消費増税と長期金利

twitter用に書いたんだけど,長いし,なんか最近全然blog更新してないし,たまにはこっちに書いてみよう.


消費増税を3%で断行か,引き上げ幅を細かく刻むか,先送りかがいよいよ当面の経済政策の分水嶺になっている.以前から書いているように,今回の話題とはちょっと別の観点から僕は刻む派だ.

â– 「消費増税複数案を検証 首相が上げ幅見極め指示 脱デフレ重視 」日経7/27,有料ですが第一報に敬意
â– 消費税小刻み増税の経済的影響、政府が検証する可能性」ロイター7/28,いつもの調子


消費増税を先送りにすると追加措置なしなら長期金利は上がるよ.断行すれば...まぁ多少は下がるかも(現時点で低すぎて低下余地に乏しいが).でもそれは増税が必要だという議論には全然つながらないんだ.長期金利と短期金利の関係を考えなきゃ.


不確実性・手数料なしなら今後5年間短期金利が0なら5年モノの金利は0になる(もちろん現実はこんな理想状態ではないので,流動性プレミア分長期金利は高くなる傾向).


長期金利は将来短期金利がどうなるかで決まる.短期金利はコントロール可能*1.すると,現在の状況での長期金利は「中央銀行がいつごろ"そろそろ短期金利上げるぞ"と決断するか」。。。その時期(への予想)にかかっている.


現在の日本・日銀の政策姿勢において,それは「いつ2%インフレを達成するかの予想」と同じ事だ.


増税を先送りにすれば,近い将来に2%のインフレ率を達成し,ゼロ金利解除を行う条件が整う可能性は高くなるだろう.これを見越して長期金利は上昇する.一方,増税は景気回復の芽を摘むのは間違いない.2%インフレ達成の時期が遠のくのだから長期金利には下押し圧力になる.*2.


消費増税が先送りされたら必ず金利は上がる.米国を見ていてもわかるようにそれはかなり景気がよくなってからの話だ.要は本格的に金融引き締めが必要になり,それが実際の政策スケジュールに上るようになってからの話.


もしこの金利上昇を避けたければ,日本銀行は,現在の異次元緩和の解除条件に雇用や名目成長率などを加えて(要は解除条件を厳しくして),それにコミットすればよい.ゼロ金利が長期化するならその将来予想で決まる長期金利は上がりにくくなる.


財政破綻懸念で長期金利上昇って言う人がいるけど,それはちがう.日本の国債危機は(それがあるとしても)文字通りのデフォルトの形はとらない*3.現状で起きうる金利上昇は短期金利動向の将来予想の変化によるものだ.だから問題ないとは言わないけど,問題の構造を理解しないで騒いでいる人(新聞記者とか……)がどうも多いようなので.

*1:日銀の人も偉い経済学者の人たちも「日本銀行がコントロールできるのは短期金利だけだ!」って繰り返してたんだからこれは前提でよいよね?

*2:ちなみに,「消費増税は経済成長に影響しない」的な話はかならず注意して読むこと.長期的(将来のいつの日にか到達する定常状態)での成長に影響しないという話をしているだけで,数年の景気に影響しないとは言っていないモノが多い(そりゃそうだ)

*3:だからハイパー論が出てきたわけで