“武藤敏郎ショック”を避けよ

 二週間ほど前に、クルーグマンの「1ドル100円超え アベよ、これでいいのだ」のインタビュー記事の次に、『週刊現代』に長めのコメントが「アベノミクスに反対する人たちへ」として掲載されてました。そこでいま最も重要だと思うのが以下のものです。

「仮に財務省出身の武藤敏郎氏が日銀総裁になれば“武藤ショック”が起こり、株価は失速するでしょう。財務省、日銀と無関係で金融緩和に積極的な人を総裁に任命すれば、安倍政権は官僚をコントロールしていることが示せてさらに株価は上がると思います」

「02〜07年の景気の時に給料が上がらなかったということで、アベノミクスを批判する人もいます。しかし、それは、インフレ政策が中途半端だったため。経済が本格的な成長を迎えるまえに失速してしまい、給料が上がるところまでいかなかったのです。理想を言えば、経団連が春闘は今夏のボーナスで賃金を上げると宣言すれば、経済はより早く立ち上がっていきます。経済界に、それだけの甲斐性があるかどうかですが……。いずれにせよ、大卒も高卒も、新卒学生の就職内定率がすでに上がり始めています。いまこそ“所得倍増計画”を発して、デフレを脱却すべきときなのです」

最後の“所得倍増計画”と表現した記憶がないが、それはまあいいとして(所得が増加する目標であることに変わりはない)。

この記事の後に、上記の“武藤ショック”を予見させる出来事も起きた。多くの報道によれば、「武藤氏に総裁がしぼられた」というニュースが流れただけで株安、円高(一気に1円の円高)がすすんだ。市場は実に“素直”だ。武藤氏ではやはり日本銀行の政策が安倍首相の思うようには転換しないと見込んでいるのだろう。

またこれもこの記事の後であるが、先週、安倍首相は経団連の幹部に面会し、賃上げの協力を説いた。これも上のコメントにあるように適切であり、また最善の行動だと思う。経営者は自らの賃上げが、このデフレの本格的解消と、そののちの自社の経営環境の改善につながるとして協力するべきではないだろうか。

さて『週刊現代』では以下のことも話している。

「アベノミクスの、とりわけ金融緩和政策に関する批判は根拠を持たないものが多く、批判のための批判に終始している。典型的なのが、『インフレ率の目標2%』に対する批判です。インフレが2%に止まることなく、過剰に物価が上昇してしまうという理屈ですが、政策としてインフレを無限に続けることはありえません。2%の目標というのは、『2%以内にインフレ率を収める』」という政策なのです。インフレ目標というのは、ある一定の幅に物価をコントロールする政策で、実はハイパーインフレを防ぐのに最も適した政策なのです。しかも多くの論者は、途中の過程を無視して、デフレからいきなりハイパーインフレにしてしまう。歴史上、景気対策をしてハイパーインフレが起きたことはないんですよ。ハイパーインフレになった国は、財政破綻の結果、そうなったのです。日本の国債の利回りはまだ、稀に見る低水準で、ハイパーインフレになる要素は皆無。あるとしたら、富士山が大爆発して日本が沈没するくらいの大災害が起こったときでしょう」

まあ、最後もおおげさだが、それでも景気回復目的でのハイパーインフレというのは聞いたことがない。また景気回復すれば、税収が回復し、それで財政再建が促される。景気がよくなり財政破綻などは聞いたことがない。

また「通貨安競争」批判についても僕は以下のようにコメントしています。

「これも前提に誤りがある。今回のアベノミクスによる金融緩和政策は、「通貨安」が目的ではありません。金融緩和をした結果、結果的に円安になるというだけ。円安というより、標準的な円の価格に戻ってきているというだけです。リーマンショック以前は1ドル100円〜120円近くだったんですよ。円高は、その後の米欧の金融緩和に、日本が対抗しなかった結果にすぎません」

このことも最近の欧米では一応の理解がすすんでいるようで、その典型がG20の場や米国高官やIMF総裁らのコメントであろう。しかし他方で、日本のリフレ政策に反対しているドイツ・中国・韓国の“新・枢軸国”や新興国からの批判は今後もでてくるだけに警戒が必要だ。

ちなみに下が二週間前の『週刊現代』。壇蜜さんと同じ雑誌。初めて彼女がどんな人なのか知った 笑。