まるで搾取!?"無気力肯定ビジネス"が怖すぎると話題に
こんにちは、小野ほりでいです。
何かとすぐ話題になるネットで"無気力肯定ビジネス"が怖すぎると話題になっているそうですね。
いったい何なんでしょうか、その言葉。本当にあるのかな?
<登場人物>
エリコちゃん
うさぎを飼ったことがあるOL。
ミカ先輩
ほぼすべての季節で鼻炎の先輩OL。
67円
日本国の通貨。67円以下のものを購入することができる。
ハイ! 私はナンシーよ。「これをするだけで何億稼げる」みたいな本って書店にいっぱいあるじゃない。あんたも買ったクチ?(だとしたらププッ)あれさ、ああいう本を出す人ってなんでそんなすごい方法を知ってるのに本ばっか出してるのかしらね。やればいいじゃん、そのすごいやつ。なんで教えてくれるの? いい人なの? 今回の記事は、そういう「手っ取り早く幸せになる方法」を書いた本がどういう理由で売れるのか、そのメカニズムに迫る内容らしいわよ。でもそうじゃなかったとしても責任は取らないわ。いつでも自分の望むものが手に入ると思うなよ。
悟り
ツォ!! ツォーーー~~~~ッ!!!!
なばばーっ!
もーエリコちゃんったら! 年末のこの忙時(いそどき)に何を3日も連続で休んでるのかしら!
このままじゃ身がもたない…。今日は半休取ってエリコちゃんの家に殴りこむわよ! 場合によっては暴力も辞さない構えで!
ちょっとエリコちゃん! いるんでしょ! あんたのせいで労働基準法の意義が加速度的に失われてるじゃないの!
開けなさい! 開けなさい! 開け…あっ開いてる! これは入っていいものとみなして入るわよ!
ハレレーー~~~ッ!!!!????
こいつ、働きもせず悟ってる…。
凡愚(ぼんぐ)の雌よ、わが庵に何の用じゃ…。
用もクソもないわよ! 仕事サボって何してるのかと思ったら…。
仕事…?
俗世の生業に何をか憂うことあらん。ミカと申す者、早々に立ち去れい。
ダメだこいつ、話が通じない…。チョップで目覚めさせないと!(Xボタンを連打しよう!)
くらえ~~~~!
…!
よ…避けられた!?
かのような初歩的な残像も見切れぬとは…俗世に曇りし眼(まなこ)は節穴がごときじゃ。
残像…!? じゃあこれも…!
あたーーっ!!
こっちは本物だ!
何するんですか!
バカなことやってないで会社に来なさいよ! あんたのせいでみんな大迷惑なのよ!
嫌です! 私はもう「自分に嘘をついてまでがんばらない」って決めたんです!
何言ってんのよ! その歳で無職にでもなるつもり?
うん。
わあ。
とにかくもう…会社には戻らないですからね!
どうしてそんな尾崎豊みたいなこと…もしかしてその足元に散らかってる本って…。
「もうがんばらなくていい」…「くじけてもいいんだよ」…
「無職系女子」…「ニートの生き方」…。
何よこれ…。
この本に出会って、私は変わったんです! 私は今まで騙されてきた…。
富? 名誉? 権力? そんなの支配者が仕組んだラットレース*を都合よく走らされるための幻想に過ぎない…。
(*ラットレースとは、働いても、働いても、一向に資産が貯まらない状態のことである。働いても、働いても、一向に資産が貯まらない様子が、回し車の中で、クルクル回っているネズミに似ていることから定義されていると、ロバート・キヨサキが自著「金持ち父さん 貧乏父さん」の中で語っている。-Wikipediaより)
負けてもいいの、くじけてもいいの、お金なんてなくたっていいの。弱さも貧しさも孤独も、すべてありのままの私なんだから…。
…。
何言ってんだハゲ!!!
ひどいよ先輩!
あんたの言ってることは、ある面では正しいと思うわ…。負けるのもくじけるのも諦めるのも個人の自由…。
だけどあんた、本当に何もがんばらないで生きていけるの? お金はどうするの? 社会や家族に対する罪悪感とプレッシャーは?
本当に何もがんばらないのって、けっこうつらいよ…?
そんなことないです~! この「新しいニートの生き方」の著者は、本当に無職だけど働かなくても楽しく生きてます~!
本当の無職がなんで本出してるのよ。
あっ。
…でも、この「もう、がんばらなくていい」の著者はがんばることをやめてから幸せに…。
その人は、全国の書店に並ぶくらい商品価値のある本を書くのに、ちっともがんばってないっていうの?
それが「がんばり」じゃないなら、この世で何が「がんばる」に値するの…?
…。
エリコちゃん、あんたは騙されてる…。
あんたは本を見つけて変わったんじゃない、自分の信じたい都合のいい「救済」を言語化したものを見つけて現実逃避してるだけ!
ありゃりゃ~~~!!!!????
信じたいもの
たとえば、この「異性なんていなくても生きていける。むしろ恋愛ばかりしてるのは教養のない野蛮人」の作者…。
知ってますよ!「非モテのカリスマ」「モテない女子の最後の砦」こと長万部蟹子(おしゃまんべかにこ)ですよね。
今度結婚するわ。
マジ!?
それから5年前この「食べれば食べるほど痩せるダイエット」で100キロから50キロまで痩せた有名人…。
今、120キロになってるわ。
増えとる!
勘違いしないで…。
ダイエット本を出せるような著名人のダイエットには「成功すれば本に説得力が出る」というモチベーションがあるの。
本で「私はモテない」と自虐する作家の「モテない」には、孤独というリスクに相応の金銭的な価値があるの。
エリコちゃんは「私はモテない」と自虐してお金がもらえる?「ニートでも生きていける」って本を書く文才とコネがある?
ない…!
そう、私たち一般人の不幸はただの不幸…。リスクを背負ってお金を稼ぐ人たちとは立場が違うのよ。
ウグゥ~…。
がんばらなくてもがんばってる人より幸せになれる近道がある…。実は幸せだと思ってたのは不幸で、あなたはすでに幸せ…。
そういうふうに、「そんな都合いい話あるわけないけど、もしそうだったらいいなという一縷の望み」をそれっぽく言語化して夢を見せる…。
これが「無気力肯定ビジネス」の正体よ。
む、無気力肯定ビジネス!!?????
うん。
無気力肯定ビジネス
「がんばらなくていい」「あなたはそのままでいい」「何もしなくてもあなたには特別の存在価値がある」「それがあなたの個性」…。
要するに彼らの顧客は「あんたは何もしなくてもいい、存在してるだけで特別」っていう無条件の承認を金で買ってるわけ。
無条件の承認…好き…。
でも、「がんばらなくていい」なんて無責任なことが言えるのは、基本的に相手が赤の他人だからということを忘れてはいけないわ。
裏を返せば両親がやれいい学校に行け、会社に行け、結婚しろだの面倒なことを言ってくるのは、あなたのことがどうでもよくないからよ。
そうなのかな…。
そうなのよ。
甘い言葉を信じるも厳しい言葉に従うも自由…。ただ、勝負を放棄した瞬間「喰われる」側になるのが資本主義の掟。
開き直ることがどんな結果を招いても、自分の判断に責任を持てるかしら?
努力しながら自虐するのが一番得…?
懐かしい匂いだ
要するに、ひとたび油断すれば飢えるか石を投げられる現代社会で「がんばらなくていい」って言ってくれるのは私がどうなってもいい人なのね。
そして、手っ取り早い救いを求めて判断力が低下している不幸な人たちから”搾取”する側にとって彼らはいつまでも不幸でいてもらわなければ困る…。
だから、工夫や努力で解決できる不満も「むしろあなたの個性だ」とおだててくれるんだ。そして私はそれをお金で買う…。
お金を払うと夢と居場所とアイデンティティを与えてくれる…。これってあれだ…。
ヒモのバンドマンを飼うのと似てるんだ…。
だから…懐かしい感じがしたんだね…。
だったら…。
(おわり)
ハイ! ナンシーよ。終わったと思った? いや、実質は終わってるんだけどね。この記事が言いたかったこと…わかる?「つべこべ言わずにがんばれ」的なマッチョ思考?「こんなに労働嫌いな俺も働いてるんだからお前も働け」みたいな同調圧力? 違うわ! この記事が示している真実…それは「人並みに幸せになりたいのに戦略がなく短絡的な行動に出る者は、戦略を行使する者に一生搾取され続ける」ということよ。あなたの周りにもいない? そういう人…。私のパパは今日消費者金融からの借金を返すアテに親戚じゅうから集めた札束を握りしめて、朝一でパチスロ屋に並びに行ったわ。パパだって薄々気付いてるはずよ「パチスロするとお金が増えるときがあるけど減るときの方が多い」って。でもパパは不器用だから、戦略を考えるより何も考えずにレバーを握ることで全てが解決する方を夢見てしまったのね。皮肉なものね、資本主義というラットレースを抜け出すつもりが、回し車の代わりにスロットを回してるだけの時間に救いさえ求めているんだから。