楽天koboタイトル数水増しのようなKPI設定ミスは世間に山ほどある
今日は、楽天koboイーブックストアのちょっとした失敗を例に、世の中でよくある、目標やKPI達成のために、本筋を外れたアクションをしてしまう失敗について触れます。
電子書籍リーダーとして注目された楽天koboですが、そのコンテンツを入手するイーブックストアの様子が、何とも微妙なことになっています。
というのも、イラスト1枚で1コンテンツ(50円)という商品が2000点以上あったり、コード進行付歌詞カード1曲分で1コンテンツ(80円)という商品が14000点以上あったりという状況なのです。「イーブックのコンテンツ1点」にはほど遠い商品が多数登録されていると多方面から突っ込みが入っていたので、ご存じの方も多いでしょう。
なぜこんなことが起きたのでしょうか?
おそらく、「イーブックストアのコンテンツは、7月末までに3万点・8月末までに6万点を揃える」と発表していたとおりにするために、「なんでもいいから登録数を増やす」という方向に動いてしまったのではないかと想像します。
たしかに、こうしたコンテンツでも登録していくことで「コンテンツ数」というKPIを達成する方向に動きます。しかし、その先にあるもっと大きなゴールに対して役立つかというと、微妙でしょう。
これらのアイテムがイーブックストアの売上に貢献するとは思いがたいですし、楽天koboのブランド形成に役だつとは思えません。こんなことをするぐらいなら、まだ書籍の1章売りを登録していくほうが「電子書籍プラットフォーム」的だと思います。
コンテンツ数というKPIを達成せんがために、本来のゴールに貢献しないどころか逆効果にもなりかねないアクションをしてしまった、典型的な例に見えます(実際の意図や社内でどう評価されているかは、私にはわかりませんが)。
これだけを見ると「楽天koboの中の人は大変なんだね」となるところですが、似たようなことをしてしまっている例は、実は世の中に山ほどあります。
B2Bサイトで獲得営業リード数を増やすために、見込み度が低く案件化するはずもないリードまで営業に引き渡してしまう。
PV数を増やすために1コンテンツのページ分割をやりすぎてユーザーがサイトに対して不満を持つようになってしまう。
検索エンジンから獲得するユニークユーザー数を増やそうと、サイトのテーマと関連性の低いアイドルやラーメンのコンテンツをどんどんサイトに掲載してしまう。
サポートサイトの掲載FAQ数を増やすために枝葉末節の項目を多くしたために、逆にユーザーが問題解決方法を探しにくくなってしまう。
TwitterでのRT数を増やすために炎上しがちなネタを多用した結果、インフルエンサーから「あのアカウントはダメだ」とdisられてしまう。
メルマガ発行回数を維持するために質の低い内容のメールを送るようになって、開封率や反応率が下がってしまう。
四半期の売り上げ目標を達成するために値引き販売しすぎて、その後も値引き販売ばかり強いられて利益率が下がってしまう。
四半期の売り上げ目標を達成するためにニーズの合わない顧客に商品を無理に売ってしまい、顧客満足度が下がってしまう。
セミナー申し込み数を増やすために来る気のない人に頼み込んで申し込んでもらったが、結局その人は当日参加しない。
会社説明会の参加者数を増やすためにおもしろコンテンツで学生を惹き付けた結果、会社の求める人材とまったく違う学生が多数参加してくる。
現場におけるKPI達成のためのアクションが、本来のゴールや企業活動全体の方針・戦略から外れてしまうことは、組織が大きくなればなるほど増えるものです。
もちろん、まずは何が何でも認知を高めることを最優先する場合もありますし、シェアを確保するために利益はさておき売上を拡大することが重要な側面もありますので、上記のようなアクションが必ずしもダメだと言えない場合もあります。
しかし、そうした場合を除いては、目の前の「目標」が企業活動全体のなかでどういった位置づけをもっているのかを正しく理解せずに仕事を進めるのは、「ちゃんと仕事をしている」とは言えないですよね。
現場の人が全体戦略を意識するのも大切ですが、それよりも、上の人間が現場に対して全体像のなかでの仕事の意味を正しく示すことが重要なのではないかと思います。
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