「撮り鉄」迷惑行為、やくも「リバイバル車両」…注意すると逆ギレ
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JR特急「やくも」(岡山―出雲市)が走る伯備線で、鉄道写真の愛好家「撮り鉄」の迷惑行為が沿線住民を悩ませている。やくもは、40年以上前に製造された「国鉄型」車両で定期運行する全国唯一の特急電車。新型車両の投入に伴って引退する6月中旬までは、沿線に全国から撮り鉄が殺到するとみられ、JR西日本や沿線自治体は対応に追われている。(東大貴)
■ここ3年で
3月中旬、傾斜して走る躍動感あふれる様子が撮影できるスポットとして知られる鳥取県日野町津地の通称「
岡山県津山市から毎週訪れるという男性(40)によると、こうした危険な行為が目立つようになったのはここ3年で、若者のグループが多いという。「注意すると逆ギレされるし、僕たちも住民から白い目を向けられるようになった。緑の山を背に走るやくもを撮って気分良く帰りたいだけなのに……」と男性は憤った。
撮り鉄が求めるのは国鉄型の中でも、特急の運行開始50年を記念してかつての塗装を施した「リバイバル車両」。4月5日までは紫色など3パターンが走った。6月14日まではクリーム色を基調にした「国鉄色」や緑色が基調の車両が引き続き運行している。
■木切られる
県内には見通しの良い直線など人気の撮影スポットが多く、理想の一枚を求めてエスカレートした撮り鉄が、線路や私有地へ侵入したり、生活道路をふさぐ迷惑駐車をしたりするケースが横行。日野町などを管轄する黒坂署に寄せられた通報は、2023年に約50件と前年(約10件)から急増した。
同県江府町佐川の男性(70)は昨年末、沿線の畑で育てるブルーベリーと柿の木を何者かに刈り取られた。「特急をカメラに収める画角から草木を取り除くためなのか、
線路への侵入や横断は鉄道営業法に抵触する。黒坂署は昨年、複数の撮り鉄を同法違反の疑いで書類送検した。3月には江府町内の
■「集客を生かして」
撮り鉄の集客を地域活性化に生かそうとする声もある。JR西と地元が迷惑行為への対応を協議した3月の会合で、沿線住民代表(60)(日野町黒坂)は「観光資源が少ない地元に、沿線の景色を好んで多くの人が足を運んでくれる状況を、何とか生かせないか」と提案。住民の不満解消も踏まえ、駐車場の整備などを求めた。
JR西は3月から沿線で巡回警備を強化したほか、根雨カーブ脇の簡易柵を頑丈な鉄柵に交換して侵入防止策を強化。4月には県や沿線自治体とともに、米子市と伯耆、日南、日野3町に計7か所約300台分の駐車場を設けた。