HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

新国立劇場バレエ『眠れる森の美女』初日鑑賞

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【Introduction(主催者)】 

 真実の愛で花開く!幸せいっぱいの名作バレエ 本作品は2014年11月に新国立劇場バレエ団のシーズン開幕を飾り新制作されたグランド・バレエです。古典のスタイルを守りながらも現代的な感覚を活かしたウエイン・イーグリングによる振付、元ダンサーとしてのセンスが光るトゥール・ヴァン・シャイクの洗練された色彩豊かな衣裳、川口直次による格調高く豪華絢爛な美術は「シンプルにして豪華」な舞台として絶賛されました。また、主役級のダンサーが次々とソリストとして登場し、新国立劇場バレエ団ダンサーの層の厚さを実感していただけます。チャイコフスキー作曲の3大バレエの一つとして世界中で愛されている古典の最高傑作で、総合芸術としてのバレエの醍醐味をご堪能ください。

【演目】バレエ『眠りの森の美女』全幕3幕

【上演時間】3時間15分(休憩を含む)

【日時】2024. 10.25.(金)18:30〜

【会場】NNTTオペラパレス

【振付】ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー

【編曲】ギャヴィン・サザーランド

【管弦楽】東京フィルハーモニー

【指揮】ギャヴィン・サザーランド
【美術】川口直次
【衣裳】トゥール・ヴァン・シャイク
【照明】沢田祐二

【主キャスト】

〇オーロラ姫:佐々晴香(代役/ベルリン国立バレエ・プリンシパル)

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〈Profile〉

 5歳よりバレエを始める。2012年 Houston Ballet's Ben Stevenson Academy 留学。2013年東京シティバレエ団入団。2015年ドルトムントバレエ団に移籍し2017年スウェーデン王立バレエ団 にセカンドソリストとして移籍。2018年ファーストソリスト、2019年プリンシパルに昇格。2022年ノルウェー国立バレエ団にプリンシパルとして移籍し、2023年ベルリン国立バレエ団に移籍。今までにマカロワ版「ジゼル」ヌレエフ版「白鳥の湖」ハイデ版とシュプック版の「眠れる森の美女」スティーヴンソン版「シンデレラ」などに主演、バランシン「アゴン」「Divertimento no.15」、キリアン「Bella Figura」、リファール「白の組曲」「影のソロ」フォーサイス「インザミドル」「精密の不安定なスリル」「Blake Works」「Approximate Sonata」、ソルレオン「Stars Like Moths」エクマン「エスカピスト」「LIB」、ドーソン「グレイエリア」など。

◯デジレ王子:井澤 駿(NNTTバレエ団プリンシパル)

 

【その他のキャスト】

誠実の精  玉井るい

元気の精  金城帆香

寛容の精  飯野萌子

歓びの精  早乙女遥

勇敢の精  奥田花純

気品の精  山本涼杏

カヴァリエ 木下嘉人 中家正博 小柴富久修

(交替出演)中島駿野 原 健太 森本亮介

      李 明賢 中島瑞生 長谷川涼太

4人の王子 中家正博 小柴富久修 中島駿野

(交替出演)趙 載範 渡邊拓朗

 

伯爵夫人   川口藍*

ガリソン   中島駿野*

(王子の知人)

エメラルド  奥田花純

サファイア     東 真帆*

アメジスト  赤井綾乃*

ゴールド         木下嘉人

フロリナ王女 早乙女遥

青い鳥     水井駿介*

長靴を履いた猫  原 健太

白い猫      益田裕子

赤ずきん     花形悠月*

狼        中島駿野*

親指トム     上中佑樹

その他

日本ジュニアバレヱ:

笠原萌花 菊川愛梨 小林礼菜 齊藤結菜  鈴木せあ 関根栞那 髙橋 舞 谷口菜津 戸田裕彩 羽田治子 藤井柚奈 松下心音 吉成百合子

ゲストアーティスト 下川佳鈴 

 

【粗筋】

〈プロローグ〉
 フロレスタン24世の娘、オーロラ姫の誕生により、盛大な洗礼の式典が行われている。6人の妖精たちの一行が招待を受けて、彼女の名付け親となるべくやってくる。夾竹桃の精、三色ヒルガオの精、パンくずの精、歌うカナリアの精、激しさの精、そして一番偉い善の精、リラの精である。まず国王が妖精たちに贈り物をし、妖精たちがそれぞれオーロラ姫に授け物をする(正直さ、優雅さ、繁栄、美声、および寛大さなどを授けた、とする改訂版もある)。
 その時、邪悪な妖精カラボスがやってくる。カラボスは自分が洗礼に招待されなかったことに怒り狂い、オーロラ姫に次のような呪いをかける。
「オーロラ姫は、20回目(改訂版では16回目)の誕生日に彼女の指を刺して、死ぬでしょう。」
 しかし幸運にも、リラの精だけはまだ姫に何も授けていなかったため、次のように宣言する。
「カラボスの呪いの力は強すぎて、完全に取り払うことはできません。したがって姫は指を刺すでしょうが、死ぬことはありません。100年間の眠りについたあと、いつか王子様がやってきて、彼の口づけによって目を覚ますでしょう。」 


〈第1幕〉
 オーロラ姫はすくすくと成長し、20歳(16歳)の誕生日を迎えた。その誕生日に編み物をしている娘たちを見て国王は激怒する。オーロラ姫を守るために編み物・縫い物は禁止していたためだ。しかしめでたい祝いの日なので国王は怒りを鎮めて祝宴を始める。
 オーロラ姫には4人の求婚者がおり、彼らがバラを姫に手渡したそのすぐ後、姫は何者かからつむを贈られる。彼女は尖ったものに気をつけるようにという両親の忠告にも関わらず、それを持ったまま楽しそうに踊る。そして誤って指を刺してしまう。
 カラボスは、すぐに邪悪な本性を明かしながら、勝ち誇り、驚く賓客の前で姿を消す。同時にリラの精が約束通りやってきて、王と王妃、そして賓客たちに、オーロラ姫は死ぬのではなく眠りにつくのだということを思い出させる。リラの精は城にいた全員に眠りの魔法をかける。オーロラ姫が目覚めるその時に、目を覚ますように、と。


〈第2幕〉
 それから100年が経った頃、デジレ王子が一行を率いて狩りを行っていた。王子は狩りが楽しくなかったため、1人になりたいと申し出て、一行から離れる。そこに突然リラの精が現れて、オーロラ姫の幻を見せられた王子はその美しさの虜となる。王子はリラの精にオーロラ姫の元へ連れて行くよう頼み込み、今や太いツルが伸び放題でからみついている城にたどり着く。リラの精はオーロラ姫の名づけ親だが、デジレ王子の名付け親でもあった。
 王子は城の中に入り、中で眠っているオーロラ姫を発見し、王子のキスによってオーロラ姫は目を覚ます(原作は非暴力的で愛すること・考えることを重視するが、改訂版では邪悪なカラボスを打ち負かす、といった展開もある)。彼女が目を覚ましたため、城にいた全員が目を覚ます。王子は姫への愛を告白し、結婚を申し込む。


〈第3幕〉
 プティパ版『眠れる森の美女』、サンクトペテルブルク、1890年。第3幕の衣装をつけたオーロラ姫(カルロッタ・ブリアンツァ)とデジレ王子(パヴェル・ゲルト)
 婚礼の仕度は整った。祝祭の日にさまざまな妖精たちが招かれている。結婚を祝福するのは、金の精、銀の精、サファイアの精、ダイヤモンドの精である。リラの精もカラボスも出席している。「長靴をはいた猫」や「白い猫(英語版)」などのおとぎ話の主人公たちも来賓として居合わせている。華麗なダンスが次々に踊られる。4人の(宝石・貴金属の)妖精のパ・ド・カトル、2匹の猫のダンス、青い鳥(この「青い鳥」は日本で知名度の高いメーテルリンクのものっはなく別の作品en.The Blue Bird(fairy tale)とフロリナ王女のパ・ド・ドゥ、赤ずきんちゃんとおおかみの踊り、シンデレラ姫とフォルチュネ王子のダンスが披露され、(一般的には省略されるサラバンドの後を受けて、)オーロラ姫とデジレ王子のパ・ド・ドゥが続き、最後にマズルカで締め括られる。オーロラ姫と王子は結婚し、(リラの精が2人を祝福する、という改訂版もあるが、原作では)妖精たちを讃えるアポテオーズの中で人々は妖精たちに感謝を表し、リラの精やカラボスなどの妖精たちが人々を見守るうちにバレエは終わる。

 

【登場人物】

オーロラ姫/Princess Aurora
デジレ王子/Prince Desire
フロレスタン王/King Florestan
王妃/The Queen
邪悪の精カラボス/Carabosse
リラの精の長/The Lilac Fairy
カタラビュート/式典長
ガリフロン/デジレ王子の家庭教師

誠実の精、元気の精 寛容の精  歓びの精  勇敢の精 気品の精  

花婿候補の4人の王子達
村の若者達,子供達,召使い達,貴婦人達

エメラルドの精 サファイア の精 アメジスト  

ゴールド         

青い鳥とフロリネ姫
赤頭巾と狼
シンデレラ姫とフォーチュン王子
親指小僧とその兄弟達と人食い鬼
長靴をはいた猫と白猫 

 

【上演の模様】

 あれは何月だったでしょうか、新国立劇場バレエ団のベテランプリンシパルである米沢さんが、病気のため降板するという発表がありました。しかも心臓疾患らしい。そしてその代役が暫く決まらないままになっていたので、チケット購入を控えていましたが、その後やっと決定し、それも独ベルリン国立バレエのプリンシパル佐々晴香さんだという発表がH.P.に掲載されたので、急いで初日の座席を確保したのでした。

 ところが、今日、初日の舞台を見てビックリ仰天、最初の幕が上がるや、天井から吊るされたシャンデリアに一人バレリーナが乗って降りて来たのが、何と米沢唯さん、その人だったのです。リラの精の衣装をまとっていました。舞台に降りると挨拶もそこそこに上手袖に走って消えました。急いで配布資料のキャスト表をみたら、そこには確かに、リラの精、米沢唯との記載がありました。良かった、舞台に出れるくらい病気が回復したのですね。無理はしてはいけませんが、リラの精の出番は、オーロラ姫程多くは有りませんから、大丈夫なのでしょう。それにしても、NNTTのホー厶ページで、回復復帰のお知らせはあったのでしょうか?気が付かなかった。もっとも隅々までは、見る暇がありませんから。

 さて幕が開くと、場面は、王宮の大広間、オーロラ姫の洗礼式の場面です。籠の中で寝ている赤ちゃんが二人の乳母により運ばれて来て、ベッドの上に安置、宮廷人が登場しだし、父王と王妃もやって来て、コールドバレエが踊られるのを見ています。ところが、招待されなかったカラボス(1種悪の精ですね)が、大きな蜘蛛(状ののりもの)を手下に運転させてやって来て、呪わしい踊りを踊ります。呪ってオーロラ姫を死なせてしまおうと言うのです。しかし、救いのリラの精(米沢さん)は、死なせない、ただ眠るだけと王達を安心させ様として、カラボスに対抗して踊るのでした。でも眠るだけといっても、100年間も眠るのですから、考え様によっては、これは死んだに等しいと、みなせなくはないでしょう。米沢さんの踊りは、病み上がりとは思えない、これまで何回も観た米沢舞踊そのものといった感がしました。

その後、さ幕が降ろされ、舞台転換のため暫し待ち時間がありました。此処まではプロローグで、さ幕が上がると、姫の16歳の誕生日を祝う祝典が取り広げられている場面となりました。

 リラの精の踊り、やさしさの精、やんちゃの精、おうようの精、のんきの精、勇気の精  などが、 次々と短い踊りを披露、そしてコールドバレエを背景に、リラの精がソロを演じ、次いで6人の男性ダンサーが登場、そろって軽やかな短い踊りをするも、すぐにのんきの精に交代、コールドバレエも伴い踊っていると、リラの精も混じり、さらには残りの4人の精も参加して、コールドバレエに囲まれながら、結構華やかな舞いを披露しました。リラの精が中心となっていました。

 そして今度は、邪悪な精カラボスが駆けつけ、招待されなかった鬱憤を身体いっぱいで表現、魔精の雰囲気を醸し出していました。この妖精たちが踊る中では、やはりリラの精とカラボスの踊りが、その後のストーリー展開上重要な意味を持ちます。リラの精役米沢さんは、どこまでも明るくクリアなダンス、対するカラボス役直塚さんは、暗くスッキリしないダンス、しかし双方共最初からその役柄を良く表現出来ていたと思いました。

 ここで、オーロラ姫がひな壇に登場です。キャストは、最初に記した様に、ベルリン国立バレエの日本人プリンシパル、佐々晴香さんです。中央階段から舞台に降りて来て、両親に挨拶後、4人の王子とそれぞれ短いパ・ド・ドゥを踊るのですが、その踊りは、ゆっくりと王子達の手を取って舞うのです。佐々さんの手、腕、脚、身のこなし全て、さらには身振りに毎に動くチュチュの布地の微細な動きまでが、美的に見える、これぞ美の境地と思える形、型を成していていました。ほれぼれする美しさでした。

 「笹の葉は 風にさやかに 揺れねども この晴れの日に 薫る沈丁花」(hukkats)

 

 想像するに、きっと欧州で何年も、ノウハウの詰まった先達に依って、手はもう少し傾けてとか、腕は、あと何センチ下げてとか、厳しく指導を受けて、美の極地の形を体に刻んできたのでしょう。先月、先々月に見た欧米のスーパースターや世界バレエで踊ったエトワール、プリンシパルなどと相通ずる美しい型を見て取れました。やはり、さすが吉田都藝術監督、代役にこれ程のダンサーを持ってくるとは、凄いことです。想像はしていましたが、期待を大きく上わまわりました。会場からは、大きな拍手と歓声が飛びました。

 そしてあの邪悪なカラボスの毒針に刺され、姫は、遂には倒れてしまうのですが、毒が体にまわるまでの佐々さんの踊りが、これまた素晴らしかったのです。舞台を結構速いペースであちこち踊り回り、表情では、最初は元気を装うのですが、何となく急ぐ身体の動きは重々しさを表し、例えは良くないですが、(当然酔脚ではないけれど)恰も酔いが回って来る様な、正常でない様子をその踊りで、極端にでなく微妙に表現したのには、凄いと思いました。きっとこれまでこの役を何回も踊ってきたキャリアがあるのでしょう。

 遂にはバッタリ倒れて、100年間の眠りにつくオーロラ姫でした。

 その後の二幕、三幕では、デジレ王子役の井澤さんとのグラン パ・ド・ドゥを筆頭に、宝石役達の踊りや動物達の踊り、コールド・バレエなど、見処満載の舞台でしたが、もう一つ特筆すべきは、リラの精の米沢さんの大活躍です。

 通常のリラの精以上の見栄えする踊りの場面と、舞台の位置決めを今回の演出家は、米沢さんの為に工夫を凝らしていたと思います。大げさな言い方をすれば、今回の舞台は、米沢さんの復活の祝いも兼ねた、主役が二人いる上演ではなかろうかとさえ思われました。 

 全ての舞台が終了すると、満員の会場からは、盛大な拍手・喝采と声援が飛びかいました。出演者全員に指揮者も交え、手を繋いで、カーテンが何回も上げ下げする間、舞台奥から前面に進み寄り挨拶を繰り返していました。カーテンコールはいつまでもいつまでも。ブラボー!! 


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【参考】
◯眠れる森の美女のバリエーションと難易度

(1) 第1幕:リラの精のバリエーション

テンポはゆったりしているものの、テクニックがないと難しいパが多めです。ピルエットやピケターンなど回転ものが得意な場合はチャレンジしてみるといいでしょう。こういうテンポがゆっくりの踊りは表現力が養えます。 

(2) 第1幕:オーロラ姫のバリエーション

全体的に曲調がゆっくりで、それに合わせたステップと表現力が少し難しい。
また、中盤にピルエットを4回決める振り付けが出てきますが、全てダブルだったり、最初の3回がダブルで最後の1回がトリプルになったりと、様々なパターンがあります。 

(3) 第2幕:オーロラ姫のバリエーション

オーロラ姫のバリエーションといえば第1幕と第3幕です。
2幕は幻想的な世界で妖精たちと共に踊るオーロラ姫。難易度的には比較的優しめです。 

(4) 第3幕:宝石のバリエーション

サファイア
眠れる森の美女の3幕に出てくる宝石の踊りのひとつ。一般的にはダイヤモンドとセットになっています。(金の精・銀の精と呼ばれることも)なかには、ダイヤモンドはあるのにサファイアはなかったりすることもあります。
サファイアの踊りは全体的にグランジュッテが多めなので、ジャンプが得意な人におすすめです。
 ダイヤモンド
眠れる森の美女の3幕に出てくる宝石の踊りのひとつ。テンポがかなり早いのでアレグロが得意な人におすすめです。とても可愛らしくキュートな踊りです。

 

(5) 第3幕:フロリナ王女のバリエーション

エシャッペやパッセなど、初歩的なステップが多いので難易度は低めです。
しかし、初歩的なステップだからこそ美しく軽やかに表現しないと、つまらない踊りになりがちなので、表現力が求められるバリエーションでもあります。 

(6) 第3幕:オーロラ姫のバリエーション

バリエーションに初挑戦する場合や、初めてのコンクールなどに使われるバリエーション。バリエーションの中では、最も定番というイメージがあり有名です。