望を、自らと、身体を繋ぐ相手とを貶めることで杯を満たしていこうとするかのように。
顔をあげる余裕などなくて、葵は鏡を見てはいなかった。それでも、時々ちらりと視線の端に捕えられるその絵は、幸福を与え合うような愛の行為ではなかった。媒介するものが欲望なのか、或いは憎しみや怒りや恐れ、支配と服従といった歪んだ、しかし壮絶で妖艶なる美しさがそこには在った。
腕が身体を支え切れずに崩れ落ちて、葵の喘ぎ声はシーツの中に埋まる。すると、基は荒い息遣いのまま一旦動きだけを留めて、葵の身体を器用にくるりと横向きにする。中をぐるりと抉られて、葵は声をあげ、ほとんど閉じられていた目を見開く。胸がふるふると揺れてしっとりと全身が汗ばんでいることを感じた。
「ほら、見えるだろ?」
基は鏡を指さす。髪を振り乱したまま、葵は片足を基に抱え上げられ、恍惚の表情を浮かべていた。もう、何もかもがどうでも良いと、例え父に知られても、母を悲しませても構わないような気になり掛けていた。二匹の裸の獣が交尾をしている。激しく交わりあって、生殖行為を営み、そして子孫を―。
はっと我に返る。
「ぁ…っ、ダ―メ、もと…い。お願い、中に、出さないで」
搾り出すように、震える声で葵は懇願する。
「お願い―」
僅かに動く腕をあげて、基を見上げ、手を差し伸べ、彼に触れようとした。
「イヤだよ」その手を掴んで基は、ふん、と冷笑する。「正気に返っちゃったのか」
葵の小さな手をぐいと掴み直し、基はその指を舐めて言った。
「どうしたのさ、今日は危ない日?」
葵は、小さく頷いたように見えた。すると基はにやりとほくそ笑む。
「良いよ、今度は正気に返れないくらい、気持ち良く壊してやる」
突然の小刻みに鋭い揺れに、葵は一気に頭の中が白く光った。
「ぁぁ、ぁぁぁっ、ぅあああ、ああああっ、ああ、あああ、あああ、ああああっ」
身体の奥が痙攣する。何度も背筋がぞわぞわと電流が走り、葵は首を振り、シーツにしがみつき、切なく喘ぎ声をあげ続ける。そして、ようやく基も頂を上り詰め、葵の最奥に突き刺さって留まる。カッと根元が熱くたぎり、溜まりにたまった熱が勢い良く吐き出されていった。どくんどくんと後から後から押し寄せるように。
しばらくそのまま静止していた二人は、呪縛が解かれたようにゆっくりと解けて離れた。
ふと見上げると時計の針は12時を過ぎていて、窓の外は明るい日差しでいっぱいだった。汗だくになって、基は暖房の設定温度を少し下げる。そして、そのまま葵の横に倒れこんでしばしの休息を貪った
一日は長く、日暮れまではまだたっぷり時間があった。