七月ふう「元暗殺者、転生して貴族の令嬢になりました。」PASH!コミックス

タイトルにあるとおり暗殺者もので、じっさい作中で暗殺もちょくちょく実行されているが、暗殺部分は基本あっさりさっぱり処理して終わりでバトル路線みたいのはなく、やや脇要素。基本的には主人公が人間関係の機微に触れてく心理描写が主要な内容。人を殺しながら繊細な心が揺れ動くみたいなピーキーさがセールスポイント。

転生元が現代社会ではなく、おそらく同じ世界内で転生(過去なのか未来なのかは不明)しているのだが、前世の境遇と貴族社会に生まれたギャップの折り合いをつけるために必要もない暗殺業に身を投じる。金銭目的ではないので殆ど趣味の社交ダンス並みの扱いの暗殺業という。

ここまで悪役令嬢要素が全く出てこないように見えるが作中は割と悪役令嬢要素がちりばめられている。というより、主人公の行動はほぼ「いわゆるテンプレ悪役令嬢ムーブ」である。着てるドレスは基本的に黒基調だし、庶民生まれの義妹に貴族としてのふるまいを厳しく躾けたり、義妹が「義姉さまは泥水をすするような庶民の生活をご存じないからそんなことが言えるんだわ」とか口答えすると髪の毛掴んで引きずっていって屋外の水たまりに突き飛ばし「泥水の味を知ってから言え」と𠮟りつける。「悪役令嬢モノでテンプレとして扱われるけど実際はめったに見ない悪役令嬢らしい言動を主人公が実演してその胸中も説明してくれる」という、けっこう珍しい位置づけの作品である。

絵はうまい系ではないが、マンガはテンポよく進行し、感情の流れもわかりやすい。殺人に加えて嫉妬の感情が入り乱れる愛憎劇と、やってる内容が重たいのにコメディタッチの軽さを上手く取り入れて読みやすくなっている。

 

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「悪役令嬢ですが、ヒロインに攻略されてますわ!? アンソロジーコミック3」ゼロサムコミックス

百合展開バージョンアンソロジーだが短編のどの子も全員かわいい。

女の子同士でひたすらイチャイチャする一冊。かなりの当たり回。

 

  • にび「王子に婚約破棄された令嬢が、王妃に返り咲くまで」

婚約破棄バカ王子の妹とイチャイチャ。二人とも可愛い。

 

  • むぎちゃぽよこ「光の魔法菓子と婚約破棄」

ライバル聖女とイチャイチャ。二人とも可愛い。

 

  • 夏野なえ「悪女の秘密のお仕事」

職業悪女を演じてる主人公に憧れて悪役令嬢を真似ようと近付いてくる後輩とイチャイチャ。

 

  • 黒コマリ「性悪の私と婚約破棄して、聖女の義妹と結婚ですか? 殿下、それはおやめになった方がよろしいかと」

タイトルにある聖女の義妹とのイチャイチャのレベルがかなり深いイチャイチャ。

 

  • 栗山こがね・乙ひより「シンデレラが可愛すぎるので私が幸せにしてみせます!」

シンデレラの義姉の主人公がシンデレラとイチャイチャ。イチャイチャを描くのにページ割きすぎて、とうとうシンデレラの王子は登場すらしない。

わかさこばと「乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル」コロナコミックス

タイトルで冒険者ものかとおもいきや現状だと「処刑少女の生きる道」系の暗殺者ジャンル。暗殺者はけっこうよく見かける人気ジャンルだが、暗殺者がゴールなのか今の巻が暗殺者編なのかは不明。成長するにつれ乙女ゲー主人公スキルのせいか男をオート魅了してしまうっぽい描写も垣間見えるので、戦いの場もどんどん変わってくのかもしれない。

おおまかには乙女ゲーの主役である「聖女」的ななんかとして定められたルートから逸脱して自分の道を歩んでく聖女脱落ジャンル。転生や時間遡行ではないが諸般の事情により多少の盤外知識を獲得してる。

殺人シーンに際し一切の躊躇もなければ過剰な書き込みもない、ふわっとした絵柄でドライな描写が続くため、結果、書き込みの多い劇画系より乾いた印象を与えてハードボイルド度合いが増して見えるという面白いマンガ。

 

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古代甲「凶乱令嬢ニア・リストン」ガンガンコミックス

肉体言語系令嬢だが表題の本人はほとんど戦わないというか、戦うと一瞬で終わるので主に別方面で話が進む。

具体的にはお付きのメイドが中心で話が回る感じで、お付きのメイドは、いつもの、ほぼ大体アレ。

 

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ひとは誰しも出せるとなればロベルタを出すし、イチャゴロでロベルタを愛でずにいられないのだなあと。

狂乱となってるけど主人公は「最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」のスカーレットに比べ理性的で拳を見境なしにふるわない。どっちかというとロベルタメイドのがロベルタなので狂犬。表紙の少女に「ざぁこ♥」と蔑まれるシチュは見れない。

ほぼロベルタハァハァで話が尽きるが、ロベルタを嫌いな人なんていないので推せる。

 

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ほおのきソラ「最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」レジーナコミックス

2025年アニメ放映予定。

 

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肉体言語系令嬢ものの鉄板王道。

本当にただひたすら殴るだけ。

男性向け、少年向け諸作品より先鋭化され純化しており、格闘技の蘊蓄やバトルに到る因果のバックストーリーを延々と語る解説とナレーションが主役の「格闘技もの」より暴の一点突破で圧倒的に勝る。少女漫画ならではの観念性をうまく使いこなしてる。

 

コミカライズは絵的にもドレス姿のままで殴るというビジュアルの独自性において抜きんでており必見。

それだけにアニメ化には不安がつきまとう。悪役令嬢もののアニメ化は低予算でお茶を濁しがちであり、ドレスのまま格闘とかどう考えても作画死ぬだろみたいな本作をどうやったら見れるものにできるのか、コスト方面で全く想像がつかない。正直ごまかしまくって逃げるしかないように思えるのだがどうするんだろう。いっそ忍者武芸帳方式にコミカライズ画像にアテレコつけて流したほうがいいのかもしれない。

 

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はな「転生令嬢は精霊に愛されて最強です……だけど普通に恋したい!」コロナコミックス

「精霊に愛されて最強です」の部分だけで話が進み、4巻の中盤まで「恋したい」の欠片も出てこない。4巻でもそれっぽい相手かなと顔出しがちょびっとあるだけで、単行本4巻までは恋愛無縁の超スローペース。

だがそれがいい、というかゆるふわがいい。やってることは貴族の権力抗争の話ばっかなのだが、しかし絶対的な「愛されて最強です」が揺るぎないゆえにひたすらゆるふわ、というのが良い。

実際のところ、本作は割と丁寧にファンタジー世界のファンタジーさを描いてる、テンプレ活用のストーリー指向ではない、ファンタジー世界のステキとキラキラをみせてくれる本格指向ファンタジー作品なので、権力抗争も恋愛も後回しでいいんだよね。

 

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飯田とい「聖女さま?いいえ、通りすがりの魔物使いです!」電撃コミックスNEXT

モフ系というよりモフをメタるメタモフ系。主人公は異世界転生してるのでモフとか言っちゃうが周囲はモフがなんなのか理解できず意味を誤解してしまっている。

モフ系は正統派というか真っ当な主人公だとコミュニケーション重視のためモフれるタイミングは普段の何気ないコミュニケーションの中であり、さりげないモフを読者が鋭く読み取って後方先輩面でウムウムと頷くスタイルの娯楽になるが、本作はメタモフで読者にモフを過度に強調するためコミュニケーションがギャグ調で動物虐待並みに過激なものになっている。

ヒロインは可愛いと形容するにはだいぶ非人道的モフを披露しすぎで、ヒロインが可愛いから正義は流石に主張しづらい。

そこで「いやこれは魔物であって、本当の動物じゃないんです」と言い訳が用意され主人公のジョブが魔物使いであるというタイトルになるわけだが、メタな言い訳以外では魔物使い的な行動は一切とらない潔さ。また戦う時も魔物には戦わせず自分で前に出て、戦士じゃないので武器は使わず、魔法使いじゃないので魔法攻撃もせず。素手。ステゴロ。

つまりコンプライアンス的に動物虐待ではないと筋を通しつつモフに惑溺するためだけの題名、設定、内容に徹しているという退廃のためのストイシズムの美しい典型例。

 

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