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【北京=川瀬大介】中国軍機関紙・解放軍報は1日、戦略ミサイル部隊「ロケット軍」の司令官に王厚斌上将(大将に相当)が、司令官とほぼ同格で政治工作を担当する「政治委員」に徐西盛上将がそれぞれ就任すると伝えた。トップ2人が同時に交代する異例の人事で、背景には汚職や機密漏えいなど軍内の深刻な問題があるとの観測が出ている。
解放軍報によると、7月31日に北京で、両氏の上将への昇格式が開かれた。軍トップの
王氏の前任の李玉超氏は2022年1月に上将に昇進したばかりだ。1年半で交代した理由について、中国軍は明らかにしていない。王氏は海軍出身、徐氏は空軍出身で、ロケット軍の生え抜き以外をトップにあえて据えた人事も異例だ。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは7月下旬、消息筋の話として、李氏と副司令官ら3人が汚職摘発機関の調査を受けていると報じた。香港紙・星島日報も軍関係者の話として、ロケット軍の元高官が7月上旬に自殺したと伝えていた。
中国関係筋によると、汚職に関わっただけでなく、米国にロケット軍の組織情報を漏えいした疑惑も浮上しているという。香港紙・明報は、ロケット軍だけでなく、宇宙やサイバー戦などを担当する戦略支援部隊の司令官も一連の疑惑に関連していると報じている。
習氏は7月下旬、軍関係の会議や視察で3度にわたって腐敗防止や、軍に対する共産党の絶対的な指導の堅持に言及し、引き締めを強める考えを明確にした。
習政権は12年の発足以来、軍高官に対する大規模な汚職摘発と習氏に近い高官の登用を通じ、軍内の掌握を進めてきたとみられていた。対米抑止力の要となるロケット軍の今回の交代人事は、台湾の武力統一への準備を進める政権の危機感の表れで、醜聞の浮上から早々にトップを入れ替え、軍が混乱していないことを対外的に示す狙いもありそうだ。ロケット軍を第2砲兵部隊から陸海空軍と並ぶ「軍」とした15年末の格上げは、習氏が軍改革の一環として主導していた。