イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

年末年始のYouTubeランキングからみえてくる『NHK紅白歌合戦』の影響力、および改善提案について

『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)の反響はリアルタイム視聴率(の結果)以上だと捉えています。それを踏まえ、先日はこのブログにてSpotifyデイリーチャートの動向を紹介しました。

このエントリーは後に、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんがYahoo! JAPANに寄稿したコラムにて採り上げてくださっています。この場を借りて感謝申し上げます。

 

さて、紅白の影響は年末年始を集計期間とする1月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートが登場次第あらためて紹介しますが、今回は以下のポストを機に、紅白披露曲におけるYouTubeデイリーミュージックビデオランキングを分析します。

 

YouTubeはミュージックビデオランキングを毎日紹介しています(こちらのリンク先にて最新版を確認可能)。YouTubeはビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に(オーディオストリーミングはストリーミング指標に)データを提供していますが、1月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間である2024年12月30日~2025年1月5日のYouTube動向について、今回は最新1月3日付までの分を掲載します。

これをみると、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」の存在感がとりわけ大きいのですが、その「ライラック」は期間内に5本の動画がデイリー100位以内にランクインしています。

最も新しい動画は昨年秋の定期公演『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』でのライブバージョンあり、先月末に公開。注目はこの動画のタイトルに紅白、また日本レコード大賞という言葉が挿入されているということです。

(今後動画タイトルが変更される可能性を踏まえ、キャプチャ画像を貼付しています。)

"紅白"という文言の動画タイトルへの挿入は、こっちのけんと「はいよろこんで」やVaundy「踊り子」にて(共にミュージックビデオおよびライブバージョンの双方で)確認することができます。紅白を機に気になった方が検索しやすくなるための配慮が、上位進出につながった要因といえるでしょう。

 

一方で先述した「ライラック」の『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』ライブバージョン動画は大晦日に首位に至りながらその後後退しています。動画タイトルに日本レコード大賞が挿入されたことで受賞翌日に首位に立ったものと考えられますが、ともすればその後ミュージックビデオに勢いが収れんされていったのではと考えます。

YouTubeが先月発表した年間ランキングをみると、トップ楽曲部門は2024年リリースの作品が多く、人気曲が数年に渡りヒットを続けるストリーミングとは異なる傾向です(YouTubeトップ楽曲部門の上位50曲はこちらで確認可能、また楽曲部門は同じISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画を合算したものとみられます)。その中で「ライラック」のヒットの継続は、複数動画の投入効果ともいえそうです。

 

さて、YouTubeランキングで特に大きく上昇しているのが、米津玄師「さよーならまたいつか!」、藤井風「満ちてゆく」およびVaundy「踊り子」であり、この点は様々なメディアや有識者の発信と合致するといえます。

だからこそ、今回の紅白で最も話題になったB'zの、「LOVE PHANTOM」および「ultra soul」のYouTubeランキングの結果には寂しさを覚えるというのが正直なところです。

B'zが今回サプライズで披露した「LOVE PHANTOM」および「ultra soul」は、公式YouTubeチャンネルにアップされているミュージックビデオが短尺版となっています。短尺版の再生回数が伸びにくい傾向にあることはこのブログで以前もお伝えしていますが、B'z公式チャンネル発の動画においては(ブログ執筆段階にて)フルバージョンのスタジオライブ動画がミュージックビデオよりも高い再生回数を誇るという状況です。

(上記画像のリンク先はこちら。再生回数確認のためキャプチャしています。)

スタジオライブ動画以上にミュージックビデオの再生回数が大きい「ultra soul」においても、後者が元日付で76位に初登場しながら翌日以降100位圏外となっている一方で前者は3日連続で100位以内にランクインしています。この状況から、フルバージョンのニーズは高いものと断言していいでしょう。紅白でのYouTube映像がショートバージョンだったことも、フルバージョンのニーズにつながっていると考えられます。B'z側に対し、ミュージックビデオをフルバージョンで公開することを検討するよう希望します。

 

 

最後に。紅白パフォーマンス動画のYouTubeでのインパクトの大きさについては徒然研究室さんによるデータの可視化からも明らかです。ただ、NHK MUSICのYouTubeチャンネルは音楽パートナーという扱いではないためにISRCが付番できず、ゆえにYouTubeデイリーミュージックビデオランキングに掲載されないと考えられます。またISRC未付番ゆえ、ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標にも加算されないはずです。

この問題を踏まえ、元日公開のエントリーでは米津玄師「さよーならまたいつか!」の『虎に翼』オープニング映像公開に伴うチャート再浮上という好事例を紹介した上で、【テレビパフォーマンス動画の歌手側への貸与】を提案しています。紅白パフォーマンス動画がNHKプラスでの紅白見逃し配信終了のタイミングで消えるのは実に勿体ないことであり、今回の反響を踏まえれば配信終了後の貸与は必要だと考えます。