Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

2024年11月の空の観察

 

11月のとある日,晴れた空の下で遠くに虹が出ていることに気がつきました。

この日は細かい日照り雨も降りました。

こんな時はいつも,黒澤明監督の『夢』という映画の中で,日照り雨が降る日に狐の嫁入りを目撃した少年が虹の下にある狐の家へ謝りに行くシーンが思い出されるのです。

 

きれいな虹のアーチ。

この日の虹は,主虹だけではなく,その外側に副虹がはっきり。私が副虹を見たのは何年振りかのことです。

虹については以前勉強しています。虹は必ず太陽を背にした方向に現れ,主虹は外側から赤橙黄緑青藍紫と色づく一方,副虹内側から赤橙黄緑青藍紫という色の並びになります。色の並びが逆なんでしたね。

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この日,もっともテンションが上がったのが虹の足を見たとき。

麓の家がすっぽりと虹に覆われていました。こんなに虹の袂をハッキリと見た経験はあまりなかったので,これにはちょっとばかり興奮しました。

詩人・吉野弘さんの『虹の足』という作品にある台詞を思わず叫びたくなりました。

 ―――おーい、君の家が虹の中にあるぞオ

 

久しぶりにキレイな虹が見れたので,ここ最近何事にもモチベーションを失っていた気持ちも少しだけ吹っ飛んだのでした。

 

 

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さて,11月も中旬ごろまでは暖かかったのですが,下旬ともなると平年並みの涼しさを取り戻し,もうすっかり秋の気配となりました。

前半が暖かかっただけに,秋はあっという間に過ぎていくのでしょうね。

紅葉もすでに見頃が終わったところもあるようです。

この1ヶ月は実技の問題をいくつか解きました。いつも思いますが,記述の仕方が難しいですね。私の回答が合っているのかが分からない。独学の悪い側面です。

12月は仕事の締めや出張などがいろいろ重なるので,とても勉強できるような余裕はないかもしれません。それでも通勤時間や移動時間のわずかなスキマ時間を見つけて参考書などをペラペラめくるようには努力するつもりです。

でも,結局は誘惑に負けて,YouTubeのショート動画を見てしまい時間を浪費するという未来が目に見えてるんですよね。わかっちゃいるけどやめられねぇ。

まぁそれでも,出来るところまではやるって感じですかね。



 

2024年10月の空の観察

 

2024年の10月もいつにも増して暑い1ヶ月だったように思います。10月19日には,東京都心で最高気温が30.1度を記録し,観測開始以来最も遅い真夏日となりました。福島県静岡県などでも,真夏日の地点が相次いだようです。

www.sponichi.co.jp

そんな暑かった10月の空を切り取ってみました。

 

 

行合の空(ゆきあいのそら)

季節の変わり目,特に夏から秋に変わる時期は「行き合い」と呼ばれます。その頃の空を「行合の空」と呼び,古くは平安時代の和歌にも詠まれているんだそうで。

行合の空では,空高くに秋の空,空の低いところには夏の空が共演し,多種多様な雲が入り混じる空模様を呈します。

この日も,空高くには巻雲そして高積雲,空の低いところには積雲や層積雲などが観察されました。いよいよ夏も終わり,本格的な秋の季節へと入っていくのですね。

 

 

そういえば紫金山・アトラス彗星が地球に接近していましたが,結局10月14日に撮影したこの1枚しか撮影できませんでした。ここ最近,私の住んでいる街では,西の空は雲が続いていたのです。

この彗星が次回地球に近づくのは約8万年後らしいので,おそらく次回お目にかかるのは難しいでしょう。彗星よ,さようなら。

東京の10月の気温推移

冒頭でも述べた通り,今年の10月もいつも以上に暖かい秋で,おそらく観測史上最も暑い10月になるのは間違いないでしょう。

ここで,1950年から2024年までの75年間の東京における10月の1ヶ月平均気温をプロットしてみました。その結果,以下のような図を得ました。

2024年は10月26日までのデータですが,他の年と比較しても明らかに突出した気温の高値を示しています。

また,75年間という長い期間で見ると,気温の増加傾向が見て取れますね。

 

単純な線形の回帰分析をしてみると,青色の線が引けました。

75年間の気温の上昇傾向は明らかですし,おそらくヒートアイランド現象地球温暖化などの影響が反映されたものだと考えられます。

 

地球温暖化などの気候変動に伴い,暑い夏が長期化し,春と秋が極端に短くなり,暖かい冬が来るだろうと懸念されていますが,まさに今年はそんな1年になるかもしれません。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから一部引用させていただきました。

【天気図】前線解析②~閉塞前線~

 

今回は閉塞前線について勉強していきたいと思います。第62回気象予報士試験実技試験の前線解析でも出題され,私としてはあまり理解できていなかった点だったので,ここでちゃんと頭に入れておくことにします。

 

 

閉塞前線とは

以前,前線については勉強しました。

weatherlearning.hatenablog.jp

前線には,寒冷前線温暖前線停滞前線閉塞前線の4つがあったのでした。

中でも,閉塞前線は,低気圧から伸びる寒冷前線が前面にある温暖前線に追いついたときにできる前線のことで,この閉塞前線ができる頃に低気圧は最盛期を迎えます。

 

低気圧の最盛期には,下の図(Microsoft PowerPoint - 03_gainen (jma.go.jp)より一部改変)のように,トラフの位置(下図赤の二重線)は地上の低気圧中心のほとんど真上にくるような形になります。そして,閉塞前線温暖前線寒冷前線に分岐する点(閉塞点)付近の上空をジェット気流が流れるようになるのです。

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閉塞前線の種類

この閉塞前線には,寒冷前線の延長線上に閉塞前線がある寒冷型閉塞前線と,温暖前線の延長線上に閉塞前線がある温暖型閉塞前線の大きく2つに分類されます*1

 

実際に地上の天気図を見てみましょう。

下のように寒冷前線を伸ばした先に閉塞前線があるのが寒冷型閉塞前線。ちょうど漢字の「人」の字の形をしているのが分かりますね。

 

一方,温暖前線を伸ばした先に閉塞前線があるのが温暖型閉塞前線。こちらは漢字の「入」の字の形です。

 

では,なぜこのような前線の形に違いが出るのでしょうか。

 

結論から言ってしまうと,寒冷型閉塞前線ができるときは,寒冷前線の進行方向後面の寒気が強く(温度が低く),寒冷前線の性質が強く現れます。一方で,温暖型閉塞前線ができるときは,寒冷前線の進行方向後面の寒気は比較的弱く,温暖前線の進行方向前面の寒気が強く(温度が低く)なるという特徴を持ちます。

 

気象庁が公開している資料(Microsoft PowerPoint - 04_teigi (jma.go.jp))を見ると,それらの違いが分かりやすくまとめられていました(下表)。



ちなみに,日本付近では大陸からの冷たい寒気が流れ込みやすいため,寒冷型の閉塞前線の方が温暖型より発生頻度は多いようです。

天気図上の寒冷型閉塞前線

ここまで閉塞前線について見てきましたが,どのような大気の状態のときにこれらの前線が解析されているのかをちゃんと見てみないことには理解できたとは言えません。

そこで,まずは寒冷型閉塞前線の地上・高層天気図を眺めていくことにしました。

 

下は2024年1月15日9時(日本時間)の500hPa高度・渦度の分布図(AXFE578)。冒頭に示した地上天気図の寒冷型閉塞前線の高層に相当します。

北海道の北部に低気圧中心があり,高度5280m付近に渦度0線に対応する強風軸が位置している感じでしょうか。地上の低気圧中心は強風軸の北側にあり,すでに閉塞していることが予想できます。

 

次に700hPa上昇流/850hPa気温・風の分布図(AXFE578)。

等温線の分布が密なところがあり,そのあたりに前線が解析できそうな気はしてきます。

では実際にどのように前線は解析されたのでしょうか。

高層天気図に地上天気図の前線を重ねてみました。

 

下は500hPa高度・渦度の分布図(赤)と地上天気図(黒)を重ね合わせたもの*2

たしかに,ちょうど閉塞点付近を渦度0線に対応する強風軸(青矢印)が通っていることが分かりますね。

 

次に700hPa上昇流/850hPa気温・風の分布図(赤)と地上天気図(黒)を重ね合わせてみます。

閉塞点付近には,「-81hPa/h」という上昇流の極値があります。閉塞点付近は(寒冷前線温暖前線閉塞前線の3つの前線が交わるので)風が収束しやすく強い上昇流が生まれやすいといいます。

寒冷前線はだいたい0℃の等温線に沿って引かれており,教科書に良く書かれている等温線の集中帯の南縁に解析されています。

一方,温暖前線はー3℃の等温線に沿って引かれており,こちらは風の水平シアーをもとに解析されてるんですかね。


特徴的なことは,寒冷前線付近で等温線が密になっていること。すなわち,寒冷前線を挟んで温度差が比較的大きく,これが寒冷型閉塞前線として解析されるためのポイントとなるようです。

天気図上の温暖型閉塞前線

お次は温暖型閉塞前線の地上・高層天気図を眺めてみます。

下は2024年3月8日21時(日本時間)の500hPa面天気図。こちらも冒頭に示した地上天気図の温暖型閉塞前線の高層に相当するものです。

この図から低気圧がどこに位置しているかは判断が難しそうですが,日本の東海上に低気圧が存在しているようです。

 

700hPa上昇流/850hPa気温・風の分布図。

東経150°,北緯35°あたりに位置する暖気核「W」付近に低気圧が位置しています。その暖気の北側で等温線が密になっていることが分かります。

 

先ほどと同じように,高層天気図に地上天気図の前線を重ねてみました。

500hPa高度・渦度の分布図(赤)と地上天気図(黒)を重ね合わせたもの。

強風軸はあまり明瞭には見えませんが,閉塞点付近の上空を通る渦度0線あたりをだいたい青矢印で引いてみました。

 

次に700hPa上昇流/850hPa気温・風の分布図(赤)と地上天気図(黒)を重ね合わせてみます。

やはり閉塞点付近には,「-152hPa/h」という上昇流の極値があります。寒冷前線は9~12℃の等温線に沿うように引かれ,温暖前線は等温線の集中帯の南縁付近に解析されているようです。

 

温暖型の閉塞前線を解析する上で重要なことは,先ほどの寒冷型とは異なり,温暖前線付近で等温線が密になっている点です。寒冷前線側では等温線の明らかな集中帯は認められません。

すなわち,「温暖型の閉塞前線ができる際には,寒冷前線の進行方向後面の寒気は比較的弱く,温暖前線の進行方向前面の寒気が強く(温度が低く)なる」という上述した特徴が,天気図上できちんと表現されているのです。

 

 

天気図理解のメモ

 

参考図書・参考URL

下記の文献やwebサイトを参考にしました。

 

*1:中立型閉塞前線というのもあるらしい

*2:GIMPという無料の画像編集ソフトを用いて2つの図を重ねました

第62回気象予報士試験 結果報告

 

10月11日に,第62回気象予報士試験の結果が発表されました。

 

今回は2度目の受験となりましたが,あまり手ごたえ的なものがなかったことは以前に記事にしています。自己採点もせずにこの一ヶ月は気象の勉強から離れてゆっくり過ごしておりました。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

今回の一般知識・専門知識はいずれも合格点が10点となっており,ボーダーが少し低くなったようです。難しかったんですかね。

 

で,会社帰りに郵便ポストを見てみると,気象業務センターから合否通知のハガキが入っていました。

開いてみると次のようにありました。

 

 

 

 

 

うーん,一般知識が思っていた以上に点数が取れていなくて少しがっかりです。専門知識は一般知識よりもまだ手ごたえは感じたので,何とか拾ってもらえた感じでしょうか。

 

自己採点した結果,一般知識は9点,専門知識は11~12点(うち1問は2択まで絞ったことは問題冊子に書いてましたが,迷った結果どちらを選んだか覚えていない)となりました。

具体的には下のような結果です(各15問のうち,〇が正解した問題,✕が不正解,?はどれを選択したかはっきり覚えていない)。

 一般知識:〇✕〇〇〇〇〇✕✕✕✕✕〇〇〇

 専門知識:〇〇✕〇〇〇〇✕〇〇?〇〇✕〇

 

一般知識は水平スケールを問われた問8(b), 問9(a) のどちらも間違えていました(๑´ڡ`๑)テヘペロ。問11(c)は個人的には細かいとこついてきたな問題。「対流圏」ではなく「成層圏」が正解とはちょっと意地悪すぎやしないか。何の違和感も感じず速攻正しいと判断したわ。気象法規も問12を落としてましたね。問12(d)は一周回って引っ掛け問題かと邪推しましたが,シンプルに私の思い過ごしでした。問3は良問。

専門知識は問3(d)の問は重箱の隅をつつき過ぎではないだろうか。こんなの覚えた記憶ないよ。問14の気象防災情報については全然覚えてなかったので(覚えようともしていない←オイ)勘で書きましたが当然間違っていました。

 

学科試験でつまづいているので実技試験は採点されませんが,先日1ヶ月半ぶりに実技試験を解き直してみました。気象業務センターからの回答と照らし合わせてみると,記述に関しては怪しい点が多々あるものの,考え方自体は大きく外してはいないと思って少し安心したのでした(温暖型閉塞前線と寒冷型閉塞前線についての前線解析の問題はちゃんと理解できていなかったので,このやり直しの機会で非常に勉強になりました)。

ただ,試験当日はどうしても緊張して焦ってしまって,時間を気にするあまり問題文を読み飛ばしたりもしたので,試験会場でいかに平常心で試験に臨むかは私にとって重要なポイントです。でも平常心で試験に臨むのはなかなか難しいんですよね。

 

 

ということで今回の結果は中途半端で,喜び半分,ガッカリ半分といったところですが,とりあえず次回の1月の試験だけは受験しようかと思います。正直,学科試験であんまりつまづいていたくはないのです(かと言ってあんまり勉強に時間もかけたくない)。

 

 

追伸。

肉眼で見えるという彗星(紫金山・アトラス彗星)が話題になっていましたので,カメラを向けてみました。

雲が出てきてキレイには撮影できませんでしたが,彗星の核とそこから伸びるわずかな尾を確認できました(10月14日撮影)。

少なくとも雲が出てきたこの日の空では,肉眼で彗星を見つけるのはとても難しい明るさでした。カメラの露出を上げてようやく確認できるといった感じです。

あと何日かは夕方の西空にいるようなので(ただしどんどん暗くなってゆく),チャンスがあればもう一度撮影にトライしたいと思います。



2024年9月の空の観察

この1ヶ月間は気象についてほとんど勉強せずに,土日休日はお出かけしたり,家でゆっくりしたりと,あまり頭を使わずに過ごしておりました。

しかしながら,勉強をほとんどしなくなると,なんとなく張り合いのない生活にも思えてきます(とは言え,これまでそんなに日々勉強してたのかと問われると,胸を張って「してた」とはとても言えませんが)。

仕事以外の勉強に時間を費やすことは,意外にも,仕事自体のリズムをつかむのに良いサイクルを生み出しているのかもしれないと,最近気がついたのでした。

通勤時間に本をパラパラと読み,帰宅はだいたい20時ごろですが,その日の余力が残っていれば少しだけ勉強する。知らないうちに,作業効率を考えて行動していたのかもしれません。

 

さて,この1ヶ月は机に向かっての勉強こそほとんどしませんでしたが,何冊かの気象の本は読みました。

まず1冊目が『天気の不思議を読む力』(トリスタン・グーリー著)。著者は気象学の研究者ではなく,探検家です。

日常の身近に存在する,雲の動きや風の変化などの「微気象」について,具体的な例を挙げながら天気を読むコツについて書かれています。気象予報士試験の一般知識を一通り勉強した人であれば,容易に理解できる内容です。

気象に興味があったとしても,実際に空を眺めて雲の動きの変化を観察することは時間のない現代人にとってはなかなか難しいことですよね。この本では,こういう点に着目すれば良いといったちょっとしたコツが書かれていますので,それくらいならできるかも,と読み手に思わせてくれます。

何より,探検を通して蓄積された豊富な体験談が面白い。こういった科学読み物が私は大好きなのです。

 

2冊目が『沸騰する地球』(ニュートンプレス)。

   

世界各地の異常気象とその原因と考えられている地球温暖化について,写真を用いて分かりやすく解説されています。2023年7月,国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」という表現を用いて,地球温暖化の進行に警鐘を鳴らしたことは記憶に新しいですね。

こういった本を読むと,地球の温暖化は楽観視できない危機的な状況であることを改めて突きつけられます。

 

9月も終わろうとしていますが,この1ヶ月も先月に引き続いて猛暑日が続き,観測史上最も暑い9月になりそうな勢いですね。

EUの研究機関が発表したことには,今年2024年の6〜8月の北半球は史上最も暑い夏だったそうです。気象庁も今年の日本の夏は昨年と並んで最も暑い夏であることを発表しています。これも地球温暖化の影響が大きいと考えられています。

 

来年以降もこの暑さが続くようなら,(私が大好きな)太陽が燦々と輝く眩しい陽光降り注ぐ夏の季節は,暑くて外出できない灼熱の季節へと認識を新たにする必要がありそうです。

そんな過酷な夏にするのを阻止するためにも,温暖化防止に何ができるかを我々が小さいながらも少しずつ考えることが重要になってきますね。それはなにも我慢しろと言っているのではなく,まずは過度にやりすぎていること(冷房の設定温度が低すぎる,過剰に食べ物を買って腐らせる,寝落ちして夜中を通して室内電気をつけっぱなしにする,近くのコンビニに行くのにも車を使う,などなど)に目を向けて,徐々に減らしていくことから始めるのが良いそうです。

 

2024年8月の空の観察

 

日本列島に非常に歩みの遅い迷走台風が上陸し,九州地方をはじめ多くの地域で大きな被害を出していますね。

2024年8月31日21時現在は,紀伊半島の南の海上に台風中心が位置しており,今後北の方へと進んで東海地方・近畿地方を通って日本海へと抜けていく予想ですが,これまで予報を裏切り続けてきた台風なだけに,今後の進路がどうなるのかははっきりとしないというのが正直なところでしょう。

 

この8月も猛烈な暑さが続き,体感では,「史上最も暑い夏」と言われた2023年を超える暑さだったように思います。

そんな中,先日,第62回気象予報士試験を受けてきました。1年ぶり2回目の受験でした。

怖いから自己採点はしないようにしてるんですが,手ごたえはすべての科目でビミョーですね。

一般知識は,点を確保しなければいけない気象法規で2問が怪しい(2択で迷った)のと,ほかに2~3問ほど自信がない問題がありました。

専門知識についても,一般知識よりはまだ出来たように思ったものの,試験が終わってもグッとくる手ごたえはなかったです。読み間違えや勘違いなどもいくつかやらかしていてもおかしくはないです。

気象予報士試験は重箱の隅をつつくような問題も多い印象も受けるので,解き終わっても出来ているのか出来ていないのか今一つ分からないのです。

実技試験は分量がやはり多かったですね。とりあえず実技1も実技2も時間ギリギリで最後まで完走したものの,なかなか厳しい結果かと。

とりあえず目先の問題を解くだけでいっぱいいっぱいで,全体の状況を把握できるほどの視点をもつことができませんでした。

試験が終わっても,結局どういった状況が問われている試験だったのかが頭の中で咀嚼できなかったので,これは経験不足と勉強不足と言わざるを得ません。

天気図から大きな気象の状況を判断し,75分という短時間で大量の作業をこなすには,いろんなパターンの過去問に当たって経験を積む必要がありそうです。

自分なりのルーティーンを決めておくのも必要だと感じました。問題用紙をビリビリ切り取るのか,クリップなどを使うのか,色鉛筆を使うのか,などなど。

私は何も用意していないのですが,そちらの方が時間的なロスが少ないのではないかという私なりの判断です。

結果はどうあれ,社会人も長くなると試験を受けるということがないので,久しぶりに試験会場に行くと日常では感じられない刺激が得られるのは楽しいですね。

 

8月も本日で終わりです。明日から9月。ちょうど学校も始まる時期ですね。

試験後のこの1週間は何の勉強もせずにゆっくり過ごしていました。

今はまだ気象の勉強を再開する気にはならないので,すこしばかり休暇をとったあと,少しずつ日々の気象を眺めていきたいと思っています。

 

【天気図】2024年8月の台風

 

2024年も台風シーズンがやってきました。特に今年初めて日本に上陸した台風5号(MARIA)は東北地方を直撃しました。

今回の台風は東北地方から上陸したということで,見慣れない進路をとりましたが,1951年の統計開始以来で北太平洋側から上陸した台風は,今回のもので3例目だったそうです(残り2つは,2016年台風10号と2021年台風8号)。なるほど道理で見慣れないわけですね。

 

 

台風の接近と上陸

まずはこの台風について上陸の数日前からアニメーションとして追ってみました。

台風は日本の東の海上を北上し,やがて東北地方の東の沖合に到達します。その後上陸し熱帯低気圧に変わって日本海を北上していったようです。特徴的なのが移動速度が遅いこと。

この台風について,地上天気図では英文情報として記載されていましたので,下に抜粋したものを載せておきます。

 

8月11日 日本時間21時(上陸約12時間前)

移動速度は「西にゆっくり(WEST SLOWLY)」と示されています。SLOWLYとは,速度が5ノット以下の場合に記述されるので,たしかに台風の移動速度は遅そうです。台風の移動速度は東京周辺で平均15ノットくらいだそうです。

また,中心気圧は980hPa,中心付近の最大風速は50ノット,最大瞬間風速は70ノットであることも読み取れますね。

 

8月12日 日本時間9時(上陸した直後)

移動速度は「北西に9ノット(NW 09KT)」ですね。

ややスピードを上げて北西に移動し,中心気圧は990hPaと気圧は若干浅まっているものの,中心付近の最大風速は50ノット,最大瞬間風速は70ノットと12時間前と同程度の風速を保っていました。

8月12日 日本時間21時(上陸約12時間後)

その12時間後には中心気圧は998hPaとなり,中心付近の最大風速は35ノット,最大瞬間風速も50ノットと勢力としては徐々に弱くなっていったのが分かります。

中心付近の最大風速が34ノット未満になると熱帯低気圧となるので,この後台風は熱帯低気圧に変わったようです。

 

台風のスピードが遅いということは,それだけ日本に居座る時間も長くなるということなので,被害も大きくなる可能性があるということを私たちは想定しなければいけません。

 

台風の進路

今回の台風が特徴的だったのは,そのスピードだけではなく進路です。冒頭でも述べた通り,統計開始以来3例目の東北太平洋側からの上陸台風だったということです。

ちなみに台風の進路は月別に見ると概ね下のようになっており,一般的には日本の西の方から接近して,7~8月に沖縄方面に多く8月から9月に本州に多く接近する傾向があります。平均的な年間の台風接近数で見ると,沖縄が最も多く,次に伊豆・小笠原諸島が多いようですよ。

台風の月別の主な経路

今回のように東の方角から日本に接近して,北西へと進んで日本列島に上陸するというのは非常に珍しいことだったようです。

では台風が,上記のような稀な進路をとった原因はどのような点にあったのでしょうか?私の気象のお勉強がてら少しばかり深掘りしてみることにします。

天気図を眺める

ここ最近非常に暑い日が続いてますね。地上だけではなく海面水温を見てみると(下図),海水温は西日本では30℃を超えています。これは海水浴というより,もはやぬるめの露天風呂ですね。

気象の教科書的には,熱帯低気圧は海面水温が26~27℃の海域で発生するといわれています。 また,海水温が30℃を超えると台風の発達も助長されるようです。十分な水蒸気を含むことで,大量の潜熱が放出され,それが台風のエネルギー源になるのでした。

weatherlearning.hatenablog.jp

東北地方付近を見てみても27~28℃くらいの海水温があるので,台風は北に進んでも勢力を維持することができたと考えられます。もちろん海水温だけで台風の勢力は維持されるわけではなく,風の鉛直シアーが小さかったりと他の様々な要因からも影響を受けるようですが。

 

それでは,今回の台風の進路について考えてみましょう。

まずは地上天気図。こちらは8月11日 日本時間9時のものです。

東北地方近海には明瞭な台風の渦がありますね。また,日本の南には「TD(Tropical Dipression)」と記載された熱帯低気圧も2つあるのが確認できます。海水温が高い南の海で順調に台風の卵が育っているのです。

 

そして日本の東には太平洋高気圧。移動速度は「ALMOST STNR(ほとんど停滞)」となっており,背の高い高気圧が東にドンと居座っていることが読み取れます。

そうなると,通常は東へと進むはずの台風の前に,高気圧が通せんぼしているわけですから,台風は迂回しなければいけません。このとき高気圧周辺では高気圧性の循環をもった時計回りの風が吹いているので,台風はそちらの迂回経路の指示通りに進路変更を余儀なくされるわけです。高気圧「裏から回れや」,台風「へい,親分」みたいな感じかと。

上は500hPaの実況の高層天気図ですが,太平洋高気圧が北の方に位置していたことで,高気圧を回る風が台風から見て南東側から吹き込む形になり,結果的に台風は北西進したと考えられます。

 

また,天気図を見ると台風周辺の等高度線の幅が広くなっていることから,気圧傾度が小さく,風も弱かったことが推察されます。

気圧傾度力が小さく風が弱かったことが,今回の台風の速度が遅かった理由の一つになっているのではないでしょうか。

 

また,通常の台風は偏西風に乗って日本付近でその速度を速める傾向がありますが,下の500hPaの渦度分布を見てみても,偏西風と台風との距離が少し離れていることが見て取れます。

赤線あたりに渦度0線があって強風軸(その高度における偏西風の速度の極大域)に対応しているはずですが,台風はその強風軸の南側に位置しており,偏西風にうまく乗れなかったことも速度が遅かった大きな原因だと考えられます。

台風の被害

台風5号については,徐々にその被害の全容がつかめてきたようです。東北地方の一部の地域では降水量が史上最大記録となり,浸水被害も広い地域で出たようです。

 

台風による大雨や強風・暴風に注意することは当然のことですが,台風の怖いところは遠く離れていたとしても被害が出る危険性があるという点です。

下のような記事が出ていました。

www.yomiuri.co.jp

茨城県の海水浴場(台風の接近に伴い当時遊泳禁止だった)で,遊泳していた2名の男性が波にさらわれたのです。台風中心から少しは距離があったとはいえ,沿岸部では高潮や高波に特に注意で,こういう時に遊泳するのは非常に危険です。

上の図のように,台風中心から500km程度離れていても波が高く注意が必要なのです。特に,台風域で発生したうねりは波長が長く減衰しにくいため,遠く離れた海域まで伝播しやすく警戒が必要になります(※うねり+風浪=波浪)。

weatherlearning.hatenablog.jp

同様に,台風中心から離れていたところでも強い風が山の斜面に吹き付けたりすると,空気の上昇により積乱雲が発達しやすく大雨は降りやすくなるので,離れているからと言って安心できないのです。

 

とりあえずここまで。まだまだ気象については勉強中で,考察も不十分かもしれませんが,日々の天気図を自分なりに深読みして日常の天気予測くらいはできるようになりたいと思っています。

今回と似たような記事を以前書いていましたのでご参考まで。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

天気図理解のメモ
  • 北太平洋側から上陸する台風は珍しい。
  • 台風のスピードが遅いと被害も大きくなる危険性がある。
  • 一般的に台風は,日本の西の方から接近して,7~8月に沖縄方面に多く8~9月に本州に多く接近する。
  • 平均的な年間の台風接近数で見ると,沖縄が最も多く,次に伊豆・小笠原諸島が多い。
  • 太平洋高気圧の位置から周辺の風の流れを推定でき,台風の進路について考察できる。
  • 気圧傾度力から風の強さを考察できる。
  • 台風は偏西風に乗って日本付近でその速度を速める傾向がある。
  • 渦度0線から強風軸を推定し,台風との距離を測定することで台風の移動について考察できる。
  • 台風中心から離れていても,海上ではうねりなどの影響で波が高くなっており海難事故には注意する必要がある。
  • 台風中心から離れていても,強い風が山の斜面に吹き付けると空気の上昇により積乱雲が発達しやすい。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトを参考にさせていただきました。

2024年7月の空の観察

 

非常に暑い日が続いていますね。

今月も空の写真を何枚か撮影しておきました。夏の雲は見ていてワクワクしますね。

今日で7月も終わり。

明日からは8月となり,いよいよ気象予報士試験の受験のときとなります。

この一か月はさすがに勉強しないとです。

 

2024年6月の空の観察

 

6月になって,私の住んでいる地域も梅雨に入りました。

 

6月前半はそこそこ晴れた日が多かったように思います。

やっぱり青空は気持ちがいいですね。

梅雨入り以降はぐずついた天気になりました。ジメジメしていてなんとなく過ごしにくい日が続きますね。

とりあえず7月は,気象の勉強は少しずつでも進めていきたいと思っています。

 

【天気図】2024年6月の梅雨の線状降水帯

 

 

静岡に線状降水帯

2024年6月28日,静岡県線状降水帯が発生したという気象ニュースが流れました。そして,土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まったとして,気象庁は「顕著な大雨に関する気象情報」を発表したようです。

 

そのときの気象レーダーの画像です(雨雲レーダー(実況)(旧:雨雲の動き) - 日本気象協会 tenki.jpより)。

真っ赤になったレーダーエコーが静岡県に覆いかぶさってきていることが確認できますね。浜松市では6月の観測史上最大雨量となる1時間に59.5mmの非常に激しい雨が降ったそうです。

この雨に伴って東海道新幹線の運転が見合わせになりました。交通にも多くの影響が出たんですね。

 

下はその時の雲頂強調画像ですが,静岡付近に雲頂高度の高い積乱雲が通過していることが見て取れます。

今回は,このときの大気の状態について,私の勉強がてら天気図を振り返ってみることにしました。

 

天気図を眺める

まずは地上の実況天気図ASASから。2024年6月28日9時の天気図です。

日本列島には梅雨前線がかかっており,日本の東の海上には高気圧が確認できます。

 

今回,静岡県で大雨が降ったということですが,大雨が降るには発達した雲ができる必要があります。そして発達した対流雲ができるためには主に3つの条件が必要になります(積乱雲の発生条件 |雷のキホン| 雷の知識 | 雷(らい)ぶらり を引用)。

 ①暖かく湿った空気があること

 ②空気を持ち上げるきっかけがあること

 ③大気の状態が不安定であること

 

まず,「①暖かく湿った空気がある」という点ですが,今回の場合,海から大量に水分を供給された太平洋の高気圧を回る空気が南西の方角から流れ込んできたことがそれに当たります。

前日に発表された850hPaの相当温位図(予想図)を見てみると,342Kの高相当温位の空気(赤線)が九州南部や紀伊半島,東海地方付近に40ノット程度の風速で帯状に流れ込むと予想されていました。

このように,暖かく湿った空気が静岡県付近に流れ込んでいただろうことが天気図からも示唆されます。

 

ただし,下層に大量の暖かく湿った空気があるだけでは積乱雲が発達するとは限りません。それが「②空気を持ち上げるきっかけがある」という点につながるワケですが,大雨となるには,大量の水分を含んだ空気が持ち上げられて冷やされて凝結する必要があります。空気を持ち上げる力としては,下層の空気の収束や,山などの地形によるもの,前線によるものなどがあります。

梅雨前線では,南からの暖湿気が前線へと流れ込むことで空気が収束し,前線南側で上昇流が発生するというのが典型的なパターンらしいです。

 

ここで,6月28日9時の700hPa鉛直P速度(網掛け・白抜きで表現)と地上の停滞前線を重ね合わせてみると,たしかに前線の南側で上昇流域(網掛け部分)が広がっていました。

静岡県付近の上昇流に着目してみると,-85hPa/hという鉛直P速度の値が確認できます。

 

さらに,空気を持ち上げようとする力が働いていたとしても,その空気が自由に上昇できる高度(自由対流高度)まで持ち上げられなければ,やはり対流雲は発達できないのです。空気が浮力をもって上昇できる状態のことを「大気の状態が不安定」であるといい,逆に自力で上昇できない状態は「大気の状態は安定している」と言えます。

発達した対流雲ができるためには,「③大気の状態が不安定であること(すなわち空気が浮力をもって自由に上昇できること)」が一つの条件になるのですが,特に下層に暖湿な空気が流入すると,自由対流高度は下がるため,雲頂高度の高い積乱雲が形成されやすくなるのです。

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今回は暖かく湿った空気が流れ込んだことで,少しの上昇気流の力で自由対流高度に到達でき,雲が高い高度まで発達したと考えられます。

 

線状降水帯の発生

ここまでは対流雲が発達した要因について見てきました。今回はそれに加えて線状降水帯が現れています。

 

この線状降水帯というのは,「次々と発生する発達した積乱雲が列をなし数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される,長さ50~300km程度,幅20~50km程度の線状に伸びる強い降水域」とされています。

つまり,発達した積乱雲が線状に連なることで,同じ場所で激しい雨が降ることが特徴のようです。

 

そのメカニズムは下の通り(通常の雷雨と線状降水帯、どうちがう?(古川 武彦、大木 勇人) | ブルーバックス | 講談社(2/4) (gendai.media)より引用)。ただし,線状降水帯の中でもバックビルディング型の構造について示しています。

左側(線状降水帯の背面)で発生した積乱雲が,中層の風の影響を受けて右側へ移動し,発達した積乱雲から吹き出す下降気流がガストフロントを形成して,下層の暖かい大気と衝突。すると地上で空気は収束し,上昇気流に伴って左側に新たな積乱雲が生じることになるという仕組み。

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線状降水帯ができやすい場所としては,海洋上を吹走してきた暖湿気が流入しやすい西日本の海に面した都道府県で発生が多いことがわかっています(下図,「平成30年7月豪雨」の気象解析(速報) ~線状降水帯の発生数は68回~ | JWAニュース | 日本気象協会より引用)。

特に九州は,東シナ海やフィリピンからの暖かく湿った空気が流入するため線状降水帯が発生しやすいといいます。下の図では,四国も発生が多いですね。

また,下層の風向と上層の風向が一致すればさらに発生しやすくなります

この日の静岡市ウィンドプロファイラを見てみると,(特に12時前後で)概ね下層と上層の風向が一致しているのが分かります。

 

気を付けなければいけない点としては,この線状降水帯は発生を予測することはなかなか難しいようで(4回に1回の確率で当てられる程度),いつ発生しても避難ができるように日頃からの私たちの準備や心構えが重要になってくるのです。

www3.nhk.or.jp

 

天気図理解のメモ
  • 「顕著な大雨に関する情報」は,大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で,線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報のこと。
  • 発達した積乱雲ができるためには主に3つの条件が必要。

     ①暖かく湿った空気があること

     ②大気の状態が不安定であること

     ③空気を持ち上げるきっかけがあること

  • 線状降水帯とは,次々と発生する発達した積乱雲が列をなし数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される,長さ50~300km程度,幅20~50km程度の線状に伸びる強い降水域のこと。
  • 線状降水帯は西日本の海に面した都道府県での発生が多い。
  • 下層の風向と上層の風向が一致すればさらに発生しやすくなる。
  • 線状降水帯の発生を予測することは難しい。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。