特集「2025大予測|スペシャルインタビュー」の他の記事を読む
小説の「ジャンル」を飛び越えて、史実やフィクション、SF的な世界へと縦横無尽にストーリーを紡いでいくのが作家の小川哲氏である。今、最も注目される若手作家から見える現実と未来とは。
科学的には生きていない
──信仰や宗教、陰謀論をテーマにした短編集『スメラミシング』が評判になっています。
執筆時期がちょうどコロナ禍でした。ワクチンを打つ、打たないで、人間関係に亀裂が入ったり、世間が二分化されたり、陰謀論がささやかれたり……。人間は本来関わるはずのない因果を1つの事象に結び付けて考えてしまう。
僕が嫌いなものにジンクスがあります。「家を出るときにどっち側の足から出ると、悪いことが起きる」とか。そういうことをみんなナチュラルな感じで信じている。実際はたぶん、たまたま左から出た日に悪いことがあって、一見関係ない因果を結び付けるところから生まれているのでしょう。
昔からある雨乞いもそう。割と関係のない事象を結び付けるのは、人間の本能なのでしょう。陰謀論はまさしくそれに当てはまる。それは僕ら作家や小説家の商売の本質ともいえる。
陰謀論は小説家が育ててきた部分もあるのではないでしょうか? 陰謀論をテーマにした表題作「スメラミシング」については、そういう思いがあります。
──コロナ禍が社会に与えた影響をどうみていましたか。
コロナは生活に大きな影響を与えていたが、責任の所在がわからない。誰かを悪者にできないのです。そのために何らかの黒幕をつくってしまう。人間の考え方としてはありうることです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら