第12回尾崎豊が抵抗した「支配」 今は若者のよりどころ?地縁・血縁志向へ
連載「1995年からの現在知」
34歳ですか――。取材が終わり、駅へと一緒に歩く途中、記者の年齢をたずねた社会学者の土井隆義・筑波大教授は、こう続ける。「学校では、いまの30代の先生は10代の生徒と心象風景が近いので、わりと対立しない傾向にあります。逆に、30代の先生と50代の先生との間の価値観のギャップが大きくて、ここがぶつかっちゃうんです」
面白いですね。でも、なぜですか?
「やはり、頑張って努力しても良くなるとは限らない、そうじゃないことが多い、という基本的な価値観が、10代と30代では共通しているんですよ。30代以下の人たちは、物心がついてから、さまざまな局面で拡大していく時代を等しく経験していないので。逆に50代から上の人たちは、若かりし頃に行け行けどんどんの時代を生きてきたので、そのメンタリティーをいまだに持ちあわせているんです」
「宿命」――。現代の10~30代の心象風景を象徴するキーワードとして、長く少年や若者の心象風景を研究してきた土井さんは、この言葉を挙げる。同時に、地縁・血縁・友人関係を「しがらみ」ではなく、生きるためのよりどころとする傾向も強まっているという。
戦後半世紀の節目の年は、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件といった未曽有の出来事が相次ぎました。1995年を起点として、私たちの社会や文化の変容を考えます。
尾崎豊はもういない? 年々高まる「校則を守るべき」
――地元大学への進学率も上がり、地元回帰が進んでいるようですね
地元への思い入れが強い若者が増えています。「都会に出て新しい人間関係を築くより、地元で家族や幼なじみといる方が楽」という声も頻繁に聞かれます。SNSによって卒業後も簡単につながれるようになったというツールの変化が大きいのも事実ですが、地縁・血縁といった生得的なつながりの比重の増大と、逆にこれから築いていく未知の世界や関係に対する不安の増大も、その地元志向の心理の背後にはうかがえます。
――時代をさかのぼるように…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら