「コロナ乗り越え、営業再開したのに…」ホテル襲う無情の濁流

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人吉市内で、商品や家財が散乱した店内を片付ける人たち
人吉市内で、商品や家財が散乱した店内を片付ける人たち

 熊本豪雨から一夜明けた5日、球磨川の氾濫で浸水被害を受けた熊本県人吉市内では、後片付けに追われる姿が見られた。ただ、今後も大雨が予想され、住民らは不安な表情を隠せなかった。

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 「新型コロナを乗り越え、やっと営業再開にこぎつけたのに……」。球磨川に面した人吉市上青井町の「ホテルサン人吉」支配人、阿南智昭さん(41)は肩を落とした。従業員とともに、建物に流入した泥のかき出しや、被災した備品の運び出しに追われていた。

 新型コロナウイルスの影響で、2月末からキャンセルが目立つようになり、4月下旬から大型連休明けまで休業を強いられた。5月12日に営業を再開し、ようやく客の入りが元に戻りつつあった。

 4日未明、ホテルから球磨川を見ると、水位は橋桁から2メートルほど低かった。「大丈夫だろう」と思い、帰宅した。眠りにつこうとしたところ、一向にやまない雨音や雷にただ事ではないと感じ、夜が明け、辺りの水が引いたのを確認してホテルに向かった。

被災したホテルの前でショックを隠せない様子の阿南さん
被災したホテルの前でショックを隠せない様子の阿南さん

 ホテル1階の窓ガラスを濁流が破り、フロアに泥やごみが散乱。大切な顧客リストが入ったパソコンも被害を受けた。地下の配電盤が浸水し、電気も使えない。阿南さんは「想像以上の被害。再開のめどが全く立たない。行政には早急に支援をお願いしたい」と訴えた。

 同市九日町のダイニングバー店長、上村成広さん(48)も、大量の土砂が流入した店内の後片付けに追われた。

カウンターに冷蔵庫が乗り上げたダイニングバーの店内で土砂をかきだす従業員
カウンターに冷蔵庫が乗り上げたダイニングバーの店内で土砂をかきだす従業員

 昨年11月にオープン。だが、新型コロナウイルスの影響で4月に約1か月間休業し、ようやく客足が戻ってきたところだった。

 店内は、濁流の威力を物語るように、カウンターに冷蔵庫が乗り上げていた。上村さんは「まさかここまでとは。また同じような被害があるかもしれないと思うと不安だ」と語った。

 一方、武田防災相が、蒲島知事と一緒に市内の球磨川や避難所を見て回った。武田防災相は「全力で対策に取り組みたい」と述べ、段ボールベッドや非常食などについて、被災自治体の要請を待たずに物資を届ける「プッシュ型支援」を行うことを明らかにした。

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