電話番号とかクレカとか銀行口座とかを整理した話

Yahoo!IDが削除されたことを機にアカウント周りを整理した話。
整理し直すのに1年半くらいかかった。
引っ越しする時とかに役立つかもしれないので備忘録。
目次だけでお腹いっぱい。

まえがき

とにかくアカウントの管理が怠惰な人だった。
解約済みの電話番号を登録しっぱなしだったり、職業が学生のままだったり、サービスを受けられなくならない限りは更新を怠っていた。

多くのログインIDとして使っていたYahooのメールアドレスが使えなくなったことをきっかけに、以下のことを整理した。
・メールアドレスと電話番号のログイン認証周り。
・銀行口座や証券口座の金融資産周り。
・クレジットカードや口座引き落としなどの支払い周り。
・ポイント経済圏周り。

最終的なゴールはこうなった。
・資産をマネーフォワードMEで管理できる状態にする。

Yahoo!IDが削除された

2022年9月、20年くらい使い続けたアカウントが何の前触れもなく削除された。
携帯電話番号の登録を求められてもずっとスキップし続けていたから、それが原因で複数アカウント保持者か何かだと判断されたのではないかと思う。
電話番号って現代では戸籍くらいの扱いなんだと思う。

Yahooメールが使えなくなった

20年も使っているメールアドレスが移行期間もなくいきなり使えなくなるのは心底困った。
削除されたメールアドレスにメールを送ってみてもmailer-daemonから返っても来ず、これだと相手はメールアドレスが使用不可になっていることがわからないし不都合が生じる。
サポートに連絡したら復旧することはできないの一点張りで、一方的にクレーマー扱いされてしんどかった。
復旧できないことは1度言われればわかるしゴネていない。
復旧できないにしてもその後不都合がないようにするにはどうしたら良いかという会話がしたいのに、技術的な話はわかってなさそうだしそもそも困っているから連絡しているという当たり前の観点が抜けているしまったく会話が成立しなかった。

Tポイント消失

Tポイントは削除されたYahooアカウントに連携されていたけど、物理カード紛失で番号がわからず。
Yahoo!IDが削除された以上Tポイントのカード番号を調べる方法はないし、このTポイントカードを使い続けることはもう無理そう。
2024年4月にTポイントはVポイントと統合されたけどアカウントの統合はできないため既存のTポイントは捨てざるを得ない。
事実上Yahooに資産を奪われたので自ずとPayPay経済圏からも距離を置くことに。

ログインのメールアドレスを変更した

ありとあらゆるネットサービスをYahooのメールアドレスで登録していたのでそれをGmailに変更した。
パスワードがわからないものに関しては、メールアドレスが使えないからパスワードの再設定もできない。
概ねGoogleのパスワードマネージャーが覚えてくれていたから事なきを得たけど、Yahooは本当にいい加減にしてほしい。
YahooのIDは一応新しく取得したけど、スマホでYahoo天気を見るためだけのアカウントとなった。

SIMカードをSMS対応SIMから音声対応SIMに変えた

2022年10月、音声対応SIMを新規契約した。
通話可能な携帯電話番号がないことで社会的信用が得られないのは困る。

携帯電話番号の遍歴

15年くらい前はWillcom(PHS)を使っていた。
10数年前にMVNO(通話機能のないSMS対応SIM)に変えて、電話はSMARTalk(IP電話)を使っていた。
そして今回音声対応SIMに変えて、通話とSMSを同じ電話番号でできるようになった。

今までの運用と問題

電話用の番号とSMS用の番号が分かれていても普段は普通に使えるけど、たまに困ることもあった。
・携帯電話発信での2要素認証を通れない。
・IP電話ではフリーダイヤルに掛けられない場合がある。(企業のサポートデスクなど)
・IP電話では一部行政窓口に掛けられない場合がある。

特に認証は面倒事が多かった。
世の中のシステムは、携帯電話番号は電話の受発信ができてSMSの送受信もできるという前提で本人確認フローが作られていることが多い。

音声対応SIMを新規契約

SMS対応SIMから音声対応SIMに変える場合、電話番号を引き継げない。
そのため音声対応SIMを新規に契約し、今まで使っていたSMS対応SIMを解約する必要があった。
これにてSMSを利用した2要素認証を設定しているものはすべて設定し直すこととなった。
何かあってはいけないので移行期間(2回線を並行して契約)を3ヶ月ほど設けた。

地方銀行(メインバンク)の登録電話番号を変えた

昔使っていたWillcomの電話番号が登録された状態のままで、自分の口座なのに一切のログインができない状態だった。
お金に無頓着なため、最低限カードでATMで引き出すことはできるしまぁいいかくらいの扱いをしてた。

IP電話の電話番号に変更

PayPayが出てきた時にやっと重い腰を上げた。
PayPayと連携するために銀行口座にログインする必要があり、実店舗に行って電話番号はIP電話に、SMSはSMS対応SIM登録し直した。
しかしSIMのせいでスマホで2要素認証が完結しなかったので物理トークンを使う必要があり面倒だった。

音声対応SIMの電話番号に変更

そして2022年10月、音声対応SIMの電話番号に登録し直してスマホで完結できるようになった。
あと紙の通帳からWeb通帳に変えた。

公共料金関連の電話番号を変更

・東京電力
電話番号を変更。
くらしTEPCO webに登録して利用料金をWebで確認できるようにした。

・東京ガス
電話番号を変更。
myTOKYOGASに登録して利用料金をWebで確認できるようにした。

・NTT東日本(インターネット回線)
電話番号を変更。
@ビリングに登録して利用料金をWebで確認できるようにした。

・プロバイダ
電話番号を変更。
メールアドレスを変更。

NISA口座開設と積立用クレカを発行した

2022年10月、登録電話番号を変更するとともにNISA口座開設と積立でのポイントを得るためのクレカを作った。
ネット証券はネット銀行に付随して作ったまま何も使っていなかったけど、これを機に投資を始めた。

マネーフォワードMEを使い始めた

2023年11月。
資産は大きく分けて、地方銀行、ネット銀行、ネット証券の3つに分けている。
結局のところ総資産がいくらなのかもよくわからなくなっていたのでマネーフォワードMEを導入することにした。

ここでメインで使ってるクレジットカードがマネーフォワードに対応していないことが判明した。

メインで使うクレジットカードを変えた

2023年11月。
マネーフォワードに対応したクレカを作ってそれをメインカードにした。
これにより現金以外の入出金のほとんどをマネーフォワードで仕分けできるようになった。

意外と意識していない月々の支払いがあって、マネーフォワードに対応していない旧メインカードでの決済を一切なくすのに2〜3ヶ月かかった。

普段遣い

普段の買い物全般で使うクレカを新メインカードに変えた。

公共料金関連

決済するクレカを更新した。

・東京電力
・東京ガス
・NTT東日本(インターネット回線)
・プロバイダ
・NTTコミュニケーションズ(SIM)
・SMARTalk

東京水道局については支払い方法は口座振替のまま変更なし。
クレカ支払いよりも口座振替の方が月50円安いらしい。

ネットサービス系

クレカ情報を保存してるサイト全般でクレカ情報を更新した。

Amazonとか楽天とかのEC系。
SpotifyとかAmazon PrimeとかGoogle Paymentsとかのサブスク系。
あとPayPayとかUber Eatsとか。

利用限度額の変更

初期設定では、集計期間が最大で2ヶ月で上限が50万円となっていた。
発行会社によって違うのかもしれないけど、発行から半年経たないと限度額を変えられなかった。

メインカードとして使うにあたってそれでは心もとないので、限度額の一時的な増額をして対応した。
そして半年後の2024年5月になってから恒久的な増額をした。

Amazon Payを使わないようにした

2023年12月。
マネーフォワードに連携するにあたって、Amazon Payだとどこで何に使ったかがわからないため自動で仕分けできない。
そのためよくわからないECサイトでもAmazon Payではなく直接クレカで決済するようにした。

クレカの引き落とし口座を変えた

2023年12月。
地方銀行よりもネット銀行の方が使い勝手が良いのでネット銀行から引き落としするように変えた。
地方銀行は家賃とペイジー専用になった。

ポイント経済圏の整理

楽天ポイントカードを作った

楽天ポイントはポイントアップ条件がややこしくてクエスト感が面倒だから今まで楽天市場でしか使っていなかった。
ポイントはあくまでもおまけでありポイントのために買い物をする訳ではないため。

2024年1月。
楽天ペイをインストールしてスマホで楽天ポイントを貯められるようになった。
今まで物理楽天ポイントカードを作っていなかったのでこれを機に作った。
楽天パンダのデザインのカードが欲しかったので大阪に行った時にエディオンなんば本店でもらってきた。

Vポイントを統合した

2024年4月。
Yahoo!IDが削除されたことで宙に浮いた旧Tポイントは前述の通り捨てることにした。
旧VポイントはVポイントPayアプリで使えるようになった。
これを機にTポイントの物理カードを発行しようか検討中。
デザイン的には枚方ビオルネのTポイントカードがほしい。

名字を変えたい

我が名字、𠮷田。
吉(U+5409)ではなく𠮷(U+20bb7)なので面倒くさい。
わたなべのナベとか、はしご高みたいに異体字の知名度が高くないので説明も面倒くさい。

困ること

・一部e-taxに対応していない。
大体のことはできるけど部分的に対応していないらしい。
以前確定申告の訂正をe-taxで送ってその結果通知をe-taxで受け取りたかったけど、税務署側から送信できなかったらしく郵送する旨の電話がかかってきたことがある。
ダイレクト納付の設定をこっちはしたつもりでいてもその後音沙汰がなくいきなり督促状が送られてくることもあって、未確認だけどこの文字のせいなんじゃないかと思ってる。
支払う意志はあるのに督促状が送られてくるというのは良い気はしない。
こういう不便は河野太郎あたりにエアリプすれば対応してくれるんだろうか。

・Shift_JISで表せない。
行政システムって根幹の部分はきっと古いんだろうし、e-taxで問題が起こる原因はこれなんじゃないかと思ってる。

・常用漢字じゃない。
行政から送られてくる郵便の宛名はちゃんと𠮷(U+20bb7)で書かれているけど、フォントが対応していないのか1文字だけ変なフォントで書かれてる。
見栄えが悪いだけでこっちは受け取るだけだから特に不便ではないけど。

・変換できない。
変換できないので「吉 新字」とかでググってコピペしてる。
そもそも入力する必要がある場合なんて特にないので常に吉(U+5409)で打ってる。
だから多くの場合で戸籍上の正式な名前を名乗っていない。

・稀に文字化けすることがある。
教習所に通ってた時、予約票の名前が毎回文字化けていた。

変える影響

名字を変える場合は家庭裁判所の許可が必要らしいし、変えたら変えたで銀行口座とかの名義も変えないといけないんだろうから面倒だなと思っているところ。
そもそも吉(U+5409)田で登録してるのか𠮷(U+20bb7)田で登録してるのか自分でもわかっていない。
戸籍に紐づいているか否か次第な気がしてる。

あとがき

電話番号もメールアドレスも変えると自分を証明するものがまるっと変わるので、自作PCでいうところのマザーボード変更くらいお前誰やねん状態になる。
これだけ変えれば不都合があるなら本名でさえ変えたいと思うのは自然な流れ。

発端のYahooのサポートの対応はどうしようもなかったけど、得られたものとしてはスマホ1台で完結する認証とサービス、投資を始めて得られた利益。
クレカも銀行口座も思えばスマホが登場する前に作ったものなので、時代に合わせて選択し直す必要があったんだろうなとも思う。
投資の利益に関しては3桁万円なので結構大きい。

Let's try SAKE flights!「楯の川酒造」

渋谷 東急フードショー presents Let's try SAKE flights!- 東京。
楯野川の試飲会に参加してきたのでその備忘録。


イベントの流れ

蔵元による日本酒講座
歴史、製法、種類やそれぞれの楽しみ方、海外に持っていく際の注意点など、日本酒について様々な情報を提供します。

日本酒&おつまみ テイスティング
楯の川酒造が選ぶ6種の日本酒をテイスティング。それぞれのタイプの楽しみ方やおすすめの酒器などについてご紹介します。

日本酒と酒器をプレゼント
【楯の川酒造】の日本酒とテイスティングでお使いいただいた竹製『酒器』をプレゼント!

お酒の販売
イベント後は渋谷 東急フードショーのお酒売場での講座やテイスティングで気になった商品をご購入いただけます!

jp.wamazing.com

精米

商品ページを見るに、精米歩合1%にするためには出羽燦々は約75日間、山田錦は約2ヶ月半かけて精米するらしい。

www.tatenokawa.com

飲み比べ

種類

乾杯酒: 楯野川 純米大吟醸 清流(原料米:出羽燦々、精米:50%、酵母:山形KA)
1: 楯野川 純米大吟醸 美しき渓流(原料米:美山錦、精米歩合:50%、酵母:山形KA)
2: 楯野川 純米大吟醸 主流(原料米:山田錦、精米:50%、酵母:山形KA)
3: 楯野川 純米大吟醸 本流辛口(原料米:出羽燦々、精米:50%、酵母:山形KA)
4: 楯野川 純米大吟醸 上流(原料米:美山錦、精米歩合:40%、酵母:山形KA)
5: 楯野川 純米大吟醸 十八(原料米:山田錦、精米歩合:18%、酵母:山形KA+協会1801号)
6: 楯野川 純米大吟醸 涅槃 黒 2020(原料米:惣兵衛早生、精米歩合:18%、酵母:蔵付酵母)

乾杯酒から3はおちょこで、4から6はグラスで。

個人的には6番が好みだった。

ついでに仕込み水。

比較

乾杯酒と3番、出羽燦々の飲み比べ、磨き50%と40%の比較。
1番と4番、美山錦の飲み比べ、磨き50%と40%の比較。
2番と5番、山田錦の飲み比べ、磨き50%と18%の比較。
4番と5番、精米歩合18%の飲み比べ、山田錦と惣兵衛早生の比較。

おつまみ

いぶりがっこ、金山寺味噌、からすみ。


リキュール

リキュールの試飲もできた。
たてにゃんのパペットかわいい。

一ノ蔵「酛摺り特別見学ツアー」

一ノ蔵「酛摺り特別見学ツアー」に参加したのでメモ。
生酛にフォーカスしたイベントは今回が初らしい。

教えてもらったこと

ツアーとしての説明の他、蔵で以前酛を担当されていた方や広報の方に直接質問した内容も。
詳しくいろいろと教えていただけた。

・吸水歩合は28%、摺るからと言って柔らかくする訳ではない。
・酒母1日目は蒸米を5度くらいで半日くらい放冷して、その後水麹を品温6度、室温6度で仕込む。
・生酛は汲みかけしない。
・酛摺りをするのは酒母2日目、温度は引き続き6度。
・菌が増える速度に合わせて酒母の濃度(液化、糖化、浸透圧)を徐々に変えていくために酛摺りは時間を空けて4回に分ける。
・生酛は山廃に比べて濃度を人間がコントロールできるので再現性が高くなる。
・一ノ蔵の場合、生酛の酒母に使う米は45kg、約1600L(4号瓶で約2200本)の酒が出来上がる。
・山廃はその3倍くらいの量を仕込む。
・生酛でも山廃でも酒母の日数は変わらない、摺るからと言って短くなる訳ではない。
・ヤブタは4台、銘柄(酒質)によって使い分ける。低アルコールで糖度の高いものは粕剥がししづらい。

雑感

酛摺りはやってもやらなくても乳酸菌は湧くという理解だったけど、菌が育つ環境をコントロールするための手段だというのは考えが及んでいなかった。
人間が介入して山卸しをすることで正しく環境をコントロールし菌育成の再現性を高めることができるというのは言われてみれば確かにそうだなと腑に落ちた。
時代の流れと技術の進化と回帰、とても興味深い。

山卸しをした場合と山廃を比べたときに、山卸しをすると米をすり潰す分雑味など味に影響は出る?と気になって質問してみたけど、特にデメリットにはならないらしい。
山卸しするにしてもしないにしても結局は酒母分の米はすべてドロドロになるから関係ないということなのだろうか。

写真

蔵外観。

資料。

酒母。

山卸し。

枯らし室。

洗米。

浸漬。

醪。

上槽。

試飲。

お土産。
左から、
・浦霞 山廃純米大吟醸 ひらの
・一ノ蔵 生酛特別純米酒 耕不盡(こうふじん)
・一ノ蔵 ひめぜん
・一ノ蔵 熟成酒 招膳(しょうぜん)

バナナから酢酸イソアミルの抽出を試みる

本物のバナナからバナナフレーバーの抽出はできるのか?
それを日本酒に添加したら酢酸イソアミル高生産酵母を使った日本酒みたいになるのか?
ってのを実験。

バナナと酢酸イソアミル

まずはこの動画を参考にして、バナナと酢酸イソアミルの関係性を知ることにする。
動画の趣旨はこんな感じ。

バナナ味のラフィータフィー(アメリカのお菓子)は本当にバナナの味なのか。
人工的なバナナフレーバーが実際のバナナにも含まれる場合、どのバナナがそのフレーバーを最も多く含んでいるのか。
言い換えれば、どのバナナが最もバナナっぽい味なのか。

Why Doesn’t Banana Candy Taste Like Banana?

以下要約。

バナナの香気成分

人工的なバナナフレーバーを生み出しているのは、酢酸イソアミルという単一分子。
バナナには酢酸イソアミルは含まれている。
しかしバナナには酢酸イソアミル以外にも香気成分が多く含まれているので、人工的なバナナフレーバーとは一致しない。

バナナの品種

昔はGros Michelが主として栽培されていたが1950年頃からCavendishが主流になった。

バナナフレーバーの生い立ち

バナナ味や人工的なバナナフレーバーは、バナナがアメリカの市場で一般的になるよりも前から存在した。
なので多くのアメリカ人がGros Michelを味わう前に、合成化学版のバナナフレーバーを味わった可能性は十分にある。
人工的なバナナフレーバーは実在するバナナの香りから由来していない。
酢酸イソアミルは1800年代の科学者が炭素ベースの分子を実験していたところから生まれた。

酢酸イソアミル

酢酸イソアミルはエステルで、炭素と2つの酸素ともう1つの炭素を持つ分子。
イソアミルアルコールと酢酸を混ぜ触媒を加え加熱することで酢酸イソアミルが出来上がる。

バナナから酢酸イソアミルの抽出方法

モネル化学感覚研究所のDr. Pam Dalton曰く:
バナナを潰して純アルコールに入れ、しばらく蒸らして固形分を抜けば、本質的なバナナエッセンスのようなものができるはず。

動画内での方法:
10種類のバナナを10g、50g、100gと用意して、それぞれアルコール度数95度のエタノール60mlに浸す。
高濃度エタノールとしてEVERCLEAR GRAIN ALCOHOL 190 PROOFを使用。
浸した期間は不明。

バナナから酢酸イソアミルの検査結果

酢酸イソアミルを最も多く含む品種はGros MichelとCavendish。
また、検査したバナナのほとんどに酢酸イソアミルが全く含まれていなかった。

バナナ酵母

カプロン酸エチルの香りは単体で嗅いだことがあるので、どの香りがカプロン酸エチルなのか明確にわかる。
しかし酢酸イソアミルの香りは単体で嗅いだことがないので、どの香りがそれなのか明確にはわかっていない。
なので憶測と仮説。

以前、バナナ酵母で醸した日本酒「天吹 恋するバナナ 純米吟醸 生」を飲んだときに、本物のバナナではなく「明治 バナナチョコ」の味だと感じた。
飲んだ当初は、本物のバナナの酵母を使っているのになぜお菓子のような人工的な味がするんだろうか?と不思議に思ったが、上記のバナナと酢酸イソアミルの関係を見るにこの感覚は正しいのかもしれない。

バナナ酵母に以下のような特性がある場合、お菓子のバナナ味だと感じることが是となる。
・酢酸イソアミルを多く生成する。
・バナナを構成する香りのうち酢酸イソアミル以外の香気成分を多く生成しない。

もちろん日本酒は複数の香気成分や酸が混ざり合っているので複合的に本物のバナナの味のようだという感じ方もあるだろうと思う。

「天吹 恋するバナナ 純米吟醸 生」と「明治 バナナチョコ」

バナナと日本酒

さてここからは実験。
上の動画にもあるように、高濃度エタノールにバナナを漬けてエステルを抽出してみる。
うまくいけばバナナからアルコールに溶けやすい香気成分だけが抽出できるはず。

用意したもの。
・山梨銘醸 七賢 高濃度エタノール65
・生バナナ
・冷凍バナナ(1年くらい前に冷凍庫に入れて存在を忘れ去っていたもの)

漬け込み

30gの高濃度エタノールに30gのバナナを入れて潰して置くことでエステルを抽出した。
左は新鮮な生バナナ、右は黒くなった冷凍バナナ。
番外編としてバナナの皮でもやってみようかとも思ったけど、農薬がエタノールで溶けて身体に悪いと嫌だからやめておいた。
その分野にはさっぱり詳しくないので疑わしいことはやらないほうがいい。

漬け込み開始
濾過

大体20時間くらい漬けた。
これをティーパックに入れて濾過。

漬け込み開始から20時間後
アル添

濾過して出来上がったものを酢酸イソアミル系の純米酒に添加する。
バナナエッセンス本醸造の出来上がり。

左から、純米酒、生バナナエッセンス本醸造、冷凍バナナエッセンス本醸造
結論

漬け込み時間に関しては、時間経過と共に、エタノール感→アル添感→リキュール感、と変化していく感じがあった。
数時間置きに香りと味の確認をしてみたけど、後半になるにつれ普通にバナナが分解されていき香りよりも味が強くなり甘さも出ていた。
香りに関しては前半の方が強く香っていた。
4〜5時間も漬ければ十分だった気がする。

香気成分に関しては、やはり酢酸イソアミルだけという訳には行かず普通に本物のバナナだった。
バナナ酵母から感じたような人工的なバナナフレーバーを感じることはできなかった。
しかしアル添して本醸造として飲んでみると、まぁそっち系統の酢イソ系日本酒もあるよなぁという感じがしなくもない。
ただバナナのねっとりした雑味は強い。

味(甘みや雑味)を極力減らしてエステルを多く抽出するにはこんな感じかなと思う。
・熟していないまだ固いバナナを使う。
・バナナの繊維を壊さないために潰さずに包丁で切る。
・バナナの漬け込み時間は長くても4〜5時間。
・しっかり濾過する。(ティーパック→コーヒーフィルターと2重にするなど)

アル添酒における「醸造アルコール感」「アル添感」というのは、醪量と醸造アルコール量の比率や加水の具合、最終的なアルコール度数あたりで決まるものかと思っていたが、エステル成分量と醸造アルコール量の比率も関係しているのかもしれない。
まぁ単純にエタノール感をマスクする要素が他にあるかどうかという話だとは思うけど。

清酒醪へのアル添の場合、エステルが醸造アルコールに移り、且つ高アルコールによる酵母の死滅が起こらない程度の時間に留めるのがセオリー。
「エステルを醪に移す」「エタノール感(アル添感)を出さない」「酵母を死滅させない」の3点を最大限実現する醸造アルコールの添加量と絞りまでの時間を見極めるというのも杜氏の技量なのだろうと思う。

瓶燗火入れについての実験と考察

寸胴鍋と低温調理器を買った。
四合瓶の瓶燗火入れが出来るようになった🍶🔥

生の夏酒を火入れして火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させることができるのか?ってことを実験してみたので雑感。
ちなみに、自家アル添、自家加水、自家ブレンド、自家火入れ、ひいては自家熟成も蔵元の商品コンセプトを否定する消費者の劣悪なエゴでしかないと思っているのでラベルは隠しておく。

用意したもの


瓶燗火入れする対象

・奥の緑のボトル
純米無濾過生原酒。
精米歩合70%。

・右手前の青のボトル
純米生酒。
精米歩合60%。

・左手前の緑のボトル
温度確認用の水道水。

瓶燗火入れする設備

・寸胴鍋
24cm、約10L。

・低温調理器
Vsadeyというメーカーの商品。
爆発しても文句言えないくらい安い。
温度の誤差は、水だけ温めた場合には水温は設定温度よりも1度程度高くなる模様。
ものを入れたらちょうど設定したくらいの水温になるのかなという感じ。

自家瓶燗火入れ

期待する変化と仮説

生酒感、フレッシュ感、香りをなくし、落ち着きのある火入れ通年酒みたいな食中酒に変化させたい。

一般に火入れの技術としては、いかにフレッシュ感を保持したまま殺菌するかが焦点になっているように思う。
しかし今回求めているのは是とされている火入れ技術の反対。
つまり、下手くそな火入れをすれば期待する酒になる…?

フレッシュ感を損なわせることが目的ならば瓶燗火入れではなく蛇管スタイルの火入れ方法の方が良い気がするけど、少量の場合瓶燗火入れの方が楽なのでとりあえず瓶燗火入れでやってみる。

火入れ方法

瓶が割れたら嫌なので、2段階で温めることにした。
50度で保温、冷蔵庫から出したての瓶投入、63度で設定し直し、瓶内の温度が62度を超えてたあたりから20分くらい加熱し続ける。
加熱が終わったらお湯を捨て水道水を張り直す、水がぬるくなったら再度水道水を張り直す。
ある程度冷えたら冷蔵庫へ。

この方法で最高温度63度、水道水で冷やして27度くらい、そこから冷蔵庫へ。

小規模且つ北国ではない地域の課題。
・寸胴鍋の体積が小さいので冷えた瓶を投入すると水温が下がる。
・5月東京の水道水はぬるいので急冷は難しい。

実際の変化

生酒と自家火入れのお酒を比較すると、鼻に抜ける香りの広がりが弱まったように思う。
それ故の落ち着きはあるものの、一般に思う生/火入れの差というよりは、開栓直後/開栓数日後の差のような違いに感じる。
しかし若さというか喉に直接来る感じの青さ(?)は変わらず、期待するような食中酒にはならなかった。

無理やり差を見出そうとするとそんな感じだが、実際のところはそんなにいうほど違いはない。
やはり瓶燗火入れというのは劣化の少ない火入れ方法なのだろうと思う。
生の味わいを残したまま殺菌するのであれば瓶燗火入れは有用だが、火入れらしい味わいを求めるのであれば瓶燗火入れは適さないのだろう。

今回の自家火入れは少量ということもあり、思いの外質の高い火入れとなってしまったのかもしれない。
もっと味わいを変化させるような瓶燗火入れをするなら、
・水から温める。
・長めに火入れする。
・自然に冷えるのを待つ。
くらいでもよかったかもしれない。

蔵での瓶燗火入れ

今まで見てきた3つの蔵の瓶燗火入れの様子。
一応蔵の名前は伏せておく。
写真の撮影時間は、加熱し始めから冷却し始めまでという訳ではないので参考程度に。

蔵A

水に瓶を浸けてお湯をかけ流して徐々に加熱。
水のシャワーをかけて冷却。

写真のEXIF情報が飛んでしまっていたので撮影時間は不明。


蔵B

瓶をお湯に浸けて、お湯の中でP箱を動かしながら急速加熱。
水に瓶を浸けて、その上から雪をかけて急速冷却。

ここの蔵は瓶燗火入れ作業で温度差により瓶を結構割っていた印象がある。
当時は「あーやっちゃったな、もったいないな」くらいにしか思ってなかったけど、今思うと劣化を抑えるべくかなりキワキワな温度差を攻めた火入れをしていたんだなと思う。

1枚目:11時7分。
2枚目:11時12分。


蔵C

水に瓶を浸けて、お風呂の追い焚きの要領で水を循環させて徐々に加熱。(だったような気がする)
水のシャワーをかけて冷却。

1枚目:12時9分。
2枚目:13時12分。


あとがき

自家瓶燗火入れは、多少の劣化はあるものの個人的にはいうほどではないと感じる。
生酒を長期熟成させたいもしくは常温保存したいというような特殊な場合には有効なのでは。

消費者としては、落ち着きのある食中酒が飲みたいなら火入れ通年酒を最初から買った方が良い。
適宜熟成もされてるだろうし。

リゾープスとオリゼーの比較

今回はリゾープス(クモノスカビ)とオリゼー(黄麹菌)の比較をしていく。
主に酵素力価と生産する酸について。

比較

繁殖対象

黄麹菌は蒸米で増殖しやすくリゾープスは生米で増殖しやすい。
その理由は酸性カルボキシペプチダーゼ(ACPase)の力価が関係している。

蒸米では米の蛋白が熱変性し酵素作用を受けにくくなるため,ACPase力の低いリゾープスはN源の供給不足をきたし増殖が著しく低下する。
しかし,黄麹菌はACPase活性が高いのでその影響をあまり受けずよく増殖しアミラーゼ活性も高く,でん粉糖化力の強いバラ麹を造ることができる。
サワーにごり酒 2.撒麹と餅麹

酵素力価

オリゼー、白麹、リゾープスの力価の比較。

酵素力価を第4表に示した。
リゾープス麹は,オリゼー麹に比較すると糖化系の酵素力価が低い。
とくに,α-アミラーゼの酵素活性が低い。
そこで,リゾープス麹を酒造りに用いる場合,生産された酸を有効に活用することになる。

第4表 麹の酵素力価(U/g麹)
サワーにごり酒 3.リゾープス麹の特徴

複数のリゾープス属の菌株とオリゼーの力価と酸度の比較。
A=α-amylase, AP=acid protease, GA=gluco-amylase.

酵素活性は一般の清酒麹の活性と比較すると,Aで,1/400~1/100,GAで1/60~1/10と低かった。
APでは,1/4からほぼ同等程度示すものもありアミラーゼ系より強かった。
酸の生成では,リゾープス属はいずれも対照より多かったが,特にR.javanicus IFO 5442が酸度2.0と対照のA.oryzae RIB 128の0.2に対し10倍多かった。

第2表 酵素活性と生酸性
リゾープス属の清酒醸造への利用 実験結果 1.菌株の選定

有機酸組成

リゾープスが生産する酸の種類について。
リゾープスの菌種は、主にフマル酸を生産するもの、主に乳酸を生産するもの、フマル酸と乳酸の両方を生産するもの、の3種類がある。
またフマル酸を生産する菌種には微量のクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸を生産するものもある。

著者等は下記十七種の「リゾウプス」に就て其生産する酸を研究し或者は「フマル酸」を主産物とし又た他のものは乳酸を主産物とし更に他のものは兩者を共に生産することを確め且つ初めのものは微量の枸櫞酸及林檎酸酒石酸?を産する外更に痕跡の琥珀酸を生産するものあることを認めたり而して主として「フマル酸」を産する種類こしては Rhizopus Oryzae, R.tonkinensis vullemin, R.formosensis Nakazawa, R.form. var. chlannydosporus Yatnazahi, R.Candidus, R.chanknoensis Yamazaki, R.Hangchow Yamazaki, Rhizopus G.34 Yamazaki, R.Chiumiang Yamazaki, R.Delemar Wehmeret Hanzawa, R.niveus Yamazaki, R,albus Yamazaki の拾貳種を得又た乳酸のみを生産する種としては R.Salebrosus Yamazaki, R.G. 36.Yamazaki の二種更に「フマル酸」及乳酸を産するものとしては Rhizopns Chinensis Saito, R.liquefaeieu YamaLaki, R.pseudochinensis Yamazaki, の三種を見たり而して上記十七種は悉く少量の揮発酸を産するを知られたり
リゾウプス屬の生産する酸の性質に就て

酵母の働きによって転換される酸について。
フマル酸はリンゴ酸へ転換される。

生成される酸は菌種によっても異なるが,一般にはフマル酸が多くつくられる。
フマル酸は酵母の発酵によってリンゴ酸へ転換されることが推測される。
リゾープス属の清酒醸造への利用 緒言

オリゼー、白麹、リゾープスの有機酸組成の比較。

リゾープス菌の生酸性については多くの研究があり,菌株によっても異なるがフマル酸の生産性が高い。
第5表に麹の有機酸組成を示した。
焼酎用麹はクエン酸が主体であるが,リゾープス麹はフマル酸,リンゴ酸が多く,4~12mg/g麹有機酸が生産される。

第5表 麹の有機酸組成(mg/kg麹)
サワーにごり酒 3.リゾープス麹の特徴

参考文献

リゾープス属の清酒醸造への利用
サワーにごり酒
リゾウプス屬の生産する酸の性質に就て
麹学 (村上英也 編著)

あとがき

麹学(ネットで公開されていない書物)から直接引用しないためにネットで公開されている文献から引用してまとめたけど、結局は麹学を読んだほうがいい。
麹学に書かれている内容は、オリゼーに関しては専門的過ぎて訳わかんないけど、申し訳程度に書かれているリゾープスは程よい塩梅で専門的。
しかしまぁ高い。(5,500円+tax)

アミロ菌・アミロ発酵法について

今回は紹興酒の醸造に使われるカビ、主にクモノスカビの種類と特徴について。
そして、アミロ菌とアミロ発酵法とは一体なんぞや?というお話。

毛カビ属 (ムコール)

菌界 ケカビ亜門 ケカビ目 ケカビ科 ケカビ属、に属する菌について。

ムコール・ルーキシー / Mucor rouxii Wehmer

由来:Calmetteが支那の酒薬の微生物研究中に発見分離。
毛カビ属の一種だと認められる前はアミロミセス・ルーキシー(Amylomyces rouxii)と呼ばれていた。
アミロ法の名前の由来になった菌。
発酵工業上「アミロミセスα」と呼ばれる。

糖化とアルコール発酵を兼ね営む。
高粱酒醸製に用いられている支那酵母中にこれを検出している。
酒薬が澱粉を糖化し直ちにアルコールを生産するのは酒薬内に存在するムコール・ルーキシーの営みによるもの。
発育適温は37〜40度。

アミロ法によるアルコール製造用として注目されたカビであるが、その後アミロ法は研究と改良が加えられ、優良カビが発見され、現在ではアミロ法にはムコール・ルーキシーは全く利用されていない。

その他

名前だけ紹介、気になったら各々調べてね。

ムコール・ムセドー / Mucor mucedo Linne
ムコール・ピリフォルミス / Mucor Piriformis Fischer
ムコール・ヒーマルス / Mucor Hiemalis Wehmer
ムコール・ラセモーズ / Mucor racemosus Fresenius
ムコール・ジャヴァニクス / Mucor javanicus Wehmer
ムコール・プライニー / Mucor Praini Nechitch
ムコール・チルチネロイデス / Mucor cireinelloides Van Tieghem

有用黴学 第五章 毛カビ属 (ムコール)

クモノスカビ属 (リゾープス)

菌界 ケカビ亜門 ケカビ目 クモノスカビ科 クモノスカビ属、に属する菌について。

リゾープス・ジャポニック / Rhizopus japonicus Vuillemin

由来:Boidinが米麹中から発見分離。
発酵工業上「アミロミセスβ」と呼ばれる。

糖化力が強いのでアミロ法に用いられる。
繁育適温は35〜38度。
胞子嚢の形成は35〜37度に於いて迅速、且つ多量。
38度以上に於いては菌糸を生ずるが胞子嚢を形成することはない。

以下、関連する研究。
Rhizopus japonicus sp. 由来のリパーゼ活性
Rhizopus japonicus NR400 の産生する菌体外リパーゼ

リゾープス・トンキネンシス / Rhizopus Tonkinensis Vuillemin

由来:Boidinが支那の酒薬から分離。
発酵工業上「アミロミセスγ」と呼ばれる。

アミロ法に用いられる。
適温は36〜38度。
蔗糖、イヌリンを発酵しない。
トレハロースを発酵する。

以下、関連する研究。
Rhizopus属の糸状菌培養液の腐造乳酸菌増殖抑止効果と速醸もとへの利用

リゾープス・デレマー / Rhizopus Delemar Wehmer et. Hanzawa

由来:Delemarが支那の酒薬から発見分離。
澱粉の糖化力が極めて強く、生酸力が弱いので、古くから現在に至るまで広く使用されてきている。
発育温度は12〜42度、適温は25〜30度。

以前麹と曲の違いと酒税法上の扱い - よしだ’s diaryでも紹介したように、新政2021年の頒布会7月分「C-Type」で使われているクモノスカビはリゾープス・デレマー。

クモノスカビにもさまざまなタイプがあり、今回使用したのは激しく酸っぱい有機酸(フマル酸)を生成するタイプの「Rhizopus delemar」を用いたとのことでした。
【飲み比べ】新政頒布会 2021【7月分】No.6「K-Type」「C-Type」その味わいは? | ねこと日本酒

リゾープス・ジャバニクス / Rhizopus Javanicus Takada

由来:武田義人博士が南洋産ラギから発見分離。
従来アミロ法に用いられてきたアミロミセスα、β、γ、Rhizopus Delemarに対して強力な澱粉液化並に糖化力を有し、甘藷(さつまいも)の澱粉糖化を容易に行い、繁殖が旺盛で、繁殖温度も高く、胞子嚢の形成も極めて多い。
発育温度は10〜40度、適温37度、死滅温度60度。

その他

名前だけ紹介、気になったら各々調べてね。

リゾープス・ペイカ / Rhizopus Peka I Takeda
リゾープス・ペイカ / Rhizopus Peka II Takeda
リゾープス・ニグリカンス / Rhizopus nigricans Ehrenerg
リゾープス・フマリクス / Miyagi et Kaneko
リゾープス・トリチチ / Rhizopus tritici Saito
リゾープス・オリゼー / Rhizopus Oryzae Went et Pr. Geerligs
リゾープス・フォルモセンシス / Rhizopus formosaensis Nakazawa
リゾープス・ヒネンシス / Rhizopus chinensis Saito
リゾープス・バタタス / Rhizopus Batatas Nakazawa
リゾープス・オリゴスポウス / Rhizopus oligosporus Saito
リゾープス・アルブス / Rhizopus albus Yamazaki
リゾープス・セレブロサス / Rhizopus salebrosus Yamazaki

有用黴学 第六章 クモノスカビ属 (根足菌属)

糖化方法

さて、先程から何度も出てきている「アミロ法」という言葉。
紹興酒の造り方について理解するにはまずはアミロ法・アミロ菌が何なのか知らなければならない。
なので前提知識のおさらいとして糖化方法について概要をまとめる。

澱粉を糖化をする方法には以下のようなものがある。

麹法

Aspergillus oryzae (コウジカビ)等の麹菌を、蒸した白米等の培地に植えて繁殖させたものが麹である。
麹菌として国によってはクモノスカビ、ケカビ等も用いられる。
アミラーゼ(α-アミラーゼやグルコアミラーゼ)を分泌するので、それを利用する。
麹を原料(蒸米など)に混ぜることで糖化が行われる。
日本酒、焼酎、甘酒等の製造に使われる。
糖化 - Wikipedia

麦芽法

麦の種子は発芽時に、貯蔵したデンプンを利用するためにアミラーゼ等の加水分解酵素を合成する。
ある程度発芽した段階で、乾燥・焙焦により生育を止め、粉砕して、麦芽中の酵素を利用する。
粉砕した麦芽を原料(麦など)と混ぜ加熱することで糖化が行われる。
同じ原理で発芽玄米が使われたこともあった。
ビール、ウイスキーなどのスピリッツ類、水飴の一部に使われる。
糖化 - Wikipedia

酸糖化法

酸によりデンプンを加水分解して糖を含んだ溶液を作り、アルカリで中和、できた溶液を精製、濃縮し、糖を得る。
原料や製造対象(異性化液糖、麦芽糖、ブドウ糖など)、製造設備により製造プロセスは異なり、厳密に分類すると種類は多岐にわたる。
精製方法も、活性炭投入やろ過、イオン交換膜など、いくつかのプロセスを組み合わせて利用する。(これはアミラーゼを利用した製法でも同様である。)
糖化 - Wikipedia

アミロ法

アルコールの製造法の一つで,アミロ菌による糖化と酵母による発酵を分けることなく行う発酵法.
アミロ法とは - コトバンク

アミロ法は発酵槽内でこのカビを増殖させ、デンプン材料(サツマイモなどに水を加えてデンプン濃度15~20%とし、蒸煮、糊化したもの)を糖化し、さらに酵母を添加してアルコールを生産させる。
発酵後に液を蒸留してアルコールを製造する。
この場合、糖化は37℃、通気培養、アルコール発酵は30℃、静置培養とする。
アミロ法のよい点は発酵期間が短いこと、種菌の接種量が少ないことである。
欠点は密閉したタンクが必要なこと、無菌管理が必要なことなどである。
別に液体麹を併用するアミロ麹折衷法がある。
アミロ発酵とは - コトバンク

アミロ麹折衷法

デンプンからアルコールを製造する一方法で,アミロ法でアミロ酒母を製造し,麹で糊化した原料と併せてさらに発酵させる方法.
アミロ酒母-麹折衷法とは - コトバンク

アミロ菌とアミロ発酵法

ここではWikipedia以上の専門的な内容を深堀りしていく。

定義

アミロ菌とは、糖化とアルコール発酵とを共に営むムコール属及びリゾープス属に名づけられた名称であり、アミロ発酵法とはアミロ菌を用いてアルコールを製造する方法に名づけられた名称である。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

菌種ごとの糖化が得意な澱粉

以下のことから、新政「Type-C」でリゾープス・デレマーが採用されたのは穀類の糖化に適している菌だからだと推察できる。

リゾープス・ジャバニクスは切干甘藷の醪の糖化に、リゾープス・デレマーは穀類の糖化に適している。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ菌のスターターとしての使われ方

アミロ菌のアルコール発酵は常態菌糸の作用にして、アルコールの生産量は弱く、3〜5%くらいの少量なので、カビの発育に好都合な35度の付近の高温で、最もよく発酵する酵母を添加して、アルコール発酵を促進している。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ法の長所

アミロ法が他の方法よりも優れているのは、手数が非常に省けるということで、麹法では何百貫という麹を使用し、また歩留まりが悪い。
歩留まりとはアルコール1石を製造に要する原料の消費量のことである。
なおまた、労力も余計にかかる。
アミロ法ならば純粋培養した僅少の菌を添加するだけでよく、1Lのフラスコの純粋培養のアミロ菌を500石タンクに4〜5本を添加するだけでよく、歩留まりも高い。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

アミロ法の短所

アミロ法は密閉したタンクを使用しなければならないから、麹法の如くコンクリートでも、木のタンクでもよいというわけには行かない。
またタンクは常に無菌にしておくという管理は技術的に相当熟練が必要である。
従って現在では業者はアミロ法のこの短所を補うために麹法とアミロ法との折衷法を採用しようという傾向にある。
有用黴学 第八章 アミロ菌とアミロ発酵法

(1)塩酸によるpHの調製が必要,
(2)Rhizopusのでんぷん液化力が弱い,
(3)サツマイモのように粘度の高い原料では濃厚な仕込みがしにくい,
(4)培養に時間がかかり雑菌に汚染されやすい
台湾の米酒,紹興酒,紅露酒 P582 2.米酒

あとがき

実際に紹興酒の醸造ではアミロ法の特徴をどう活かされているか、どう欠点を補っているかを書こうかと思ったけど、力尽きた。
ちょっと長くなりそうだから記事を分けることにする。
今回の記事は後続記事を理解するための事前知識程度の話で瞬発的に面白みのある内容はないとは思うけど、大事な基礎なのでちゃんと記しておこうかなと。
後日「アミロ菌・アミロ法の特徴を活かした紹興酒醸造方法」みたいな記事を書く予定。
乞うご期待。