「家で飼っているハムスターが殺された」。悲痛な相談が弁護士ドットコムに届いた。
自宅に来た娘の友だちから「ハムスターがほしい。ちょうだい、ちょうだい」とせがまれ、断ったものの、目を離した隙に持ち帰られてしまったというのだ。
返しにもらいに行くと、プラスチックの容器のようなものに入れられていたハムスターは変わり果てた姿で死んでいた。
「なついていたので、娘も2〜3日泣いていました。相手の親からの謝罪は電話のみ。『たかがハムスター』と考えているところに腹が立ちました」
相談者は親に賠償を請求したいと考えている。
「子供と一緒に謝りに来てくだされば、命の重みを感じてくだされば、請求などの考えもなかったと思います」
"ハムちゃんの命の金額"はどれほどのものか。ペットをめぐるトラブルにくわしい石井一旭弁護士に聞いた。
●娘の気持ちは痛いほどわかるが「長生きしたペットほど賠償額はゼロに等しくなる」
——飼い主親子は相手親子に賠償を請求できるのでしょうか
ハムスターを奪われて殺されてしまった娘さんの気持ちを思うと大変痛ましい事件です。
法的な救済手段として損害賠償の請求も可能ですが、その金額は低額にとどまると考えられます。
ペットは法律上、「物」として扱われています。「物」が傷つけられたり、失われたりした場合、その時価相当額の賠償が請求できます。
ペットについても同様なので、賠償額はハムスターの購入額が限度となります。買ったばかりのハムスターであればともかく、何年か生きていたハムスターであれば、寿命が短く市場価格も下がってしまうので、損害賠償額はゼロに等しくなる可能性もあります。
——それでは慰謝料はどうでしょうか
通常、「物」の損失について慰謝料は発生しません。しかし、ペットの場合は、家族の一員と言われるほどにその地位が向上したこともあり、物損であっても例外的に慰謝料が認められることが増えています。とはいえ、その額も通常は数万円程度です。
このような事情がありますので、相手を許せないからと訴訟を起こすことは費用や手間の観点からおすすめできません。当事者間で話し合うことで、解決を目指してください。当事者同士で直接話し合うことが難しければ、簡易裁判所の調停手続を利用する方法もあります。
——刑事事件扱いにはなるでしょうか
欲しいとせがまれて断ったものの、目を離した隙に持ち帰られた、とのことですから、娘さんの友だちには窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性があります。また、殺されてしまったということですが、故意に殺傷したということであれば器物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性もあります。
ただし、娘さんの友だちが14歳に満たなければ、刑法の処罰対象とはなりません(刑法41条)。年齢によっては、家庭裁判所の審判に付される可能性はあります(少年法3条1項2号)。