信認の妖精と財政政策有効論ってどう同居させれば良いのだろう?

 今朝(12/4)の『日本経済新聞』の「経済教室」は池尾和人氏.僕は内需主導の成長をもたらしている大きな理由は金融政策とそれによるインフレ期待の醸成だと考えているし,金融機関の貸出が増えていないという指摘はそうかなぁと思ったり(→たとえば「10月の銀行貸出残高2.3%増」(日本経済新聞2013/11/11)など),貸出の伸びは時期的には遅行するしと思ったりもするんだけど,そういう現状認識・評価の話じゃなくて,理論的にわからないところがでてきてしまったので,質問的なエントリ*1.


今年の高い経済成長について,池尾氏の評価は,

公共投資の執行が本格化していることが、景気の拡大をもたらしている。要するに、アベノミクスの3本の矢のうちで、第2の「機動的な財政出動」がもっぱら効いているというのが、実際のところ(from 『日本経済新聞』,「経済教室」,2013/12/4朝刊)

とのこと.7-9月の0.9%(前期比)の成長のうち民需の寄与は0.5%,公需の寄与は0.4%なのでまぁ確かに公需の寄与は大きいけど,民需が四半期でこれだけ伸びてるってのも結構大きな効果なんじゃないかな……と考えたところでふと疑問が.
 池尾先生は消費増税は景気にそれほどマイナスとは考えていない印象があったので,ちょっと??になってしまった.確認のためちょい検索しただけだけど,
 「「政策の不確実性」こそが景気回復の障害」というblogエントリで,

池田さんが、「増税で景気はよくなる」という記事を書いている。私も、基本的には同じ意見


景気に悪影響を与えるからといって増税を先送りすることは、むしろ景気回復を遅らせかねない。確かな財政再建の計画もなしに増税を先送りするだけでは、将来の不確かさを増大させる。

と書いているので,消費増税は景気にマイナスにならない(むしろプラスになるかもしれない)という見解のようだ.すると,ここで分からなくなってしまう.

エントリの財政信認説を真として,
・消費増税→財政の信認向上→安心→消費増
という効果があるなら,
・財政支出拡大→財政の信認低下→不安→消費減
なんじゃないだろうか?

 すると,「7-9月の0.9%(前期比)の成長のうち民需の寄与は0.5%,公需の寄与は0.4%」はむしろ,公需がこんなに伸びたせいで,消費は頭を押さえつけられたけどだいぶ伸びている。。。ということは現在の好況は財政政策以外に要因になるんじゃないだろうか*2.一方,

今日の経済教室の主張を真として,
・財政支出拡大→景気拡大
ならば
・消費増税→景気後退
なんじゃないだろうか?

両主張が整合的であるためには,

・消費増税は,財政の信認を向上させ政策の不確実性を下げるので,民需にプラスの影響を与える
・財政出動は民需へのプラス効果がある(または財政の信認への悪影響はあってもそれを上回るプラス効果がある)

のように,増減税と財政支出増減の間で経済に別の影響が働くというモデルが必要だ.標準的な設定ではこれは出てこない.僕は(池尾先生とは逆になっちゃうけど)消費増税は景気を下押しするけど財政は大して効かないと思っていることもあり,

歳入政策と歳出政策の効果が異なる(というか逆になる)ためにはどんな想定が必要なのか

について,誰かモデルをご存じの方いらっしゃればコメントいただければと!


P.S.
池尾先生から直接リプライいただきまして,池尾先生自身は「消費税引き上げの影響は存外に大きい可能性がある」と考えられているとのこと.「消費税の景気への影響は軽微+今の景気は財政政策による」はやっぱり同居できない主張ですよね〜とちょっと安心.

*1:twitterで議論するのはチキリン(女性の方)の言うとおりあまりにも時間を消費するので,もう辞めようと誓ったのでblogに書いてみた

*2:要は金融政策が聞いていると言うことになるのでは??と.