殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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アメリカで「spicy」というと本当に辛いので警戒している

セントルイスは大雪が降った。セントルイスを含む中西部でも、カンザスからミズーリからケンタッキーから、みたいな帯状の地域で日曜から月曜にかけてそれはそれは降った。セントルイスには十年前と現在とを合算して5年間住んでいるが、11年前の2014年にもたいそうな雪が降って、このときは一時帰国から戻る航空便の乗り継ぎがミネアポリス・セントポール国際空港で止まってしまい、二泊三日ツインシティとよばれるミネアポリス・セントポールに足止めされることがあった。そのときの雪はかなり広範囲で、ミネソタからアイオワ、ミズーリまで縦に雪をドカドカ降らせていたが、今回は横に降った。

今回の雪はサラサラパサパサしたパウダースノーというのだろうか。以前と異なり、今回は車を持っている。その車は、路地に停めているので、雪が積もりたい放題積もっている。いちおう、積もった雪や氷、霜を取り除くための、ブラシとヘラのついた除氷用具をもっている。雪を車から取り除いたが、窓ガラスには凍りついている。ヘラでこそげようとしたが衝撃で防犯ブザーが鳴るので、実際に発車するときになって、エンジンを掛けて車内のエアコンでデフロストしたほうが穏やかかもしれないと思いそのままにしてある。

住んでいるアパートというか長屋の街路はオフィスが管理しているのだが、いかんせんオフィスの人間もこの雪で来ていない。日曜日に雪が止んだ頃合いで、のっしのっしと車道を歩いて、街路を出た、太い道に出てみた。車がまったく通らない。そう思っていると向こうの方からゆっくりと、ラッセルをつけた一台のピックアップが走り去っていった。それを見て、またのっしのっしと雪の街路を戻って家に帰った。普段使わない筋肉と姿勢で背中が死ぬほど痛くなった。背中を整える陰ヨガを久しぶりにやって事なきを得た。

雪が月曜日に上がって、メンテナンスのひとたちが歩道は除雪機で道を気持ちつけてくれた。それだけでもだいぶ動きやすくなった。しかし住民たちは何を勘違いしたのか、除雪がまだ来ていない車道に特攻してはスタックするということをあちこちで展開していた。早い人は6時ぐらいから2時間ぐらい右往左往していた。きっと出勤しようとしたのであろう。わたしは家にあった段ボールを持ち出してそうしたスタックした車のところで、制動輪の下に噛ませることで抜け出す手伝いをしたが、だいたいは段ボールよりも、車体を他の見物人と一緒になってアメフト、あるいは相撲するほうが役に立つことがあった。おかげでまた全身が筋肉痛になった。ぶつかり稽古だ。

火曜日になっても除雪は全域で行われていない。ちょっとだけ、気持ちだけ、雰囲気だけ、除雪が入ったみたいなのだが、そんなもので足りるわけがない。雪はリアルなんだ。早く来て早く道の雪をかいてくれ。とはいえ、いろんなひとがなんだかんだと行ったり来たりしたおかげで、だんだん街路の車道の雪は踏み固められて固くなる。しかし問題はその踏み固められたところに、街路のわきから出るところだ。わだちの脇がいちばんあぶないなという観察をしている。

明日、子供のプリスクールに行くとなれば除雪が必要だが、もう夕方のうちにやってしまおう、と一念発起して、ありあわせの、2ガロンバケツと、ハンディちりとりと、園芸用の移植ゴテをもって外に出た。作業用BGMを流そうと開いたスマホには、明日のプリスクールはお休みです、という5時半のメールの通知が出ていた。ただ、仮に子供が急に熱を出したということにでもなった場合に、車が即応できるようにしておくことはムダではないと思って雪をかきはじめた。

前夜、こういうこともあろうかと雪かきの動画をみていた。いわく、体をねじらないで、方向を転換してから、振り子の要領でショベルを揺すって勢いをつけて雪を放るのだという。

どうにかこうにか、車の前、そして車体の下のタイヤが通りそうなあたりをなんとか取り除くと夜7時になった。芯まで体が冷えた。

ALDIのトルティーヤチップスとマイルドグリーンサルサを食べることにした。それを食べながら、アメリカの食品のパッケージで「spicy」って書いてあったらマジで辛いよなあ、と思い出した。

サルサや、メキシカンや、フライドチキンの類でもそうだが、スパイシーと書いてあったら辛い。それも、七味唐辛子とか一味とか、そういうレベルではなく本当に辛い。それだけではなく、他の味付けを忘れたんじゃないかってぐらいただ辛い。日本の料理で辛いと書いてあったら辛いだけじゃなくて、旨味とかもしっかり感じられるのであるが、アメリカだととにかく辛くて往生する。もうスパイシーと書かれたものはほとんど頼まなくなった。

とにかく辛いというのをいつ身をもって体験したかといって思い出すのは、サンディエゴに滞在していたときに、ミラマーの映画館で、ナチョスを頼んだ。店員に「ハラペーニョ付けるか?」と聞かれて、そういうのもあるのか、と思ってつけてもらった。それはほんとうにただの輪切りのハラペーニョだったか、漬物だったのか、たぶん漬物だった。しかしハラペーニョの辛さ以外特に思い出せないのである。結局食べきれなかったと思う。

それ以後も、大小さまざまの辛い経験をした。よく行くベトナム料理店でもフォーやバインミーにハラペーニョが入っているがほんとうにハラペーニョが切って入れられているので滅法辛い。それだけ一般的な食材である。

そういうアメリカの舌にあわせているのだろうか、グローサリーなどで売られているキムチも、うま味よりも辛味が強く強く感じられる。ご飯と一緒に食べるという感じにならない。味噌とかと合わせてちょうどいい感じになる。

先程も言ったようにこの辛さは、辛さが強いというだけではなく、他の味がなおざりにされている感じがする。「辛くて旨い」という感じにならず、辛いか、旨いか、どっちかを選べと言われているようにも思える。だから単に日本人で辛党というような、辛さも楽しみつつ旨味を味わう食べ方を期待するとまことにつらいことになるのではないかと心配する。本当に、そこは二択にしないでほしい。どうか幸福に辛さと旨さをマリアージュさせてほしい。

トレジョでもパッケージやPOPに「SPICY」あるいは「SPICE」という文字が見えたら、結構「旨さをかなぐり捨てて辛さをぶち込んである」ことが多い。冷凍のインドカレーなどはそうした傾向があるので、注意してほしい。アメリカの外食の店はメニューが文字が並んでいてとにかく選びづらいことが多いが、「スパイシー」という文字が見えたり、材料にハラペーニョJalapeñoの文字が現れたら注意していただきたい。