ヴィジュアル系バンドで最も闇に溺れているのは!? V系の歌詞を1000曲調査した
こんにちは、ひにしです。
私は今年で33歳なのですが、かれこれ十数年前中高生の頃にハマったヴィジュアル系(以下、V系)の音楽を今でも心から愛しています。
どれくらい好きかというと、90年代V系を愛するバンギャ(※バンドギャル V系バンド好きの女性のこと)だけを集めたイベントを開催したり、ヘドバンについて調査したり、黒服で記事に出たり…というくらいには好きです。
そんなV系の歌詞は、Twitter上でもこんな風に語られるほど“あるある”にあふれています。
#V系歌詞あるある
「闇に溺れ過ぎ」
「紅に染まり過ぎ」
「孤独を感じ過ぎ」
「手首から血が流れ過ぎ」
「君が居なさ過ぎ」
「薔薇が舞い過ぎ」
「とりあえずヴェルベットって言い過ぎ」
— 磨童まさを (@masawo_viceat) 2016年7月8日
V系のファン以外は、「やたらと血塗られたり、夜を彷徨(さまよ)ったりしているんでしょ?」みたいなイメージをお持ちなのでは?
私もそう思います。
でも、実際のところはどうなのでしょうか? ということで今回は、私が世代ど真ん中である90年代のV系バンドの中で、武道館公演を経験した11バンドの1093曲の歌詞を分析して、
●闇にどれくらい溺れているのか?
●一番彷徨っているのはどのバンドなのか?
等々、徹底的に調査しました! もう完全に私が楽しいだけの記事ですが、お付き合いください!
調査したのはこちらの11バンドの楽曲!
【調査したヴィジュアル系バンド11組】
- X JAPAN(エックスジャパン)
- LUNA SEA(ルナシー)
- DIR EN GREY(ディルアングレイ)
- Pierrot(ピエロ)
- Raphael(ラファエル)
- Plastic Tree(プラスティックトゥリー)
- 黒夢(クロユメ)
- ROUAGE(ルアージュ)
- MALICE MIZER(マリスミゼル)
- La'cryma Christi(ラクリマクリスティ)
- Janne Da Arc(ジャンヌダルク)
余談ですが、Pierrotの「メギドの丘」、DIR EN GREYの「アクロの丘」、Plastic Treeの「絶望の丘」という3曲が「ヴィジュアル系3大丘」と呼ばれているのは、バンギャ界の常識です。
調査方法は?
各バンドの歌詞を確認し、使われている語句を集計…と思いましたが、
「いや、これマジ大変。つらい。1000曲とかどうしたらいいのかわかんない…」
それこそ絶望の底に突き落とされた堕天使のようになったので、テキスト解析ソフトを使うことに。
さらに、バンドごとに曲数にばらつきがあるので、曲数に対しての語句の出現率を割り出しました。本業のSEOアドバイザーとしての技術が、まさかこんなところで役に立つなんて!
ではまず、“V系歌詞あるある”と言われがちなものが実際どうなのかを検証しましょう。
本当は歌詞そのものをたくさん掲載したいのですが、最近話題のJASRACさんから怒られてしまうので、そこは可能な限り雰囲気が伝わるくらいの感じでがんばってお届けします。
いったいどれくらい彷徨っているのか?
V系界隈では絶対にあがる「『彷徨う』という歌詞が多い」という声…。実際に1000曲以上調査した結果、出現回数は39回! 同じくV系にありがちなイメージの「壊れる」が150回も登場することを考えると、実はさほど「V系は彷徨ってはいない」ことが判明しました。
ちなみに、今回調査した中で最も彷徨っていたバンドは…
X JAPANでした(2位:La'cryma Christi 3位:LUNA SEA)。
「彷徨う」を含む主な曲
だいたい何かを求めて彷徨うか、彷徨い続けがちなことはわかりました。でも…
V系はもっともっと彷徨っていると思っていたのに…!
ちなみに、X JAPANは「青い血のワイン」が登場する曲もあるなど、「最も血が流れがちなバンド」ナンバー1でもあり、全体的にさすがのV系レジェンド感がすごいという結果も、併せてご報告しておきます。
どれだけ天使が舞い降りているのか?
「天使」の登場回数は68回。こちらも思っていたより少ない結果ですが、最も天使が舞い降りていたバンドは…
Janne Da Arcでした(2位:LUNA SEA 3位:Pierrot)。
私は18年来のJanne Da Arcファンですが、言われてみれば確かに何かと天使が登場するイメージがありますね。
「天使」を含む主な曲(出現回数:68回)
やっぱり血塗られた天使とか堕天使は、V系感ありますよね!
また、最もいろんな所に堕ちがちなバンドもJanne Da Arc。そのほか、Plastic Treeや黒夢も結構堕ちていることがわかりました。
「堕ちる」を含む主な曲(出現回数:71回)
「落ちる」ではなく「堕ちる」になるだけで、どうしてこんなにもV系感が増すのか…。
ちなみに、Janne Da Arcには「声を堕(だ)してイイの?」というフレーズが出てくる曲があります。当て字にすら「堕」を使うなんて、どんだけ堕ちたいんだ!?
最も闇に溺れているのは?
闇の出現回数は168回。名詞の中では24番目に多く使われている単語でした。意外と“闇堕ち”していないなーという印象…。
では、最も闇に溺れていたバンドは…
MALICE MIZERでした(2位:La'cryma Christi 3位:DIR EN GREY)。
このルックス含め、明らかに太陽の下よりは闇夜が似合う彼ら。こちらはイメージ通りの結果です。
「闇」を含む主な楽曲(出現回数:168回)
実際に「闇に溺れる」というフレーズを使っていたのは、DIR EN GREYの「鼓動」という曲だけでした。闇に関しては、だいたい切り裂いたり迷い込んだりしがちのようです。
どれくらい“そっと”しているのか?
個人的に、V系の歌詞って「やたらとそっとしがち」と前々から思っていたのですが、実際はどうなのでしょうか? 今回の解析では、「そっと」の出現回数は171回。副詞の中では「ずっと」に続いて5番目に多かったです。
最もそっとしているのはMALICE MIZERで、Plastic TreeやLUNA SEAもそっとしがちでした。対照的にX JAPANは1度もそっとしていませんでした。やさしさよ…。
「そっと」を含む主な楽曲(出現回数:171回)
そっと舞い降りたり、そっとなでたり、そっと抱きしめたりってのはまだわかるけど…
「そっと僕に刺さる」ってなんかすごいし、「子宮の海」もなんだか感心する表現ですね。
最も踊ったり、舞ったりしがちなバンドは?
踊り狂ったり舞い散ったりというのもV系にはありがちな歌詞ですが、「踊る」「舞う」の出現回数は254回とかなり多い! やはりV系は舞い踊りがちでした。
そして、ここでも1位はMALICE MIZER。さらに、La’cryma ChristiやPlastic Treeも、わりと踊りがちということがわかりました。
「踊る」「舞う」を含む主な楽曲(出現回数:254回)
踊るのも舞うのもマリスのイメージ通り!というバンギャは多いはず。90年代後半のV系ヒット曲に明るい30代のみなさんにも頷いていただけるのではないでしょうか。
最も壊れたがっているバンドは?
心を壊したり幻想を壊したり、自分が壊れたりと壊れがちなのもV系の特徴。「壊れる」の出現回数は150回と、動詞の中では18番目に使用されている単語です。
では、最も壊れたがっているバンドは…
DIR EN GREYでした(2位:LUNA SEA 3位:ROUAGE)。
「壊れる」を含む主な楽曲(出現回数:150回)
もっと歌詞をたくさんご紹介したいくらい、ディルやLUNA SEAの壊れたさはすごかったです。
最も狂いたがっているバンドは?
「狂う」って単語自体がすでに「ヴィジュアル系!!」という感じですが、「狂う」の出現回数は109回。動詞の中では35番目に使われている単語でした。
そして、最も狂いたがっているバンドは…
LUNA SEAでした(2位:Pierrot 3位:DIR EN GREY)。
これらのバンドがTOP3という結果には、オバンギャ(年齢が高めのバンギャル)のみなさんも深ーくうなずけるのでは?
「狂う」を含む主な楽曲(出現回数:109回)
V系のレジェンド的存在のLUNA SEA。最も狂いたがっているのは、もともとのバンド名「LUNACY」が「狂気」という意味だけある! でも、V系の歌詞はもっともっと狂いがちだと思っていたなぁ…。
最も孤独を抱えがちなバンド
寄り添ったり抱きしめたり、何かと孤独を歌うイメージがあるV系ですが、「孤独」の登場回数は105回で、名詞の中では3番目に使われている単語。
そして、最も孤独を抱えがちなバンドは…
Raphaelでした(2位:X JAPAN 3位:LUNA SEA)。
Raphaelはメンバーが全員16歳でデビューし、18歳で武道館に立った伝説のバンドですが、ギター兼コンセプトリーダーであった華月が急逝し、2001年に活動休止。その17回忌となる2016年に、奇跡の復活ツアーを行って解散しました。
孤独を含む主な楽曲(出現回数:105回)
その他のバンドの歌詞を見ても、バーゲンセールされたりパレードしたりと、単純に抱えるだけではない歌詞に仕上がっているのは、V系ならではの孤独の使い方だなぁ…と今回調べてみて気付きました。
最も殺しがちなバンドは?
最後はこちらです。「V系ってやたらと殺すよね?」なんて言われ思われがちやすいなので調べてみたところ、殺すの出現回数は73回。動詞の中で72番目に使われている言葉でした。
ということは…たいして、V系はあんまり殺してないぞ! 偏見だぞ!
そんな中最も殺しがちなバンドは…
Pierrotでした(2位:X JAPAN 3位:DIR EN GREY)
殺すを含む歌詞の例はこちら(出現回数:73回)
90年代の系ど真ん中世代としては、1位と3位がPierrotとディルってだけで納得感がハンパないなあぁ… 。歌詞の中ではどんどん殺していただきたいところ。
バンドごとの歌詞傾向を比較(動詞編)
歌詞に使われている動詞TOP20を見るだけでも、各バンドの特徴が色濃く見えます。
たとえば、ROUAGEは8位に「飼う」が入るなど、狂っている感が強め。X JAPANは出現率の高い順に「抱きしめて流れて忘れて傷つくけど、笑って終わる」感じというのは、Xファンの方に聞いても「なんかわかる!」とのことでした。
また、愛したり、抱きしめたり、抱いたり、信じたりとダントツで乙女チックなのはLUNA SEA!
Pierrotはとにかく消えたがったり終わりたがる傾向にあり、DIR EN GREYはものすごく忘れたがっているようです。
しかし、上位に「狂う」や「壊れる」「堕ちる」は入らず、意外と一般的な動詞が上位にくるのか~というのが、バンギャである私の正直な感想。
バンドごとの歌詞傾向を比較(名詞編)
名詞のTOP20を見ると、V系のイメージとは異なりますが、11バンド中9バンドは3位以内に「夢」があるようです。
そして、世界を何とかしたがるバンドも多め。 以前の記事で「バンドマンは世界を変えたがっている」という意見がありましたが、これを裏付けるような結果でうれしいです。
動詞と同じく、「血」や「闇」「薔薇」「覚醒」「狂気」とかがもっと上位に入ると思っていたので、「夢」や「心」「空」「涙」などのわりとキラキラした単語のランクインは盲点でした。
番外編その1:カタカナの歌詞は多いの?
編集担当の中道さんから「V系の歌詞って『サツガイセヨ』みたいなカタカナの歌詞が多いイメージなんですけど、実際どうなんですかね?」という質問が。
彼女は普段まったくV系を聴かない人なので、世間のイメージはそうなのかな…と気になって調べてみました。
結果は、たいしてありませんでした。ただ、同じ曲の中で何度かカナ表記が使われることはあるようです。
ちなみに、人名で最も登場したのはダントツで60回出現した「MARIA(マリア)」でした。「キリスト」の出現数1回に対して、マリアの需要の高さよ…。
しかし、これは黒夢の「MARIA」やJanne Da Arcの「マリアの爪痕」など、マリアについて歌う曲があるため。そういえば、ラクリマクリスティって「キリストの涙」っていう意味ですが、キリストが出てくる歌はないんですよね。
番外編その2:最も呼びかけがちなバンドは?
Plastic Treeは、とにかく「ほら」や「ねえ」など、何かと呼びかけまくっていることが判明。
上記のデータを見てもわかるように、こんなに呼びかけているバンドはプラ以外にはありませんでした。
ちなみに、これまでのあるあるランキングの中で1位には入らなかったLa'cryma Christiは、ザ・V系な歌詞が少なめなようです。ただ、1093曲中「輝く」の出現回数は95回。そのうちの約3分の1にあたる28回がラクリマの曲からということで、やたら輝きたがっていることはわかりました。
まとめ
こちらは、品詞ごとの登場回数が多い単語の一覧です。なんかもう、並べただけでV系っぽい気がする!
この中からランダムで選んで文章にしても、V系っぽい歌詞が作れそう(笑)。
形容動詞を上位のものからつなげるだけでも、「静かで孤独で綺麗で鮮やかで透明で真っ赤だけど残酷で綺麗」って具合に。これはやばい。
データが膨大なため、まだまだいくらでも語り続けたいところですが、わかったことは…
V系の歌詞は…
●イメージ以上に「夢」に溢れがちで、「世界」をどうにかしたがっている
●思ったより、闇に溺れていないし彷徨っていない
●孤独はまあまあ抱えがち
そして、
頻出単語を適当に並べるだけでも、V系っぽい歌詞になる!
また、V系の歌詞を分析した結果、最も“V系歌詞あるある”っぽいバンドが判明しました。そのバンドは…
LUNA SEAでした!
※1位を3点、2位を2点、3位を1点としてその合計数で算出
この網羅的なランキングへの食い込み方…さすがや…。SLAVE(ルナシーの熱狂的なファン呼称)でよかった…!
今回は11バンドに絞っての調査でしたが、もっと対象範囲を広げれば、さらにいろいろな傾向がわかりそう! みなさんも好きなジャンルやアーティストの歌詞の分析をしてみると、意外な事実が判明するかも!?