確かな人間の姿を 棋士・増田康宏の新宣言「AI研究は終わった」

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北野新太

「矢倉は終わった」「詰将棋、意味ない」「感想戦、意味ない」――。将棋の増田康宏七段(25)は若き実力者であり、数々の発言で話題をふりまいてきた棋士でもある。28日、東京都渋谷区の将棋会館で行われている第82期名人戦・B級1組順位戦で羽生善治九段(53)との首位攻防戦に臨む直前、話を聞いた。現在の増田が考える「終わったもの」と「意味ないもの」とは――。

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 9月25日正午過ぎ、将棋会館に程近い千駄ケ谷のレストランでのことだった。

 共にランチをしながら話を聞いていると、増田康宏はあまりにも予期できない固有名詞を挙げた。

 「最近、ハルバースタムの本を読んでるんですよね。いや、めっちゃ面白いです」

 デイビッド・ハルバースタム(1934~2007年)。ピュリツァー賞の受賞歴がある米国のジャーナリストで、ベトナム戦争の泥沼化を主導した政府高官らの群像を描いた代表作「ベスト&ブライテスト」(72年)で知られる。

 新聞記者にとっては手本であり英雄でもあるような存在だが、25歳の将棋棋士の口からはおよそ出てきそうにない名前だ。驚きながらも高揚していると、増田は続けた。

 「もちろん『ベスト―』も『ジョーダン』も『さらばヤンキース』も読んで、どれも面白かったです。『勝負の分かれ目』なんて最高でしたね。ええ、もちろん絶版なので古本で手に入れましたよ」

 「勝負の分かれ目 力と金と才能のドラマ」(84年)は、NBA(バスケットボール)の76~77年シーズンに奇跡的な初優勝を果たしたポートランド・トレイルブレイザーズが崩壊していく79~80年の1季を描いた作品である。

 最初は適当な冗談でも言っているのかと思った。あるいはこちらが幻聴でも聞いているのではないかと。増田は確かに「AI研究は終わった」と言った。現代将棋における最重要テーマの先駆者による衝撃の新宣言。意味は? 理由は? 記事の後半で激白する。

 増田は作中に書かれた文章が好きなんですよ、と明かし、その部分をそらんじた。NFL(アメリカンフットボール)のスターであるO・J・シンプソンの言葉であるらしい。

 「ええと……。『名声は蒸気…

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この記事を書いた人
北野新太
文化部|囲碁将棋担当
専門・関心分野
囲碁将棋

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