横浜流星「正体」で熱演!顔を変え逃亡する死刑囚真実のドラマ
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今年10月、1966年に起きた一家4人殺害事件で死刑が確定し、死刑囚として服役していた袴田巌さんの再審無罪が確定した。半世紀近く拘束されながらも無罪を訴え続けた袴田さんと、支え続けた家族や支援者たちの闘いが記憶に新しい今、この映画が封切られたことに、運命めいたものを感じざるを得ない。圧力に屈せず、大切な人を信じ続けた者たちの物語だ。

幼い子供を含む一家3人を惨殺し、日本中を
決死の逃走劇と、鏑木が逃走中に接触した人々への取り調べを交互に描く冒頭の場面が秀逸だ。刑務官を振り切って死にものぐるいで走る男と、取調室で人々が語る男は本当に同一人物なのか。その正体について、観客を前のめりにさせる巧みな始まり方で、一気に引き込まれた。
そこから物語は時系列順に、逃走中の鏑木と親しくしていた人々の視点で語られていく。脱獄から約3か月後、建設工事現場で働く和也(森本慎太郎)は、業務中にけがをして困っていたところを鏑木に助けられる。約半年後には記者の沙耶香(吉岡里帆)が、フリーのライターとして働く鏑木と仲を深めていく。1年がたとうとする頃、介護スタッフの舞(山田杏奈)は、職場の優しい先輩である鏑木に淡い思いを寄せていた。
染井為人の同名小説が原作。「新聞記者」や「ヴィレッジ」などで権力に
だが主眼は、鏑木と彼を取り巻く人々のドラマに置かれている。ある目的のために間一髪で逃走を続ける鏑木が必死に信念を貫く姿を、藤井監督と何度も組んできた横浜が体現する。終盤、沙耶香らと“正体”をさらけ出して再会するシーンは胸に迫った。
結末を含め原作と異なる点が多々あり、サスペンス要素や社会への問題提起は弱まった。だが、染井が「小説へのアンサー」と絶賛する通り、この展開が見たかったという原作ファンも多いのではないだろうか。逃走中に鏑木が名乗る偽名が、
(読売新聞文化部 石塚恵理)
正体 2時間。丸の内ピカデリーなど。公開中。
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