ディスクレビュー『MARCH OF THE UNHEARD』／ THE HALO EFFECT

March Of The Unheard(マーチ・オブ・ジ・アンハード)

創始者イェスパー・ストロムブラードを中心に、IN FLAMES関係者五名が時系列を飛び越えて結集したバンド、あるいはプロジェクトが放つ2nd。

この手の企画は単なる懐古趣味に終わることが多いが、順調に二枚目が出たことからもその内容の充実度は推して知るべし。1stも良質な作品であったが、ここへ来てより焦点が絞れてきたというか、原点回帰への照れがなくなったように感じる。

その音楽的方向性は、やはりイェスパー在籍時のIN FLAMES。だが彼がいた時期の中にも音楽的変遷はあり、今回はいよいよその中でも初期から中期、アルバムで言うと1st『LUNER STRAIN』～4th『COLONY』あたりの感触が濃厚である。

もちろんその中にも、北欧的陰翳全開の最初期からアメリカへの野心と開放感を見せはじめる中期には少なからず違いがあるが、個人的に今作から感じるのは特に2nd『THE JESTER RACE』の空気感。とはいえ楽曲ごとに、あるいは聴き手の気分によって様々な時代のエッセンスを感じられるだろう。たとえば②「Detonate」の輪郭は、さらに手前にある8th『COME CLARITY』近辺の手触り。

本作の核をなしているのは、まるで手品の万国旗のように、というとイメージが明るすぎて全然雰囲気が伝わらないのだが、次から次へとシームレスに繰り出される数珠つなぎのギター・フレーズ。先ほど「1stより焦点が絞れた」と指摘した焦点とはまさにこの点であり、その流麗でありながら魔術的なフレーズの連なりこそが、初期IN FLAMESの魅力であったことを改めて思い知らされる。

時に裏へ入るリズムを交えながらめくるめく展開する美旋律が、聴き手の期待に応えながらも想定外の場所へとスムースに先導してゆく。

一方で実際にIN FLAMESのデビュー作『LUNER STRAIN』で歌っていたとはいえ、あくまでもゲスト待遇であったミカエル・スタンネの歌唱法が、1stをどこか「DARK TRANQUILLITY＋IN FLAMES」という表面的な公式に縛りつけていたように思うが、本作では彼が時に放つクリーン・ヴォイスさえも、初期IN FLAMES的なギター・フレーズへと自然に溶け込んだうえでさらに華を添える役割を果たしているように響く。

そしてそれは初期IN FLAMESにはあり得なかった要素であって（1stにその声はあったがこの歌唱法はまだ見出されてはいなかった）、いまの彼の歌声を足し算から掛け算へと昇華させた本作によって、このバンドの存在意義はいよいよ確かなものになったと言えるのではないか。

新年早々年間ベスト10レベルの力作登場に、嬉しい悲鳴をデス・ヴォイスとクリーン・ヴォイスの二刀流で。

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ザ・ジェスター・レース

2016年～2024年ハード・ロック／ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選リスト

そろそろ自分でも過去に選んだお気に入り作品を見渡せる形にしておきたいと思い、これまでの年間ベスト・アルバムをリスト化してみました。

【2024年】

ブラッド･アンド･エンジェルズ･ティアーズ

1位『BLOOD AND ANGELS' TEARS』／VISION DIVINE
2位『THE SKIES ABOVE ETERNITY』／FELLOWSHIP
3位『CLEAR COLD BEYOND』／SONATA ARCTICA
4位『TEENAGE REBEL』／NESTOR
5位『PLEASURE BEATS THE PAIN』／REMEDY
6位『TIME II』／WINTERSUN
7位『ENTITY』／SEVENTH CRYSTAL
8位『ULTRAPOWER』／STRIKER
9位『OPERA』／FLESHGOD APOCALYPSE
10位『INVINCIBLE SHIELD』／JUDAS PRIEST

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【2023年】

ワンダーランド [CD]

1位『WONDERLAND』／SEVENTH CRYSTAL
2位『STARBOUND STORIES』／MARC HUDSON
3位『OPERATION PHOENIX』／CROWNE
4位『MOSAIC』／THEOCRACY
5位『ANNO 1696』／INSOMNIUM
6位『THE VERTIGO TRIGGER』／CYHRA
7位『INCEPTION』／ART NATION
8位『III: WEIGHTLESS』／CREYE
9位『DRIVE』／THE DEFIANTS
10位『MEMORIAL』／SOEN

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【2022年】

ザ・テスタメント

1位『THE TESTAMENT』／SEVENTH WONDER
2位『WE BELONG TO THE STARS』／GINEVRA
3位『TERRANOVA』／FALLEN SANCTUARY
4位『THE SICK, THE DYING… AND THE DEAD!』／MEGADETH
5位『AUTOMATON』／CRASHDIET
6位『GATE OF THE GODS』／NEW HORIZON
7位『COMING HOME』／CLEANBREAK
8位『IMPERA』／GHOST
9位『HATE ÜBER ALLES』／KREATOR
10位『THE ENDGAME』／TREAT

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【2021年】

エックス・マークス・ザ・スポット

1位『X MARKS THE SPOT』／ART OF ILLUSION
2位『OF POETRY AND SILENT MASTERY』／PLATENS
3位『II』／CREYE
4位『DELIRIUM』／SEVENTH CRYSTAL
5位『SILVER LAKE BY ESA HOLOPAINEN』／SILVER LAKE BY ESA HOLOPAINEN
6位『KINGS IN THE NORTH』／CROWNE
7位『RETRANSMISSION』／W.E.T.
8位『WIRED』／ECLIPSE
9位『EYE TO EYE』／THE DATSUNS
10位『COMMON GROUND』／BIG BIG TRAIN

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【2020年】

ウィー・アー・ザ・ナイト

1位『WE ARE THE NIGHT』／MAGNUS KARLSSON'S FREE FALL
2位『MIDNIGHT EMPIRE』／ONE DESIRE
3位『MIRROR STAR』／SINNER'S BLOOD
4位『ALCHEMY OF SOULS -PART Ⅰ-』／LORDS OF BLACK
5位『Ⅲ: PENTECOST』／WYTCH HAZEL
6位『ULTIMATE DEMISE』／WILDNESS
7位『MOMENT』／DARK TRANQUILLITY
8位『SHAKE THE WORLD』／BLACK SWAN
9位『SEVEN』／MORS PRINCIPIUM EST
10位『A BOAT ON THE SEA』／MORON POLICE

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【2019年】

Paradigm

1位『PARADIGM』／ECLIPSE
2位『THE COFFIN TRAIN』／DIAMOND HEAD
3位『SHEHILI』／MYRATH
4位『FROM HELL WITH LOVE』／BEAST IN BLACK
5位『DEMONS』／SAVAGE MESSIAH
6位『VERKLIGHETEN』／SOILWORK
7位『HEXED』／CHILDREN OF BODOM
8位『WHEN ALL THE HEROES ARE DEAD』／VISION DIVINE
9位『ASCENSION』／PALADIN
10位『LINE OF FIRE』／FIRST SIGNAL

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【2018年】

Tunguska

1位『TUNGUSKA』／TREAT
2位『PREQUELLE』／GHOST
3位『EMPRESS』／BE THE WOLF
4位『METAL SOULS』／NOZOMU WAKAI’S DESTINIA
5位『ARMOR OF LIGHT』／RIOT V
6位『THE FACE OF FEAR』／ARTILLERY
7位『TIARA』／SEVENTH WONDER
8位『SEVENTEEN』／KAYAK
9位『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』／GRETA VAN FLEET
10位『MY DARK SYMPHONY』／CONCEPTION

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【2017年】

Raging Out(デラックスエディション)(DVD付)

1位『RAGING OUT』／OUTRAGE
2位『HEADSTRONG』／PINK CREAM 69
3位『GODS OF VIOLENCE』／KREATOR
4位『MADNESS』／ALL THAT REMAINS
5位『REACHING INTO INFINITY』／DRAGONFORCE
6位『AMBER GALACTIC』／THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA
7位『LIGHT IN THE DARK』／REVOLUTION RAINTS
8位『WILL TO POWER』／ARCH ENEMY
9位『KEE OF HEARTS』／KEE OF HEARTS
10位『THE DUSK IN US』／CONVERGE

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【2016年】

オーペス『ソーサレス』【初回限定盤CD+ボーナスCD(歌詞対訳付き/日本語解説書封入)】

1位『SORCERESS』／OPETH
2位『THE PASSAGE』／DGM
3位『BATTLES』／IN FLAMES
4位『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』／TESTAMENT
5位『MOONBATHERS』／DELAIN
6位『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』／BON JOVI
7位『DYSTOPIA』／MEGADETH
8位『LEGACY』／MYRATH
9位『PENALTY BY PERCEPTION』／ARTILLERY
10位『THE STAGE』／AVENGED SEVENFOLD

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電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』無料配布開始のお知らせ

こつこつと書き溜めた短篇小説をなんとか自力で電子書籍化した『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』。

いまやその後に書いたものもこのブログに続々と蓄積されていっているけれど、そういえばあれっていつ出したんだっけ？――そう思ってAmazonのページで確認してみたところ「2014/3/3」とのこと。なんともはやリリースから10年（もうじき11年）も経っている……！

という時の高速展開に衝撃を受けて、これを機に誰でも無料でダウンロードして読める形にすることにしました。

そもそも最初から自己紹介がてら、ポートフォリオ代わりの見本市として無料で行こうという考えはあったのですが、どうも一番目に触れるチャンスの多いKindleで取り扱ってもらうとなると、時おり数日間の無料キャンペーンくらいは打てるものの、向こうが決めた最低価格以下には設定できないという制限がありまして、これまでは販売という形を取ってきました。

ですがいろいろと改めて調べてみたところ、どうやらこれにも方法というものがあるらしく、いったん他のサイトで無料配布をしておいてから、「あっちが無料なんで、こっちだけ有料にしても誰もこっちじゃ買いませんよ。むしろこっちのサイトのイメージが悪くなりますよ」と、まあそこまでは言いませんが、要は余所で無料で読めるようになっていることを知らせると、Kindle側もそこに値段を合わせてくるというシステムがあるというではないですか。

そしてその手順を律儀に踏んでみたところ、このたびようやくKindleに無料で置いてもらえることになったという次第です。

というわけで、すでに購入されている稀少な方々にはまことに申し訳ないのですが（ご購入いただいた方には本当に心から感謝しておりますし、なんならどこかでお会いした際に拙電子書籍が映し出されたスマホやデバイスを提示していただければ、画面の上から油性の極太マッキーでサインなどして差し上げたいぐらいですが、ご迷惑どころか器物破損行為に該当しそうなので遠慮しておきます……）、ここでとりあえず無料配布という形を取らせていただくことにしました。

またいつか気まぐれで有料化したりする可能性もなくはないですし、なにしろ10年も前に書いたものなので急に恥ずかしくなって丸ごと引き上げることもあるかもしれませんが（いまさら恥ずかしいも何も……という題名ですが）、前よりもいくらか電子書籍という媒体も定着してきたことですし、これを機にお読みいただければ幸いです。

ちなみにそうしてAmazonに価格交渉を持ちかける都合上、このたび楽天koboのほうでも無料でリリースすることになりましたので、そちらのほうが読みやすいという方はそちらのリンクも貼っておきますので是非。

ちなみに、その肝心の内容と目次は以下のようになっております。もし読んでみて面白いと思った方がいましたら、おひねりだと思って無闇に広めてやってください。何卒よろしくお願い申し上げます。

現実と虚構をつなぐ関節から生まれ落ちたコンドロイチン的文学。 花粉症の木こり、蝉のぬけ殻を集める男、居丈高な名を持つ凶暴なテレフォンオペレーター、大陸移動説ならぬホクロ移動説を唱える飲食店店長、的はずれなユーモア名刺で聖夜を彩るマッチョな営業マン……珍名が暗示する数奇な運命と、因果律の崩壊した短絡思考世界。トルネードに舞い上がるカツラの群れのような、生牡蠣がドロッと垂れた競技場デザインのような、荒井注のカラオケボックスのような計34本の荒唐無稽小説群。そこにあるのは、めくるめく現実を爪切ったばかりの指鉄砲で迎撃するがごとき脱力感と、現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。 耳毛に憧れないすべての人に贈る、悪戯な処女短篇小説集。「読めば読むほどわからなくなる」莫惨一郎の迷宮的長文解説つき。

【目次】
　不向き村
　使えない理由
　耳毛に憧れたって駄目
　ランドリー・マン
　ランドリー・マン 取り調べVer.
　伝説のハンター
　営業筋
　元祖エビサーの誕生
　流行語全部入り小説二〇一三
　来たれ若人！
　リバー・ランズ・スルー・ヘッド
　元祖ハダサーの誕生
　フレンドパークでたわしを狙え！
　中肉中背の男
　文字通りな男
　かもしれない男
　理
　ドーナツ化現象
　ガンズ安堵おばはん
　風の無礼者
　大丈夫
　知ったかじん
　しゃもじの乱
　逆に
　食う変
　髭すぎる森の鳴りすぎる熊さん
　座恋(すわれん)
　誤解神・訓田故事介
　TRUTH
　穴説
　ベスト・ガイ
　理想的な出会い〜ハイスクール編〜
　いつもより余計に回っております
　史上最強の失業者
　あとがき
　解説（莫惨一郎）

耳毛に憧れたって駄目―悪戯短篇小説集 (虚実空転文庫)

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