イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本の元日付Spotifyデイリーチャート、『NHK紅白歌合戦』の影響が大きいことについて

昨年大晦日に放送された『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と表記)のリアルタイム視聴率が発表されました。

昨年大みそかの「NHK紅白歌合戦」の平均世帯視聴率は、午後9時から11時45分までの第2部が32・7%(関東地区)だった。ビデオリサーチが2日、発表した。前年比で0・8ポイント上がった。午後7時20分から8時55分までの第1部は前年と同じ29・0%だった。

上記スポーツニッポンの記事は紅白に対しかなり好意的なものですが、たとえばYahoo! JAPANニュースにて”紅白 視聴率”と検索すると、ゴシップメディアはパフォーマンスや演出面よりも司会へのバッシングに矛先を向けていることが解ります(検索結果はこちら)。言い換えれば、そのようなメディアにとって紅白のパフォーマンスや演出面においてはこれまでほど攻撃材料がなかったといえるかもしれません。

(ちなみに視聴率において、世帯や個人を問わずリアルタイム視聴率以上にタイムシフト(録画)視聴率、そしてリアルタイムとタイムシフトを足し重複分を差し引いた総合視聴率をより重視する必要があると考えます。加えて、見逃し配信についても加味することが重要です(紅白はNHKプラスおよびU-NEXTで配信)。音楽業界におけるビルボードジャパン総合ソングチャートのような指標がテレビ業界でも構築されるべきと考えます。)

 

その紅白で披露された曲が、Spotifyで存在感を示しています。

 

筆者はSpotifyデイリーチャートを追いかけ、Xにて特筆すべき内容を日々発信しています。ユーザー規模やビルボードジャパンソングチャートへの影響度はApple Musicが勝り、またApple MusicやLINE MUSICと比べて独自特性の強いSpotifyですが、200位までのデイリー再生回数が開示されていることは分析する者にとって興味深く、日々追いかけているという次第です。

(なおLINE MUSICにおいては再生キャンペーンが特性に大きく影響していますが、年間単位でみるとキャンペーン採用曲の影響度は大きくありません。その点については、Apple Music、SpotifyおよびLINE MUSICにおける2024年度年間チャート比較の際に紹介しています(主要サブスクサービスの年間チャートを比較する(2024年12月30日付)参照)。)

 

大晦日から三が日にかけてのストリーミング再生回数は1年で最も再生回数が下がり、元日はとりわけ大きく下がります。1月1日付Spotifyデイリーチャートで50位までに入った曲の合計再生回数は前日比82.2%となっていますが、その中で再生回数前日超えを果たした3曲はいずれも紅白披露曲であり、また100位以内に再登場したB'zの2曲も紅白でパフォーマンスされています。

 

徒然研究室さんが作成した、NHK MUSIC公式YouTubeチャンネル発の紅白パフォーマンス動画再生回数推移グラフをみると、B'z「ultra soul」や「LOVE PHANTOM」、米津玄師「さよーならまたいつか!」や藤井風「満ちてゆく」における視聴回数やいいね数の多さが際立っています。

「さよーならまたいつか!」および「満ちてゆく」はパフォーマンス映像がフルでYouTubeに公開されていることも影響していると思われます。またB'zの2曲はメドレー形式で披露され、フルパフォーマンスに近い形で公開されていることも再生回数に反映されているといえるでしょう。「ultra soul」は最後のフレーズがライブ仕様として3回繰り返されていることも、再生回数増加の一因ではと捉えています。

 

1月1日付Spotifyデイリーチャートでは、100位以内に入った曲のうち再生回数前日超えを果たした曲はいずれも紅白出場歌手による作品となっています(紅白で披露していない曲を含む)。紅白出場が楽曲単位以上に歌手単位での勢いにつながっていることが、ここから想起できるでしょう。

また、紅白にて「青と夏」とのメドレー形式で披露したMrs. GREEN APPLE「ライラック」は1月1日付で再生回数を落としていますが、昨年末の地上波長時間音楽特番での相次ぐ披露や日本レコード大賞受賞に伴い昨年12月30日付で同曲における最高再生回数を更新。この点は昨日付ブログエントリー(→こちら)でも紹介しましたが、12月31日付ではさらに再生回数を伸ばしています。

 

1月1日付でいわゆる”50位の壁”を突破したのは4曲ありましたが、2024年1月1日付においては1曲のみ。NewJeans「OMG」が51→47位に上昇していますが、再生回数前日比は88.2%であり前日超えを果たしていません。このことからも、2025年1月1日付における紅白関連曲の勢いの大きさが見て取れるはずです。

(日本における2024年1月1日付Spotifyデイリーチャートで100位以内に入った曲のうち再生回数前日超えを果たしたのはNumber_i「GOAT」のみですが(前日比153.7%を記録)、これは同曲が前日付にて数時間の加算に伴いフライング的に初登場を果たし、元日に初の24時間フル加算となったためと考えられます。なお昨年元日は能登半島地震が発生したことに伴い、再生回数が全体的に上がらなかったことも考慮する必要があります。)

 

 

紅白の影響度については、今後数日のSpotify動向、ならびに他のサブスクサービスの状況を踏まえて最終的に判断する必要があります。この点は次週のブログエントリーにて紹介する予定ですが、今回は特筆すべき動きが目立ったことから途中経過版という形で掲載した次第です。

 

さて、NHK MUSIC公式YouTubeチャンネル発の動画は外部での活用(ブログ貼付等)に柔軟性がなく、期間限定であり、また紅白披露曲についてはサブスクサービス等へのリンクが概要欄に貼られていないという状況です。パフォーマンス動画のほとんどが短尺版であることも含め、紅白関連動画のYouTube掲載状況については実際とのところ、この数年変わっていないといえるかもしれません。

しかしNHKには、ドラマ『虎に翼』オープニング映像のロングバージョンを米津玄師さん側に貸与したことで、「さよーならまたいつか!」がビルボードジャパンソングチャートでトップ10内返り咲きを果たしたという実績があります。NHKには是非とも、紅白映像を”フル尺で” ”期間を限定せず” "歌手側に貸与する"ことを願います。この旨は先日提案したばかりですが、NHKには民放でできにくいことを断行する力があるはずです。

歌手側の公式YouTubeチャンネルで公開されれば動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が付番できるため、動画がヒットすればビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標が加わるはずです。それによりソングチャートでヒット規模が拡大すれば、最終的に紅白への注目度がより高まることでしょう。