teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

誰かを批判しても悲しんでも誰も守ってはくれません。近づいてくるのはコロナだけです。

とてもいい言葉だったので。

 

www3.nhk.or.jp
妊婦でコロナ感染者の受け入れ先が見つからず赤ちゃん死亡という痛ましい出来事があった。ブコメは人災だと五輪や政権批判で燃えてるが、批判するときは五輪と政府がこの事件にどれだけ影響したか調べてからの方がいいと思う。

デルタがあまりに感染力高すぎたのか、五輪を開催したことが医療逼迫の主な原因なのかは、ほとんどの人が曖昧なままだ。これが五輪のせいなら次のパラリンピックを止めるためにその批判は正しい。だがデルタの感染力が主要因の場合、ここで訴えるべきは正しい情報の共有になる。

news.yahoo.co.jpコロナは基礎疾患や太ってる人が重症化しやすいように、妊婦も重症化しやすいこと。

www3.nhk.or.jp妊婦がコロナ重症化すると「早産」につながる危険性が高いこと。
早産は合併症になる危険があること。

www.youtube.com早産対処のNICUを扱う病院は限られ、コロナ同時対応はさらに限定されること。


この件で広く知られるべきは、こういった妊婦のワクチン忌避を正す情報や、妊婦のワクチン優先度を上げるための情報だ。インフルエンザワクチンは基礎疾患と同じく妊婦も優先対象だったが、コロナワクチンに関してはさすがに妊婦のデータがなく、基本的に問題ないとされてたものの、やっと最近海外の統計情報が揃い、CDCお墨付きが出たところでもある。妊婦とそのパートナーや家族は積極的にワクチンを接種してほしい。自治体は優先度を上げてほしい。


これを人災だといってブコメのトップが五輪批判、政権批判で埋まってしまっては、妊婦へ本当に必要な情報が届きづらくなる。同じ口でNHKや民放が五輪一色でコロナニュースを埋もれさせたと批判できるだろうか?

anond.hatelabo.jpこの煽り記事のブコメ読むと、五輪反対派から4つの主張が伺える。

政治の党派性そのもの。
特定企業に税金が使われるのが嫌。
直接コロナが持ち込まれ、日本にも世界にも広がる。
間接的に祭りの空気を作る。

その4つの複合案件。
甲子園反対の声が少ないのは税金と関係なく、コロナの直接被害を抑えたい理由だけになり、規模が違うため祭りの空気にならない
ということ。



一応僕のポジションを言っておくと、自民党や菅総理に期待してなく、河野太郎は認め、五輪は開会式、閉会式しか見ないので中止で構わないが、しかしスポーツ選手やアーティストは自分の命かけようが他人の命かけようがエゴに生きてこそと思う。普通の人だって自分の命を何に賭けるか賭けないか、何かのエゴにこだわってる事が生きる意味となる。コロナがなくても他人の命の上で自分のエゴが成り立ち、みんなある種自分のエゴを自覚し責任取れないまま迷惑かける覚悟を背負って、そのうえで余裕を作れた人から自分の周りの人を助ける。今の政府は頼りなさすぎなのでデルタは自衛力を何倍も高めないとやばいという考え。


ワクチン接種とバブル方式と外出規制が徹底されたおかげか、五輪からコロナが広がったというデータこそないが、五輪の祭気分で自粛率が大きく下がり、現在の感染主要因になったと多くの人は疑っているだろう。

stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

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オリンピック開催の7月23日に感染爆発したような印象を持ってる人もいるだろうが、デルタ株の置き換えが進みながら感染上昇が始まったのは6月末からである。人流はどうか。


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こちらはドコモの携帯移動ビックデータ。1.0に近づくほど自粛。携帯の移動だけで自粛してるかどうかを正確に判定するのは難しいが、8000万契約近くあるビックデータは細かいこと抜きにして信頼のおけるデータだ。ブレが大きい青い線は休校の影響がある学生。

ピンクの期間が4度の緊急事態宣言。1回目の自粛率平均55%から回を重ねて20%にまで低下。2回目、3回目は初動こそ自粛率高いが、数日で慣れてすぐに下降。4回目のオリンピックのときはこの初動のハネすらない。これはオリンピックで4連休を実現し、夏休みと重なり、自粛率が5%も大きく低下したと見ていいだろう。

ゆえにオリンピックがなければ、4回目の初動4日間は5%自粛率ハネてたはずである。

ただ3回目までを見る限り、その効果は数日で同じようにすぐ20%まで下がったと予想される。1回目の55%からの推移で見れば五輪の影響は連休4日ぐらいだ。五輪を言い訳に飲み歩いてる人は多かったが、そういう人は五輪がなくても別の言い訳作って飲み歩いてただろう。こうなるとアルファ株基本再生産2.5倍(みんなの頑張りで実効再生産1.25倍)が、デルタの5-9倍(これまでの頑張りでは実効2.5倍)という手に負えない倍率の上がり方で、今までの対策では防げなくなったと僕はこのグラフから考える。

五輪のせいで4連休分デルタ感染が早く進んだのはほぼ確実で正しい。逆に五輪で影響があったのは4連休分だけで、五輪をやらなくてもデルタの感染力が強すぎて1週間後に同じ状況になってたというのも正しい。ここをどう評価するか。

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また、緊急事態宣言後は自粛率右肩下がりのはずだが、五輪開会式からは自粛率が上がっている。これを小池知事は五輪によるステイホーム効果と言ってて、それは一理あるが、このとき連日過去最多2800人とか更新してたので、単純に危機感持った人たちが増えたという両方の理由があるだろう。


五輪によって1週間分早いダメージを喰らった日本ではあるが、ステイホームに関しては海外にこういう意見もある。

number.bunshun.jp

 ルグランド氏は「コロナもあって、日本において五輪開催を支持しない人の方が多いという状況は分かっていたが、少なくとも自分たちを直接迎え入れてくれた人たちのホスピタリティには本当に感動した。日本語もしゃべれない自分たちが『招かれざる客』として押し掛けてくるなかで、日本人のオリンピック開催にたいする“義務感”を非常に感じた。オーストラリアでは日本よりも少ない感染者数でも都市封鎖が行われ、国民が家に閉じ込められている。

 日本は感染者が急増する中、オリンピックを開催してくれた。オーストラリアでは、家に閉じ込められている人々にとってオリンピックはこの上なく気分が高揚する素晴らしいイベントだ(豪選手も歴代でも最高レベルの好成績を残している)」と話した。バッグショウ氏も「開催されたことに感謝しているし、記者としても政治報道やコロナ報道に疲れ切っていた中、ポジティブなニュースを報道できることは素晴らしい」と語る。


僕らは日本のコロナ被害と、アスリートによる平和の祭典を天秤にかけてたが、
「海外のステイホームしてる人たちへ届けるコンテンツ」という視点はなかった。

世界で2億人の感染者を出し、440万人死亡してる中、海外は報道がオリンピックに染まる日本と真逆。コロナや自然災害の暗く鬱になりそうなニュースばかりのところ、五輪で頑張ってる自国の選手を見るのは明るいニュースになる。世界中でステイホームしてる人へ届けるコンテンツとしての意義はあっただろう。

 

prtimes.jp

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もちろん興味あるのは国民の半分ぐらいで、それも全部の競技を見るわけではないが一定の効果はある。これは日本もアメリカもオリンピック見る比率はそんなに変わらないみたいで、参加選手多い国がだいたいこういう傾向と思われる。

courrier.jp逆に米国人は59%が五輪に興味ありというね。




もう一つ、医療リソースが五輪に奪われた事。

www3.nhk.or.jpオリンピックでは、医療従事者がピークで1日540人。

www.asahi.comパラリンピックでは、ピーク1日270人。
(両期間1ヶ月合わせて延べ7000人)

この540人や、この後のパラで270人を医師会通じて全国から集める。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010209.pdf

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検索で引っかかった平成20年のデータだが、医師、(准)看護師合わせて160万人。
160万人中、540人や270人がオリパラのリソースに使われることになる。
160万人といっても週5で働いたり、全てが実働で動いてないとしたらざっくり1日120万人と考えてもいいだろう。


デルタで自宅療養という医療崩壊が数万人発生してる現状は270人でも人手は欲しい。これでもう何十人か助かったかもしれず、助からなくても270人分医療従事者が休めたかもしれない。

しかし、120万が120万270人になっても、重症者用の病床、(N)ICU、ECMOは限られるため受け入れる重症者数が増えるとは考えにくく、現状のデルタ対応の根本的解決にはならず、自宅療養数万人の前では焼け石に水とも言える。

これもどっちの言い分も通るが、ケンカするほど本質的な議論とは思えない。
それより国民一人一人が感染対策徹底する事を伝える方が重症者を減らすのによっぽど重要だからだ。


結局デルタの根本的な解決には、ワクチン接種をすすめること。中等症や軽症者へ今にも認可されそうな「抗体カクテル(ワクチンからではなく出来上がった抗体そのものを点滴)」に期待する事になる。抗体カクテルは重症化する前に発症から7日以内という少し厳し目な条件だが、この後ワクチンが行き届くまで、どうひとりひとりが自衛力を高めていけるか。いまだ感染ピークは見えない。

news.yahoo.co.jp
タイトル引用したこちらのPDFはとても共感した。
お医者さんの立場で書かれた説明書だ。

「新型コロナウイルスをのりこえるための説明書」
https://www.suwachuo.com/pdf/deruta.pdf

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デルタのピークが見えない現状、もはや政府を頼る段階ではない。(ワクチンは頼る)
批判と選挙の内ゲバに時間とリソースを使ってるときでもないし、それは基本的な情報を伝えるのに邪魔になることもある。

妊婦の件で「デルタもあるけど五輪が一番の原因」というエビデンスのない感情的な批判が大きくなると、みんな「自衛はそれぞれで。こういうことを繰り返さないためには、パラリンピックを止める事が何よりも最優先」という議論を繰り広げる事になる。

でもここで本当に必要な情報は妊婦への正しいワクチン啓蒙と、自治体への圧力、ウレタンは不織布に、他人との食事は昼食すら断る、せめて家族全員が2回接種2週間終わるまで不要不急な外出を控えるなど「オリパラは置いといて、こういうことを繰り返さないためには、妊婦も一般人も自衛力を高めるのが何よりも最優先」という情報を伝えていくことだ。

ピーク超えるまでは協力し、選挙で落とせばいいじゃない。国や政府に頼れないなら自分とその周りは自衛すべきで、PDFのような情報を2人でも3人でも共有していったほうが現実的だ。医療機関もその方が助かる。


もし僕が菅総理を批判するなら尾身会長と同じ。デルタがこれまでと全く違うウイルスだというメッセージが伝えきれてない所だ。オリパラを成功させたいなら、オリパラをやる意義と、デルタの危険性を訴えるメッセージを両立させないといけない。

利権や支持者のエゴがあろうが堂々と五輪を主張して、デルタの危険性も強調する。棒読みではなく感情で訴える場面だ。国民も感情的に怒ってるのだから危機的状況こそトップは多少の演技力とプレゼン力が必要になる。どうせ嫌われるのだから「五輪は組織委員会と小池知事とスタッフとアスリートを信じます」だけの言及にすまし、総理は毅然とした態度でデルタはやばいというメッセージに専念して伝えたほうが少しでも支持取れただろう。五輪の正面に立つ人と、デルタの正面に立つ人は分けるべきだ。

度重なる緊急事態宣言も、演出性をもった毎回違うPRが必要だ。ジブリの鈴木敏夫も映画のたびに数十億かけた毎回違うプロモーションを仕掛ける。ポニョの「マル・マル・モリ・モリ!」とか、ゲドの積み上げパンフレットとか、宮崎駿の引退宣言(は毎回だけど)とか。

同じ宣言をしても人は慣れてしまう。プロの宣伝のように「毎回これは違うんだ!」と感染対策そのものを緊張感ある演技で盛り上げないといけない。菅総理はプロデューサーとして「緊急事態宣言」というシリーズ作品を毎回違うプロモーションで大ヒットさせる責任があった。



政府が頼りないなら国民一人一人が自分と周りを守るしかない。国が何かしてくれるかじゃなく、国民が国に何かできるか。とはJFKの言葉。欧米の突き放したサービスに比べたら、日本は何でもお客様扱いで、お上に伺いすぎて、文句を言うだけのお客様気分すぎる。国民が責任を上に押し付け、国民の責任回避で選ばれた政府が責任回避ばかりになるのは必然かもしれない。

自民党意外が政権とっても結局自民党のようになるのは、僕ら一人一人が当事者意識のないお客様気分で怒ってばかりだからだ。みんなが一次情報を調べず、切り抜きニュースで感情的に怒ってばかりだと、政府も事の本質より国民の感情を最優先で伺うようになる。事の本質より国民感情を優先に、怒られないよう、批判されないよう周りの目ばかり気にして動くと「正しく」「公平に」「完璧に」ばかりを目指し、代わりに「効率」と「スピード」と「生産性」を犠牲に過剰労働から国は少しづつ歪んでいく。政治やリーダーシップに誰からも批判されない選択肢などない。

www.kobe-np.co.jp
 これだけ批判されることが多いと自分たちで決めていこうという姿勢がなくなっていく。意思決定においては、外部有識者の委員会を立て専門家の意見を聞いて決めるようになった。批判されないことを第一に考えるようになった。とがったものは作りにくい組織になっていった。

初期にエンブレムの盗作問題があった。あのあたりからすでに外部の人に決めてもらうという文化が生まれた。過去の組織委でそんなことをやっているところはないと思う。

本来、職員は熱意とビジョンを持って仕事に取り組み、クリエーティブの力を信じてやっていくものだが、誰からも文句を言われないことを優先するようになっていったように感じる。誰もリーダーシップをとれない中で、周囲から熱意もビジョンもモチベーションもなくなっていくのを感じた。

ロバを運ぶ兄弟である。

ところが、ホットエントリーに上がるような朝日(AERA含む)、毎日、東京新聞などはかなり党派性に傾いており、読者を正義のために怒らせたほうが誌面が売れ、PV稼げて儲かる仕組みになってる。枝葉の話でも一面的に正しい事を切り取って報道すれば全体を知らない読者が怒ってくれて儲かる。共同通信は切り抜き短すぎで読者をうまく怒らせる。

例えば先のオリンピック1日540人の医療従事者を集めるにあたって
「五輪医療従事者 7000人確保。東京から大学病院10個分のスタッフが消える!」なんてこの数ヶ月誤読「させられていた」人は多いんじゃないだろうか。基本ボランティアで給料は病院側から出るため、コロナ対応意外の外科などで手が開いてるスタッフが対象。距離的には関東圏から多いだろうし一面的には正しいかもしれないが、全国160万人中からボランティアピーク1日540人という正確な情報であれば、あまり怒る人はいなかったんじゃないだろうか。それでは誰も読んでくれないのでメディアは全部知っててPVのため煽り、政治活動する人もそういった記事を利用する。

↓ブコメから参考スレッド。(追記)

こういう現場の俯瞰的な情報は面白くなく、正義のために怒る要素がないのであまり広く届いてこなかった。


メディアが全部正確に伝えたら長いし面白くないし読者が怒ってくれない。それじゃメディアは儲からず成り立たない。知ってても「正確に全部は伝えない」のがメディアの一番の武器だ。儲けるには政治家という悪者を立てて、みんなが怒るように仕向けないといけない。


代わりにホットエントリーに上がらない読売や産経がいいかというと、それはそれで反対の党派性を持ってる。結局自分で数字調べて、なるべく一次情報にあたって、自分が信じたい反対の情報もあえて仮説を立てる必要がある。左の新聞と右の新聞の片方だけ見て判断してはいけない。批判するときは枝葉で論争せず、全体を把握して一番のボトルネックを探さねばならない。間違ってたら素直に謝って修正しよう。ちなみに上のドコモデータも読売記事からの引用である。

全体の把握は難しく洞察で埋めるしかない事も多いが、そこを「偉いやつや大企業や政治家が悪い事してるに決まってる」で雑に埋めれば、それで稼ぎたいメディアの思うつぼ。きちんと数字や一次情報を調べるクセをつけてるほど洞察できることは多くなる。調べきれない、反対の仮説を覆すデータがないなら批判未満で保留しておく。

それを他人に求めるわけではない。
他人は変えられない。
タイトルとは相反するが、この記事も妊婦の件にまで五輪批判する事にデータを持ち込んで対応し、菅批判もしてる。きちんと感染対策守りデータを持って政治批判する人たちを批難するわけでもない。そもそも僕自身が一番にメディアに踊らされ、振り回され、正義のために見当違いに怒って疲弊してたのだから変わるのは僕の方。

自分がそうできるようになって初めて、選挙や国民感情より事の本質を語る人、自分で大枠やデータを調べてボトルネック把握できる人、間違ってたらちゃんと謝って修正する人、支持団体や党の顔色ばかりうかがって振り回されない人に票を入れる事ができると思う。


目の前の命はもちろん大事だが「正義」と「命」を盾に感情的になると判断を見誤る。目の前の「正義」と「命」と「感情」に素早く反応するより、全体で何が起こってるかを把握し、機械的にボトルネックへ対応するほうがより多くの命を助ける事もある。この3つを前提としない議論のほうが、、人としては冷たいし人気取りはできないかもしれないが、フラットに全体を把握しやすく建設的だ。