フランスで同性婚した日本人とフランス人のカップル(30代)が、日本で提出した婚姻届を受理するよう求めて、神戸家裁尼崎支部に家事審判を申し立てた。
2人は女性同士のカップルで、2018年12月にフランスで法律婚した。
日本では、海外で結婚した日本人に対し、本籍地の市町村長などに報告を義務付けている。2人が2023年6月、兵庫県尼崎市長に婚姻届を提出したところ、受理されなかった。
来日を機に申し立てをおこなった2人は12月9日、東京・霞が関の司法記者クラブで弁護団とともに記者会見を開き「日本でも、フランスと同じように家族として認めてほしい」とうったえた。
●日本で同性婚認められないと不利益
申し立てたのは、渡邉・プロスペル・礼さんと、プロスペル・コガリさん。礼さんはこの日の会見で、今回の審判申し立ての理由を次のように語った。
「この審判を起こした理由は、とてもシンプルです。フランスで成立した私たちの婚姻を、日本でも認めてほしいということです。
現在、フランスで生活していますが、日本で婚姻が認められていないことによる不利益があります。たとえば、フランスでは、出身国で同性婚が認められていない場合、その人は里親になれません。
また、私が出産した場合、フランスでは2人とも親として認められても、日本に帰れば、私はシングルマザーとして扱われ、コガリとの親子関係は法的に存在しないことになります」
続けて審判への期待をこう語った。
「私たちの願いは特別なものではなく、誰もが自然に求める、大切な人と共に生きる権利です。この審判が、同じ思いを抱く人たちにとっても希望になることを心から願っています」
●フランスでは「同性婚が当たり前」に
海外では、2001年にオランダが同性婚を認め、フランスでは2013年に法制度化された。
同性婚の実現を求める「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」のサイトによると、現在までに、ヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアなど、少なくとも39の国・地域で同性婚が可能だ。また、G7で同性婚ができないのは日本のみとなっている。
フランスの状況について、コガリさんはこう話す。
「フランスでも、同性婚によって社会や家族のあり方が揺らぐのではないかと心配されていました。でも、この法律によって、人々が法的な差別なく生きることを可能にしてくれました。
そして施行から10年以上が経ち、同性同士の結婚は当たり前になり、日常の一部になっています。平等は、誰かの不利益にはなりません。しかし、当事者の人生は変わります」
●「結婚の自由をすべての人に」訴訟との違い
会見では、弁護団の伊藤建弁護士が、全国で進む「結婚の自由をすべての人に」訴訟(いわゆる同性婚訴訟)との違いを説明した。
「『結婚の自由をすべての人に』訴訟は、同性婚を認めていない現行の民法が憲法違反であるという、立法不作為を主張しています。仮に違憲判決が出たとしても、裁判所は違憲であると宣言するにとどまり、実際に同性婚が認められるためには国会による法改正が必要です。
過去の例では、最高裁判決後の法改正までに22年かかったケースもあり、高市早苗首相は同性婚に明確に反対の立場を表明しています」
こうした事情を踏まえて、すでにフランスで婚姻が成立している2人については、立法不作為を争うのではなく、家事審判の申し立てという手段を選んだという。
「前提として、民法は憲法の下位に位置するため、もし同性婚を認めないことが憲法違反であれば、民法も憲法に適合するように解釈されるべきだと主張しています。また、民法には同性婚を明確に禁止する規定も存在しません」
●尼崎市長「同性婚は立法不作為」
この申し立てに対して、尼崎市長側は「同性婚を認めないことは、憲法違反ではない」「同性婚は立法不作為であり、違憲であるとしても立法が必要」と反論している。
申立人側は、2025年内をめどに主張をおこない、裁判所に審判を求める方針だ。