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「歓喜院聖天堂」の国宝彫刻をご紹介の巻 その7 拝殿

国宝指定を受けた、熊谷市の「歓喜院聖天堂」をご紹介するシリーズ
今回は、「中殿」に続く「拝殿」をご紹介します。

熊谷市妻沼
「歓喜院聖天堂(かんぎいんしょうでんどう)」(竣工宝暦十年<1760年>)

彫刻の宝庫を楽しむ その7 拝殿

撮影:2022年9月3日  Canon PowerShot G3X & G7X

※「聖天堂について」熊谷市Web博物館

1 お待たせしました?!いよいよ国宝に指定された本殿の最後の回です。「拝殿(はいでん)」を観ていきましょう。参道から来ると真っ先に出会うのがこの拝殿です。前回ご紹介したように、本殿は聖天院の参道手前から「拝殿」、「中殿」、「奥殿」という、三部形式で造られています。
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2 本殿正面を右斜め前から撮影しました。「奥殿」に比べるとだいぶトーンダウンしたような配色・装飾になっていますね。
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3 正面、「向拝(こうはい)」周辺の装飾についてみていきましょう。
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4 正面からの眺めです。う~ん、濃い装飾ですね(笑)
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5 正面「唐破風(からはふ)」(曲線で造られた屋根のような部分)の縁を飾る彫刻ですが、左右を龍が飾っています。
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6 続いて、「唐破風(からはふ)」の軒下、「太鼓羽目(たいこはめ)」・「破風入(はふいり)」の彫刻です。色々な人物像が彫られています。さてこれは何でしょうか?
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※「琴棋書画(きんきしょが)」とは: 聖天堂の拝殿、その正面には特徴的な彫刻がはめ込まれています。この彫刻の画題が「琴棋書画(きんきしょが)」と呼ばれているものです。この琴棋書画とは、中国古来の文人における必須の教養や風流事を意味する、「琴」、「囲碁」、「書」、「絵」の四芸のことであり、日本では室町時代以降における屏風絵や工芸品の図柄などのモチーフとして多く見ることができます。特に、海北友松や狩野探幽が描いた「琴棋書画図屏風」は著名で、東京国立博物館に所蔵されています。
 聖天堂の琴棋書画の彫刻に目を向けると、左から「絵を見る子ども」、「碁を打つ人々」、「琴を弾く男」、「文字を読み書きする子ども」の順で配されており、彫られた人々の温和な表情が、見る人の心を和ませてくれます。平成における修理工事では、塗装が完全にはがれていた碁盤の部分を、中国の元の時代に由来する碁石配置を参考にして描き直すなど、きめ細やかな彩色の復元が行われました。
 この琴棋書画の彫刻は、寺社建築の一部に置かれることはありますが、聖天堂のように、拝殿の正面という建築のシンボリックな場所に配置されることは、あまり例を見ません。聖天堂と同じ権現造りの日光東照宮の「御本社」においては、拝殿の正面に荘厳な彫刻が飾られているところから見ても、聖天堂の彫刻の配置が特徴的であることが分かります。つまり、龍などの威厳ある大きな彫刻ではなく、親しみやすい琴棋書画を用いたその彫刻は、聖天堂と庶民とのつながりの深さを示すものであると言えます。(熊谷市Web博物館より引用)


7 実はこの題材は「琴棋書画(きんきしょが)」と呼ばれています。この絵の内容は、左「絵を見る子ども」、「碁を打つ人々」。「碁を打つ~」の彫刻では、奥殿の場合と同様、碁盤の状態が消えていたために、「中国の元の時代に由来する碁石配置を参考にして描き直す」という作業をされたようです。
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8 右側、 「琴を弾く男」、「文字を読み書きする子ども」です。このように拝殿の正面の一番目立つところに、龍や仙人などの威厳のある題材ではなく、庶民に親しみやすい題材を持ってきたのが聖天堂の狙う所だったというのでしょうね。
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9 正面虹梁(こうりょう)上の「龍」
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10 「持ち送り」(もちおくり=梁受け)の彫刻も透かし彫りの手の込んだものですね。こちらは「波に鯱(しゃち)」でしょうか。鯱は、鯉が龍へと変身(※登竜門伝説)する際に通過する姿だと言われています。この後翼が生えてきて「飛龍(ひりゅう)」となり、さらに翼が消えて体が伸びて「龍」へと変身していきます。
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11 反対側の「持ち送り」には、翼の生えた「飛龍(ひりゅう)」が彫られています。
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12 向拝(こうはい)の真下の左右の「持ち送り」には、「波に鯉」の透かし彫りがあります。
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13 虹梁上には、四神獣の「玄武(げんぶ)」か、「霊亀(れいき)」でしょうか?
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14 左右の虹梁上には、凝った装飾がしてあります。
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15 左端には、「力神?天邪鬼?鬼?」でしょうか。虹梁(こうりょう)にガブリ!と噛みついているように見えますが!(笑)
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16 中央の「蟇股(かえるまた)」には、「虎」
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17 そして右の端にも「力神?天邪鬼?鬼?」 この彫刻は何というのかなぁ?
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18 今度は向拝(こうはい)の屋根の下、「手鋏(たばさみ)」や「持ち送り」を観ていきます。
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20 これはビックリ!まるでジャングルの木の間から顔を出しているように見えちゃうんだけれど(^▽^;) 実を付けている木は何かなぁ?枝や葉の間から猿が顔を出していますね。とてもユーモアあふれる「手鋏(たばさみ)」彫刻です。
何の木か、似た画像を探していたら東照宮の有名な「三猿」の横に、よく似た木と猿の彫刻がありました。どうやら「枇杷(びわ)」の木と実を表しているようです!(^▽^;)

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21 「猿」のアップです。奥殿では、腰縁框(こしえんかまち)に、「力神」のように、13匹の「猿」の彫刻が配置されていて、心が和む仕掛けでしたが、拝殿にも実は隠れるように「猿」を配置していたのですね。これは、参拝者が見つけて思わず笑っちゃうところを狙っていたのではないでしょうか?
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22 こちらは同じ「手鋏(たばさみ)」彫刻ですが、「牡丹と唐獅子」です。
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23 で、唐獅子の後ろの「手挾」を良く見たら、あれれっ、ここにも「猿」が隠れんぼ!していました。
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24 今度は拝殿の横を観てみました。中殿や奥殿に比べて大変地味な印象を受けます。しかし、良く見ると「垂木(たるき)」の錺(かざり)金具であったり、「板支輪(いたしりん)」(段差のある部分を隠すように取り付けている板)にも精巧な彫を施していたり、「蟇股(かえるまた)」を彩色していたり、梁(はり)や組物の一つ一つに彫りが入っていたり、「花頭窓(かとうまど)」にも飾りを入れていたり(黒と赤茶の漆の色の対比もオシャレ)、などなど相当手が込んだ装飾に溢れていました。
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25 軒下の装飾です。
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26 拝殿の南西面の軒下になります。おなじみ「梟(フクロウ・ミミズク)」が「蟇股(かえるまた)」に彫られていました。「梟」は、「福来郎」(福が来る)、「不苦労」(苦労が無い)と洒落て縁起の良い鳥ですが、「知恵」の象徴であったり、首が良く回ることから神通力に長けた鳥。狩りが上手な農業の守り手(ネズミを狩る)とも思われていたようで、寺院の彫刻によく使われる鳥です。
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27 向拝下、「海老虹梁(えびこうりょう)」周辺の様子です。
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28 「向拝柱(こうはいばしら)」の「木鼻(きばな)」と「斗栱(ときょう)・組物(くみもの)」の様子です。
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29 向拝の屋根の装飾「鳳凰(ほうおう)」。おおっ、良く見たらその後ろの「手挾(たばさみ)」に「猿」を発見(笑)
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30 拝殿前の「狛犬」です。
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31 「文政7年(1824年)」(11代徳川家斉時代)の作でしたぁ(*^^*)
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32 「拝殿」最後は、やっぱり気になる(torikera1番のお気に入り!)、虹梁(こうりょう)に噛みついている「力神?天邪鬼?鬼?」で締めくくりたいと思います!こいつは何なんだろう(笑)
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※次回は、歓喜院聖天堂の「本殿」「貴惣門」以外の「気になるもの」をご紹介しますね。お楽しみに!
しかし、「その8」になっちゃうね(^▽^;) いったい、どこまで引っ張るのだろう?
毎回のことですが、素人が色々調べながら書いている記事ですので、勘違いや間違いがあるかもしれません。お気づきの点がありましたら是非ご教示くださいね。


<追記>
ここで、宿題を思い出しましたぁ(^▽^;)
ytaka007さんからの宿題!
「彩度を上げたもの(加工したもの)と、加工していないものの違いを紹介して」というご要望をいただいていました。


▼①加工前のもの(彩度を上げていません)
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▼②加工後のもの(彩度を上げています)
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上記の二枚の写真は、「縮専(縮小専用)」というフリーソフト(無料でダウンロードできます。初心者向けの画像処理ソフトです)を使用しています。基本的に、torikeraブログに掲載している写真の加工は、このソフトで縮小し(必要により彩度を上げて)掲載しています。

このソフトは、元のファイルをドラッグ&ドロップするだけで、設定したピクセルサイズ、オプション(鮮鋭化加工、彩度アップ加工、モノクロ加工、ファイルサイズ変更等)を簡単にしてくれます。torikeraのように、たくさんの写真をアップする為には、ファイルサイズを下げないと記事全体の容量が大きくなりすぎてキャンセルされてしまいますので、必要不可欠なソフトです。

上記の元写真は、ファイルサイズが4MBありますが、①と②はソフトで640×640ピクセルサイズ、400KBにダウンさせています。また、オプションとして、②は「画像くっきり(鮮鋭化)」と「彩度を上げて保存」を加えています。

比較すると②の方が明らかに、色鮮やかな印象を持たれると思います。では、当日現地で観たときの感覚は①②のどちらが近いのか?というと、私は②の方が観たときの印象に近い再現だと思います。(*^^*)!!
どの程度の色の補正(加工)が「正しい」のかというのは、その人の感覚・好みであろうと思っています。

また、この色補正は、カメラの側でも設定できるものがあるので、撮影時に色補正を加えて撮影しているものもあります。
参考にしていただければ幸いです。

関連記事

コメント

Re: No title

バケツさん!こんばんは!

驚いていただいてありがとうございました(*^^*)

本当にどれだけの時間と手間をかけた仕事なのでしょうか!

持ち送りは、本来なら建物の強度を上げる部品なのでしょうが、すっかり装飾品に化けています。

Canonのカメラのせいなのか、G3Xのレンズの特性か、画像処理のせいか?不明です。(;^ω^)

No title

こんにちは。
天井・・・すげぇ・・・いやすげぇ・・・
「持ち送り」の彫刻もとんでもねぇな・・・
どれほどの手間暇とセンスが使われたか。
恐ろしいですわ。
現代でこれを表現できる建築家がいるだろうか。
絵画ならできるけど、彫刻立体で
こういう造形表現、僕なら血管が切れると思う(笑)
CANONのカメラは、ちょっと輪郭が
ふんわりする感じがしますよね。
僕もブログに載せるときは、解像度を下げて
色味を明るく調整しています。

Re: コメントありがとうございます

ぶらっと遡上探索 !こんにちは!

引っ張りまくっています(笑) あまりにも写真が多かったので選択できませんでした(^▽^;)

まだ続きます(*^^*)!! いい加減にしろ!と言われるまで続きます(嘘です)

どの彫刻も装飾も素敵なので、紹介したいだけです(私は欲張りです!)

力神、天邪鬼、鬼と色々な作品を観てみたのですが、境界線が微妙です。

向拝の下など見上げないと見えないところですが、見えないところに気を遣うのもオシャレなようです。

「みなとみらい技術館」という「施設」自体知らなかったのでビックリしました(;^ω^)

「なぜ国産旅客機MRJは失敗したのか」という記事を読んでみましたが、そんなことあるのねぇ!と驚きました。

Re: No title

たいやきさん!こんにちは!

おっしゃる通り!!この聖天堂の戦略は、拝殿から中殿、奥殿と「しかけ」がしてあったのですね。

奥殿は「サプライズ」以外の何物でもないでしょうねぇ。これは見たとたんぶったまげます。

ひっくりかえって口から泡を吹いたかもしれませんね (◎_◎;).。o○ 泡

それでもご指摘の通り、彫刻達は丸くて親しみやすいものばかり!よく考え抜かれています。

Re: なんとなく可愛い

BUSYBEE-GAEI さん!こんにちは!

そうなんです。まったく、当時の「たしなみ」だったということのようです。

う~、囲碁も琴もできん私は生きていけないなぁ(^▽^;)

とにかく聖天堂の彫刻達は、丸くて朗らかで怖くありません(笑)

庶民に親しんでもらいたかったのでしょうね!素敵です。

コメントありがとうございます

今晩はトリケラさん、拍手コメントありがとうございます。
歓喜院聖天堂の関連記事、引っ張りますね。鯉から鯱、そして飛龍から龍へと変身するとは、勉強になりました。力神は力士の転訛とも云われていますね、天邪鬼は角が有るので鬼なんですかね。向拝の屋根の下にも彫刻が隠れているとは、多くのお金持ちに支えられたんですね。次回、??も期待ですね。

三菱みなとみらい技術館は、五月蠅いお子ちゃまが来る様な場所では無いので、落ち着いて見られますよ(笑)。横浜、桜木町近くに来られた際には、是非お寄り下さい。
MRJは米国の型式証明取得が厳し過ぎる為、開発が中断されたのが残念ですね。

Re: タイトルなし

大原かずのりさん!こんにちは!

そうでしたか!猿好きの私はしっかり見つけました(笑)

拝殿、奥殿ともに、ほっとできるような和やかな彫刻ばかりですね。

まさに、聖天堂の在り方を表しているみたいです。

9月に訪問して手がつかなかったのは、ちょっと内容がありすぎて躊躇したためです(^▽^;)

しかし、このまま眠らせてしまっては「もったいない」という貧乏根性でまとめてみました。

それでも建築関係は、かなり疎いので大原さんに別の視点で記事にしてもらえると嬉しいです!

(*^^*)!!

No title

ブラタモリの日光などで学んだのですが、やはり神社仏閣は、どのようにあっと言わせるかの仕掛けに秘密があると思います。
門をくぐり、拝殿が近づくにつれその威容が近づいてきます。
そして、極彩色の美しい彫刻が目に入る。
その活き活きとした生き物や人物などに圧倒されるわけですね。
ここで一回圧倒されているのに、一周回るとさらに「あっ」なる。
こういう仕掛けなのだと思います。
ちなみに鯉の彫刻がかわいいです。

なんとなく可愛い

唐破風の軒下に表現された人々は、絵も囲碁に琴に書にと、芸事奨励というか、当時の“たしなみ”だったのですね。
龍の顔がなんとなく可愛いというか、怖い龍ではないですね。虹梁ガブリの鬼さんもユニークだし、虎は猫みたい。拝殿というと厳かなイメージを抱いてましたが、全体的に可愛いです(^^♪

拝殿も知らなかったことが!
手鋏に猿は見逃しました(><)
そこまで確認できてませんでしたね。
また、言われて見れば確かに琴棋書画が正面にあるのは珍しいような気が。やはり庶民の聖天さんなのですね。

そして聖天堂記事、お疲れ様でした!これ程聖天堂を詳しく記した記事は無いのではないでしょうか。私も躊躇して書いてません(^o^;)
いろいろ勉強になりましたね(´∀`)

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Author:torikera
季節の野草や身近な自然の写真のご紹介、トレイルランやポタリング、マウンテンバイクの記事、掘り出しモンCDアルバムなど音楽の話題、美味しい日本酒や蕎麦について、最近は庚申塔・石仏・富士塚・力石など石や塚などにも興味津々!とりとめのない記事ばかりですがよろしくお願いします。

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