Weather Learning Diary

日常的な気象予測や天気図理解ができるようになりたい気象勉強中の社会人ブログ

【気象学勉強】第66回 前線

 

ここまで大規模な大気の循環と,それによって生じる偏西風や高気圧,さらにそこから季節の天気について勉強してきました。

今回からは前線温帯低気圧について学んでいきたいと思います。

 

 

前線と天気

これまでは「季節」という,ある程度長期間(数か月程度)の典型的な天気について学んできましたが,今回はもっと短期間に起こる気象現象について見ていくことになります。

今回は前線についてもう少し深堀りしていきます。

果たして「前線」とは何なのでしょう?

 

まずは天気図(天気図で使われる前線に”使わない”色は? | 【公式】気仙沼の観光情報サイト|気仙沼さ来てけらいん より引用)を見てみます。

これまで勉強してきた等圧線や低気圧・高気圧が図上に示されています*1

そして中国大陸の華中から九州南部にかけて赤と青の線が,日本の東側には「入」の形をした青や紫や赤から成る線が描かれています*2。これが前線を示しているようです。

 

で,この前線が分かったら何かいいことあるの?って思うワケなんですが,簡単に言ってしまうと前線付近では一般的に天気が悪くなるので,前線を理解することは天気を理解することにつながるんですね。

ではどうして前線があると天気が悪くなるんでしょうか?

 

前線とは何か

前線とは簡単に言ってしまうと,「冷たい空気と暖かい空気の性質の異なる空気がぶつかったところの境界ライン」と言えます*3

 

例えば下の図は,2023年のとある日の上空約1500mの850hPa面における気温を表したものです。青い領域には気温が低く冷たい空気が,赤い領域には気温が高く暖かい空気があることを表しています。

日本の太平洋側の上空付近がちょうど冷たい空気と暖かい空気がぶつかる境界になっているのが分かります。

同じ時刻における日本周辺の地上天気図を見てみましょう。

冷たい空気と暖かい空気がぶつかるところに前線が位置しているのが確認できますね。確かに前線が性質の異なる空気の境界に形成されることが見て取れるのです。

 

そして冷たい空気と暖かい空気がぶつかると,密度が大きい冷たい空気は下降しやすくなり,密度が小さい暖かい空気は上昇しやすくなります。ここに空気の対流が生まれ雲が発生します。

このときの雲の様子を見てみると,下のようでした。

雲が多くて分かりづらいんですが,中央には日本列島があり,地上の前線付近で白く明るい厚い雲が広がっていました。

 

このような理由から,前線付近では雲ができやすく雨が降りやすいので,災害が起こるおそれが高くなり注意が必要になってくるのです。

 

前線の構造

冷たい空気と温かい空気がぶつかり前線ができるとき,通常,その上空にはジェット気流が見られます。ジェット気流とは偏西風の吹いているところで特に風が強いものを指します。

そして過去の記事でも述べたように,ジェット気流は冷たい空気と暖かい空気を隔てる役割を果たしています。特に,日本の上空で蛇行する寒帯前線ジェット気流Jp: polar jet)が日本の天気に大きな影響を及ぼしていることが知られているようです。

 

下の図は北半球の鉛直断面を示したものですが,上空には寒帯前線ジェット気流が吹いており,その気流を隔てて北側に冷たい空気と南側には暖かい空気があります。

この境目(前線帯と呼ぶ)がときに地上にまで達すると,地上天気図で前線が確認できるようになります。ここでは細かい話は飛ばしますが,この前線帯の暖気側(南側)のラインが前線に対応します。

天気図における前線解析については下の記事にまとめましたので,ご参考にしてください。

weatherlearning.hatenablog.jp

 

前線の種類

最後は前線の種類について。

前線は停滞前線温暖前線寒冷前線閉塞前線の4つに分類されます。

 

停滞前線は冷たい空気と暖かい空気がほぼ同じくらいの勢力でほとんど移動しないものを言います。2つの空気の温度差が大きくなると寒気と暖気が動き出して低気圧が発生することも多いようです。

停滞前線には北側へ折れ曲がる場所(キンク)が見られることがあり,キンク部分で将来的に低気圧が発生することが多くなります(下の天気図が一例)。

また,梅雨時には梅雨前線,9月ごろには秋雨前線として天気図に現れるのも停滞前線の一つです。 

 

温暖前線は寒気よりも暖気の方が勢いが強いときにできる前線です。通常,温帯低気圧の前面に発生します。詳細については次回以降に持ち越します。

 

寒冷前線は暖気よりも寒気の方が強いときにできる前線です。温帯低気圧の後面で発生するものです。こちらも次回以降に詳細を勉強予定です。

 

閉塞前線は低気圧後面の寒冷前線が前面にある温暖前線に追いついたときにできる前線です。閉塞前線ができる頃に低気圧は最盛期を迎え,やがて衰弱していきます。

 

これら4つの前線の天気図での記号は下のようになっています。

停滞前線寒冷前線温暖前線をミックスしたような形になっており,閉塞前線は紫色で半円や三角形が同じ方向にある点で停滞前線とは異なります(天気図がモノクロだと停滞前線閉塞前線の形だけで判断する必要があり,ここはちゃんと区別して覚えておく必要がありそうです)。

ちなみに前線記号上にある半円や三角形は前線が移動する方向につけるという決まりがあります。ですので上の天気図記号の図では,寒冷前線温暖前線閉塞前線はいずれも下側へ移動していると読み取ります。停滞前線は上側に向かいたい暖かい空気と,下側に向かいたい冷たい空気が拮抗してほとんど移動していない状況であると考えます。

 

今回はここまで。

前線については下の動画が非常に分かりやすく解説されていますので,ご興味あればご覧ください。


www.youtube.com

次回は梅雨前線や秋雨前線などの停滞前線について学習していくことにします。

 

【まとめ】学習の要点

ということで,今回学習したところで重要そうなところをメモしておきます。

自分的メモ!
  • 前線とは冷たい空気と暖かい空気の性質の異なる空気がぶつかったところに発生する境界のこと。
  • 前線付近では一般的に天気が悪くなる。
  • 前線ができるとき,通常その上空にはジェット気流が見られる。
  • 前線は停滞前線温暖前線寒冷前線閉塞前線の4つがある。
  • 停滞前線は冷たい空気と暖かい空気がほぼ同じくらいの勢力でほとんど移動しないときに出来る前線。
  • 温暖前線は寒気よりも暖気の方が勢いが強いときにできる前線。一般的に温帯低気圧の前面に発生する。
  • 寒冷前線は暖気よりも寒気の方が強いときにできる前線。一般的に温帯低気圧の後面で発生する。
  • 閉塞前線は低気圧後面の寒冷前線が前面にある温暖前線に追いついたときにできる前線。閉塞前線ができる頃に低気圧は最盛期を迎え,やがて衰弱する。
  • 前線記号は覚える。

 

参考図書・参考URL

下記のサイトから画像などを一部お借りいたしました。

 

*1:等圧線は4hPaごとに描かれ,高気圧・低気圧の中心は×マークで表現されます

*2:「入」の字は温暖型閉塞前線と呼ばれます。一方,「人」の字をしているものは寒冷型閉塞前線と言います

*3:正確には,前線とは「地上で水平温度傾度が特に大きくなっている等温線集中帯の暖気側に沿ったライン」と定義されています。