2012年10月21日日曜日

「社会保障に関する国民意識調査」にある厚生労働省のトリック

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2012年8月に公表された厚生労働省の「社会保障に関する国民意識調査」を、NHKが今頃になって報道している。

今頃になって報道してくる所に、何か背後で動いている気がしなくもないが、そこを看過するにしても奇妙な部分がある。記事では負担感が大きい事を紹介しているが、以下の部分が厚生労働省の主張を代弁しているように感じる。

調査では、社会保障の給付水準の在り方について、「今の給付水準を保つためには、ある程度の負担の増加はやむをえない」と答えた人が47%で最も多く、次いで、「給付水準をある程度下げても従来どおりの負担とすべき」が22%、「給付水準を大幅に引き下げて、負担も減らすべき」が14%などとなっています。

問題点が二つあって、一つは年代ごとに給付水準の在り方への意見が異なるであろうし、一つは「ある程度の」と言う言い回しだ。

上の図は調査概要の「(12)今後の社会保障の給付と負担のバランス」の図だ。高齢者の人数が多くないか疑問に思うが、これは高齢化だから仕方が無い。どの年代でも給付水準維持が多数派なのは間違いないようだ。

しかし、「今の給付水準を保つためには、大幅な負担の増加もやむをえない」と言う選択肢が無い。現在の社会保障制度を維持するには、大幅増税が必要と言われている*1。例えば消費税率を25%に引き上げないといけないと言う事だ。これを「大幅」と言わずに「ある程度」でアンケートをとったのは、現行制度の維持を死守するために数字を作ったと批判されても仕方が無いように思える。

自省の主張を通すために数字を作ってしまうのは、官僚らしいと言えば、官僚らしいが。

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*1Arai and Ueda(2012)では5.5%~6%の一人あたりGDPの実質成長が必要な計算になるし、Imrohoroglu and Nao Sudo(2011)は実質3%成長、消費税15%でも破綻すると試算している。

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