先日、スペイン料理を食べに行ったところ、嬉しいことにメニューがキノコまみれでした。
今日もキノコを摂っています pic.twitter.com/7X2Ut9mRez
— 茸本 朗(たけもとあきら) 「野食ハンターの七転八倒日記」好評発売中! (@tetsuto_w) November 5, 2017
キノコって美味しいだけじゃなくて、料理に使われるだけで秋を感じさせてくれるのがいいですね。
しかし、それにしても……
日本人だって世界に誇れるキノコ好き民族だけど、やっぱりラテン系とスラブ系の人たちには敵わない。
彼らは我々ではとても想像できない調理法で、想像できない角度の美味しさを生み出します。
素材の良さを引き出すのが旨の(そしてそれに固執しがちな)和食とは、考え方のベクトルが全く異なりますね。
素材を生かすというのは、材料の「香り」「味」「歯ごたえ」といった要素の組み合わせをそのまま生かすことだと思います。
一方でヨーロッパの人の料理における基本命題は「その皿全体の調和のために、一番魅力的な要素を抽出して落とし込む」ことだと僕は思っています。
そのためキノコ料理においても「Aの土っぽい香り」「Bの歯ごたえ」「Cの旨味」みたいに役割がしっかりしているのです。
これは個人的には非常に学びがありまして、隙あらば自分の哲学にしたいと狙っております。(難しいことですが)
キノコ、アイスに使っても美味しいのか!
で、そんな欧州においては、しばしばキノコはデザートに用いられます。
有名どころだとトリュフ入りトリュフチョコとか、シバフタケを練りこんだプラリネ的なものとか。
でもね、さすがにアイスはびっくりしたんだよ。
これ、食前にメニューを見たときは「スペイン料理だし、液体窒素で凍らせたしょっぱいポルチーニペーストがでてくるんかな」って思ったんですが、出てきたのは甘いジェラート風のアイスクリーム。
抑えめではあるもののしっかりとした甘みがあり、一方でポルチーニの野性的なキノコ香と濃厚な旨味もしっかりありました。
そして何よりめっちゃ美味しい! いわゆる旨味(グアニル酸)と、甘辛ではない「純粋な甘み」ってこれほどまでにマッチングするんですね。
目からウロコとはこのことです。
素晴らしいインスパイアがありました。
やはり時々は一流の料理に触れねばならん、改めてそう思います。
当然、帰ったらさっそく自分でも試してみることにしました。
ムラサキシメジでデザートアイスを作ってみた
使用するキノコは、先日長野のナメコの森で採取してきた、実に美しいムラサキシメジ。
これをペースト状にして練りこみましょう。きっと綺麗な色になると思うんだ(≧ω≦)
細かく裂き、多めのバターでじっくりと炒めます。
ムラサキシメジはやや土臭さが強いことがあり、また加熱不十分だと中毒することがあるので、じっくりと炒めながら水分をよく飛ばします。
これをうちの製粉機兼ペースターで
ペーストに。
……なんかグレーになっちゃった(´・ω・`)
一方で卵黄と砂糖をボウルでよく混ぜ、生クリームを入れてよく泡立てます。
ここに先ほどのムラシメペーストを投入。
泡をつぶさないよう切るように混ぜて、冷凍庫へ。
時々取り出して、空気を入れるように練ります。
できた。
要素を混ぜるうちに紫色はほとんど飛んでしまって、チョコアイスっぽいグレーの色彩になりました。残念。
でも大事なのは味。
さっそく食べてみましょう。
いただきマース
……(`・〰・´;)
うむむむ、不味くはないけど、結構ストレートにキノコの味が襲ってくるぞ……
ムラサキシメジ、旨味は申し分ないけど、香りがやっぱりちょっと野性的過ぎるかもしれない。
と、ここでふと「そういやあのアイス、ちょっと焦がしたっぽい風味もあったな」と思い出しました。
食べたときはキノコ由来の香りかとも思いましたが、もしかするとバランサーとしてカラメルやバニラが入れられていたのかも?
ということですぐにカラメルを作り、かけてみました。
……これは!
みんな大好きヒドネリューム・ペッキィたんにそっくりだ!
ここでいきなりキノコ要素に立ち返るとは予想外です。
あるいは腐海のあの子たちにもちょっと似ていますね。
……大事なのは味、味です!
……(≧〰≦)
やった! 美味しいぞ!
カラメルの焦げっぽさが加わるだけで、キノコの野性味とアイスの甘さがきゅっとまとまります。
カラメルの代わりにバニラビーンズで香りをつけても、あるいはビターなチョコチップを加えるのでもいいかもしれない。
大事なのは全体の香りを調和させ、とびぬけた要素を作ってしまわないことなのでしょう。
味:★★★★☆
価格:★★★★☆
面白い試みでした。
でもムラシメ、期待していたようなきれいな色にはならないし、香りがかなり強く個性的なので、アイスに使いやすいというわけではなさそうです。
気になる方は最初はやはりポルチーニ、あるいはモドキあたりの香りに癖がなく旨味が強いキノコから始めてみるのがよさそうです。
コメント
キノコでお菓子……味の想像がつかないです。
そう言えば、いつか話題にあがっていたリアルショウロ饅頭は、どうなったのか、気になります。
初めてまして。
いつも美味しそうで羨ましい。楽しんで拝見しています。今回の記事で思い出したのですが以前バターがココナッツオイルに化けたアカジコウで作ればやっぱりおいしいんですかね。