ケータイ・アプリは、今やごく一般的なものとなっている。しかし、各社で取り組み方に違いがあり、NTT DoCoMoのiアプリ(DoJa,Star)、ソフトバンク・モバイル(SBM)のS!アプリ(旧V!アプリ)は互換性を保ちつつ発展してきたが、KDDI auは方針転換が激しく右往左往しているように感じる。先日報道されたEZアプリの方針変更は、約8年をかけてもとの状態に戻ったと言え、混迷が際立っている。
1. 変遷するauのアプリ開発プラットフォーム
2001年秋モデルから、J2ME/MIDP(現Java ME)をベースにしたezplus(現EZアプリ(Java))により、auでアプリが作れるようになった。公式コンテンツプロバイダと非公式アプリ作者向けのプラットフォームで、公式プロバイダには電話帳等も操作できる特殊なAPIを提供しており、2003年秋モデルまでにPhase 1、2、3と進化した。
2002年春モデルから、EZアプリ(BREW)が採用された。これはJavaより低いレイヤーで動き、速度やメモリーの面では有利だが、公式プロバイダしか開発できないC/C++のプラットフォームだ。BREWの開発元はクアルコム社で、auの通信方式CDMA2000の開発元でもあり、その関係で採用したと言われている。もちろん2010年のauのフィーチャー・フォン(ガラゲー、普通の携帯電話)でも標準搭載されている。
2004年春で、EZアプリ(Java)は正式に廃止になった。auで1回目のJavaアプリ廃止になる。理由はアプリのプラットフォームがBREWとJavaで並存すると混乱があったためとされる(ケータイWATCH)。ライセンス料や開発コストの節約も理由にあるかも知れないが、事実上、公式コンテンツ・プロバイダーだけのプラットフォームになる事を選択した。
2005年秋モデルから、Flash Liteが搭載されるようになった。これはケータイ・アプリよりも、インタラクティブなウェブ・コンテンツ向けなのだが、一般開発者がゲームなどを作る場合は、端末にダウンロードできず、初期バージョンのFlash Liteではファンクション・キーが使えないなどの制限があるのにも関わらず、Flash Liteを選択するしか無かった。
2007年春モデルから、非公式アプリ作者に対してオープンアプリプレイヤー(OAP)が搭載された。これはEZアプリ(BREW)でJavaアプリを動かすもので、公式コンテンツプロバイダはBREWを、非公式アプリ作者にはJavaを提供する体制となった。DoCoMoのiアプリの成功が揺るぎなく、そこでは非公式アプリの存在が小さく無いためだと思われている。なおOAPのJavaはEZアプリ(Java)とは異なるため、2003年までのアプリ資産を実行できるものではない。
2009年秋モデル、2010年夏モデルから、OAP対応の端末がほぼ全滅した。2chのOAPスレッドは葬式ムードでDAT落ちして消えて言った。auで2回目のJavaアプリ廃止になる。理由は公表されておらず、またauの発表では明示的な廃止は示されていない。
2010年秋モデルから、OAP対応端末が復活した。ここの事情については公式の発表は無いが、インターネットの掲示板などでは、互換性の問題で一般ユーザーに混乱が見られていた。
2011年春モデルから、EZアプリ(J)として、OAPが拡張される形で復活することが発表された。OAPと違い、公式コンテンツプロバイダへの提供環境にされている。EZアプリ(BREW)も、EZアプリ(B)に改称されており、JavaとBREWで名称の差も小さくなった。auのEZアプリは、2002年春の時点に方針に戻った格好だ。
2. プラットフォームには継続性が求められる
auの2004年~2006年と2009年秋~2010年春は、一般開発者向けのアプリ開発環境であるJavaの空白期間になる。この間、DoCoMoやSoftbankは一貫してJavaを提供し続けていており、昔に作られたアプリも楽しむことができる。
auのように対応・非対応を繰り返すと、同じauの端末であっても非対応端末が多く出てくるため、非公式アプリ開発者からすると、作成したアプリを実行してもらえる潜在的な人口が減ることになるため望ましくない。また、au向けのアプリは唐突に実行できる端末を失うリスクをはらんでいる。
つまり、アプリケーション実行環境には継続性が求められるわけで、auの2001年~2011年の方針のぶれは失敗であった。
3. EZアプリ(J)は方向としては正しいが、今後の波及効果は小さい
公式コンテンツ・プロバイダーにJavaを提供するのは、三つの理由で正しい。まず、公式アプリ開発者と非公式アプリ開発者は、人材や情報がつながっている。このため、公式・非公式ともに同じプラットフォームを提供した方が、開発者の層や資産の蓄積が厚くなる。次に、他のケータイ・キャリアの開発者がauのアプリを開発しやすくなる。SBMのアプリとはアプリを共通にでき、DoCoMoのアプリとも共通部分が多くできるため、参入コストが低くなる。最後にC/C++とJavaの比較をすると、議論はあるが、後者の方が概ね先進的であろう。
ただし、二つの理由で、今後のauにプラスかは疑問が残る。まず、既存アプリケーションがBREWになっているため、BとJの複数方式のEZアプリが存在する状態が続く。2004年春にKDDI自身が述べたように、混乱は残るであろう。次に、今後のauはスマートフォンであるAndroid傾斜するとしているので、レガシーなフューチャー・フォンを拡張する意義が少ないかも知れない。NTT DoCoMoはiアプリをDojaからStarに進化させたが、Starプロファイルの反響は小さい状態だ。
4. ガラゲーの拡張には、アプリの規制緩和・API充実が必要
スマートフォン(AndroidやiPhone)とフューチャー・フォンを比較して、まず目にいくのはタッチパネルの大きな画面だが、通信先や通信量の自由度や、操作できる機能の範囲の差も大きい。ガラゲーもカメラやGPSなどの機能もあるのだが、非公式アプリからは自由に扱えない。アプリ作者から見ると、この辺の制限が創造性を落としているように思える。セキュリティーやトラヒックを理由に制限しているようだが、利用禁止以外にも制限をする方法はあるであろうし、利用者責任に任せていい範囲もあるはずだ。EZアプリ(J)ではSDカードへのアクセスが緩和されたが、もっと自由に使えるAPIを拡張してもらいたい。
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