ある雪の降る大晦日の晩のことです。一人の少女が、凍えるような寒さの中、街角に立っていました。
しかし、彼女が売っていたのは「マッチ」ではありませんでした。彼女が売っていたのは、自らの「筋肉(マッチョ)」だったのです。
少女はボロボロのタンクトップをまとい、極寒の中で見事なキレを見せていました。彼女の広背筋はまるで翼のように広がり、大腿四頭筋は丸太のように太く、降り積もる雪を跳ね返していました。
「マッチョはいかがですか……。バルクアップしたての、キレキレのマッチョはいかがですか……」
通行人はみな、ダウンジャケットを着込んで足早に通り過ぎていきます。誰も少女のサイドチェストや、完成されたラットスプレッドに見向きもしません。今日はおろか、ここ数日、彼女の筋肉を「ナイスバルク!」と褒めてくれる人は一人もいませんでした。
夜が深まり、寒さは増すばかりです。少女はあまりの空腹と低血糖で、筋肉が分解されてしまう「カタボリック」の恐怖に震えていました。
少女は決意しました。売れ残った自分の筋肉を、自分自身のために使うことにしたのです。彼女は壁際で、渾身の「モスト・マスキュラー」をとりました。
すると、どうでしょう。少女の血管から凄まじい熱が放出され、周囲の雪がみるみる溶けていくではありませんか。少女がポーズを変えるたびに、不思議な光景が目の前に広がりました。
一度目のポーズをとると、目の前に黄金に輝く「特大ホエイプロテイン」の樽が現れました。二度目のポーズをとると、最高級の鶏ささみとブロッコリーが山盛りに積まれた、夢のような食卓が現れました。そして三度目のポーズをとったとき、かつて一緒にトレーニングに励み、天国へ召された「伝説のボディビルダー」のおじいさんが現れたのです。
「おじいちゃん! 私を連れて行って! カタボリックのない、毎日がチートデイの世界へ!」
少女は残された全ての力を振り絞り、全筋肉を最大収縮させました。その輝きはオーロラよりも美しく、街全体を昼間のように照らしました。
翌朝、街の人々は路地裏で静かに横たわる少女を見つけました。彼女の顔は、とても満足げで、微笑んでいました。
「見てごらん、なんて見事な上腕二頭筋だ……」
「こんなに寒い夜に、一人でパンプアップし続けていたんだね……」
少女の体は冷たくなっていましたが、その筋肉は岩のように硬く、決して衰えることはありませんでした。彼女は今ごろ天国で、おじいさんと一緒に、終わることのないベンチプレスのセットをこなしていることでしょう。
港町の朝は、いつもより少しだけ静かだった。 魚市場の一角、発泡スチロールの箱が積まれた通路の端に、奇妙な屋台がある。看板には手書きでこう書かれていた。 ――マッチョ売り...
マッチョ売りの少女 雪がちらつく夜の街角に、一人の少女が立っていた。ぼろぼろのコートの下には、小さな箱。その中には、彼女が一日かけてこね上げた「マッチョ」が並んでいる。 ...
マッチョを売るより奥村チヨを売るほうが儲かるやろ。
昔々、ある寒い大晦日の夜のことでした。街は雪に包まれ、暖かい明かりが家々の窓からこぼれていました。 人々は家族と一緒に年越しを祝う準備で忙しく、足早に通り過ぎていきます...
雪の降る、ひどく寒い大晦日の夜でした。 一人の貧しい少女が、寒さに震えながら通りを歩いていました。彼女のエプロンには、たくさんの**「マッチョ」**が包まれていました。 「...