第4回「赤い背中の少年」写真で一変した人生 映画や舞台も世界の心動かす
ノーベル平和賞に選ばれた日本被団協。授賞式が12月10日にノルウェーのオスロであります。核兵器の非人道性を訴えてきた長年の証言活動が認められました。運動に大きな足跡を残した5人の被爆者たちの半生をたどります。
セミの鳴き声を背景に、赤い自転車に乗った少年がステージ上に現れた。舞台中央に進むと、観客に語りかける。
2019年5月中旬。フランス・パリ郊外で、1人の被爆者の半生をもとにした劇が上演された。
主人公は長崎の被爆者・谷口稜曄(すみてる)さん(1929~2017年、88歳で死去)。16歳の時、爆心地から1.8キロの路上で被爆した。自転車で郵便配達中だった。背後から虹のような光が差し、強烈な爆風で地面にたたきつけられた。
劇は、俳優のイザベル・タウンゼントさん(63)が地元の学校から頼まれて作った。英国人作家の父ピーター・タウンゼントさんは、谷口さんの半生を取材して書いたノンフィクション「ナガサキの郵便配達」の著者。イザベルさんも谷口さんと会ったことがある。
谷口さんが世界で知られるようになったのは一枚の写真がきっかけだ。
背中一面が真っ赤に焼けただれ、うつぶせに横たわる少年の写真。ジュクジュクとした傷口からは血がにじみ、じっと目をつむっている――。
被爆から約半年後、入院中の谷口さんを米軍が撮影した写真だ。3年7カ月の入院生活のうち1年9カ月はうつぶせのまま死の淵をさまよい、毎日「殺してくれ、殺してくれ」と叫んでいた。
退院後、長崎原爆被災者協議会(被災協)などで活動した。裏方の仕事を好み、自身の体験は口にしなかった。
床ずれでえぐれた胸「どうか目をそらさないで」
人生が一変したのは41歳の…
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