2026-04-13

[]2026/04/13/01

革の表紙をひらく夜、

知らない街の灯りが、ページの縁ににじんでいる。

 

笑い合う写真の中で、あの人の横顔だけが

なぜか今も指先を止める。

近すぎて名前を呼ばなかった距離

 

やけに鮮やかだ。

  

次のページ、美術教室の光と匂い

「もう一度やってみろ」と言ったあの眼差しが、

まだまっすぐこちらを見る。

 

不合格の紙を折りたたんだ日、

背中を押す家族の声に、

私はうなずくふりで夢を閉じた。

 

この前、街で見かけた先生に、

声をかけかけてやめた――

顔を向ける資格がない

 

見抜いてほしいと願っていた。

 

電車の窓、あの頃と同じ道が流れていく、

変わらない景色の向こうで、

変わってしまった私だけが揺れている。

 

それでも胸の奥に残る小さな光を、

どうか手放さないで、いつかもう一度、

自分のまま歩き出せるように。

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