新規開業後の生存率「斯業経験・準備状況」が左右

＜ポイント＞

• 我が国の開業率は低水準にとどまっている。新規開業企業が融資を受ける際の課題は、銀行との間の情報の非対称性が大きいことだ。本稿では、融資を行う側の視点から、新規開業企業の廃業に影響する要因の分析と、廃業確率を算出するモデルの構築を目指した。
• まず企業や経営者の属性や、開業後の情報も使って廃業確率を説明するCox比例ハザードモデルによる生存分析を行った結果、経営者の年齢や斯業経験（開業事業の経験）年数、開業時の設備資金、売上高、経営にあたり苦労していることなどが廃業の有無に統計的に有意に相関することが分かった。
• さらに、開業時の情報から2年以内に廃業するかを予測するLassoロジスティック回帰モデルを構築した。その結果、斯業経験や開業動機などヒアリングで入手できる情報を含む39の変数からなるモデルが構築され、その変数重要度からは、開業に至るまでの計画性、業種の特性、事業内容の新規性などを審査の際に注視すべきという示唆が得られた。