ポロシティ
ポロシティ(porosity, void fraction)とは、固体物質が小孔や割れ目、粒子間空隙などの空間(void, pore)を含む量を表す尺度。物質の全体積に占める空間の体積の割合で定義され、0 - 1または0 - 100%の値を取る。この概念が用いられる分野には薬剤学、窯業、金属工学、物質科学、製造業、地球科学、土質力学などがある。
概要
ポロシティに対する日本語の訳語は統一されておらず、分野によって多岐にわたる用語が使用されている。『科学大事典』(丸善)[1]および『物理学辞典』(培風館)[2]では、一般の多孔質固体については多孔度、粒子が集積した粉体については空隙率の訳語を充てている。日本工業規格では多孔質固体を中心に気孔率を用いる例が多いが、ほかにも表のような例がある。土壌に関しては空隙率のほか間隙率や間隙比が用いられる[1][3]。このほか、ブローホールやボイドの意味で「ポロシティ」が使われることもある[4]。
用語 | 対象 |
---|---|
気孔率 | 焼結体[5][6]、セラミックス[7]、金属基複合材料[8]、コークス[9]、薄膜[10]、ほか[11] |
空隙率 | 金属微粒子[12]、薄膜[13]、ほか[14][15] |
空孔率 | 金属基複合材料[8]、薄膜[13] |
間隙率 | 土壌[16] |
孔隙率 | 岩石(貯留岩)[17] |
多孔度 | 薄膜[10]、ほか[18] |
多孔率 | 薄膜[10]、メッキ面[19] |
ボイド率 | 気液二相流[20]、金属基複合材料[8] |
単に気孔率というときにはすべての気孔の体積を考えるのが普通だが、気孔を通じた液体の浸透や気体分子の吸着を問題にする場合には、物質表面に開口した気孔(孔隙)だけを数える開放気孔率[21]や有効孔隙率[17][22]などの量も用いられる。粉体においては、粒子間の空間を空間率(void fraction)で表し、粒子内の細孔を含めた空隙率(porosity)と区別することがある[23]。
織物では空隙率を空気流に対する投影面積で定義することがある[24]。
二相流れにおけるボイド率
気液二相流では、流路体積に占める気相体積の割合、もしくは流路断面積に占める気相部分の割合をボイド率と呼ぶ[20]。ボイド率は流路中の場所ごとに異なった値を取る(二相流の流れパターンに依存)。ボイド率は時間とともにゆらぐため、多くは時間平均値を用いる。二相が分離した流れ(不均一な流れ)においては、ボイド率は気相および液相の体積流量、および両相の速度比(en、スリップ率)に影響する。
地球科学および建設業における空隙率
岩石や堆積物などの粒子間空隙(void)は水や空気が侵入するため物性への影響が大きい。地質学や水文地質学、土壌学、建築科学では、これらの物質における空隙体積の割合を空隙率[1][3](または孔隙率、間隙率など[22])と呼ぶ。定義は以下の通りである。
石膏検板に載せた薄片の空隙率を光学的に測定している様子。空隙部は紫で、炭酸塩粒子は他の色で示されている。サン・サルバドル島で採取された更新世風成岩。スケールバーは500 μm。 空隙率には多数の測定法が存在する。
- 光学的方法
- 試料断面の顕微鏡観察を通じ、物質面積および視認可能な空隙の面積を決定する。ランダムな構造を持つ多孔質媒体では、面積空隙率と体積空隙率は等しい[29]。
- 計算機トモグラフィー法
- 工業用CTスキャンを用いて外形およびボイドを含む内部形状を3次元画像化する。その後、専用のソフトを用いて欠陥構造の解析を行う。
- 液浸法
- 多孔質試料をぬれ性のいい液体に浸漬し、空隙部を液体で飽和させる。水飽和法では、試料の浸漬後に残った水の体積を初めの体積から引くことで(開口)空隙体積を求められる。
- 水蒸発法
- 飽和試料の重量から乾燥試料の重量を引き、水の密度で割ることで空隙体積を求められる。
- 懸吊法
- 吸水性の良い多孔質試料をよく乾燥させたのち、水に浸漬して空隙を飽和させる。気孔内の気体を追い出す方法には真空法と煮沸法がある。飽和前後の試料重量(それぞれ Wdry 、 Wwet)を測るとともに、飽和試料を水中に吊って浮力を含めた重量( Wunderwater)を測定する。空隙率 ϕ は以下の式で与えられる[30]。
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