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ギリシャやブルガリアと隣り合う「マケドニア」が今年、国名を「北マケドニア共和国」に改めた。アレキサンダー大王ゆかりの古代マケドニア王国の旧領などを有するギリシャが、長年反発してきたことが背景にある。国内でも規模は異なるが、人口数万人の自治体が律令制以来の旧国名を名乗り、周辺地域の反発を招く例は珍しくない。こうしたいざこざの背景を、地名に詳しい今尾恵介さんに読み解いてもらった。
丹波、讃岐…旧国名が相次ぎ合併市名に
――本来は広大な地域を指す名称を、小規模な自治体などが名乗る。そんなケースを、研究者の間では「
兵庫県篠山市は今年5月、市名を丹波篠山市と改めます。市名を変えるには膨大な手間がかかり、合併を除けば珍しいことです。報道によれば、原因は同市と接する「丹波市」にあるとのこと。2004年に6町合併でできた自治体が(周辺地域一帯を指す)旧国名を名乗り、近年、「丹波の黒豆」「丹波栗」などとして有名な篠山市の産品が丹波市産と誤解されるなど、ブランド力の低下に危機感を抱いているそうです。旧国名の丹波は京都府内の一部も含むため、丹波市ができる時には京都府内からも異議申し立てがありました。
5町の合併で02年に生まれた香川県「さぬき市」も、同県の旧国名・讃岐にちなみます。今や全国的なブランドになった讃岐うどんの本場である丸亀市や坂出市は、内心穏やかではないのではないでしょうか。
もし僭称地名の番付があったら、東西の横綱に挙げたいのは、岩手県の「奥州市」と鹿児島県の「南九州市」です。ほかにも愛媛県「四国中央市」、山梨県「南アルプス市」など、挙げ始めたらきりがありません。特に奥州市について言えば、
旧国名を名乗るのが全て「僭称」というわけではありません。長崎県の対馬市や新潟県の佐渡市は、エリアが旧国名そのままですし、三重県の志摩市、伊賀市もほぼ重なっています。