不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

都内のマンションを売却し、静岡県に移住。趣味の富士山撮影を満喫する暮らしに!/東京都足立区Sさん(60代)

東京都足立区 Sさん(60代)/都内のマンションを売却し、静岡県富士市に住み替え。趣味の富士山撮影を満喫する暮らし!

定年後、都内のマンションを売却し、趣味の写真を満喫するべく地方への移住を計画していたSさんは、コロナ禍に突入した2020年、移住時期を早めることに。内見希望者がなかなか現れませんでしたが、移住先のマンションとの二重経費を避けるためにも、査定額にこだわらず売却に踏み切りました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都足立区
築年数 約26年
間取り・面積 1LDK(52m2)
ローン残高 なし
査定価格 2216万円
売り出し価格 2350万円
成約価格 1930万円

コロナ禍に突入し不動産市況に不安。計画より早めの地方移住を決意

定年退職後、東京都足立区のマンションを売却し、富士山が見える静岡県内のマンションに住み替えたSさん。趣味の富士山撮影を毎日楽しむ、理想の生活を手に入れました。

「現役時代から趣味で富士山の写真を撮り続けており、定年後は窓から富士山の見えるマンションに住み替えて趣味を満喫したいと考えていました。時期は定年後5、6年先を考えていたのですが、2020年にコロナ禍に突入したことから、今後不動産市況が悪化するのではと不安を感じたので、数年前倒しして早めに不動産売却をして移住することにしたんです」

不動産売却の経験のないSさんは、まずインターネットで情報を集めました。
「マンションを売却してから新居を購入するか、まず次に住む家を購入してから売るか。またはマンションを賃貸に出して家賃収入を得るか。今後のライフスタイルと資金計画について、ネットを使って勉強しながら考えました。年金生活なので無理はできませんが、マンションの売却資金を充当しなくても、貯金だけで新居購入の資金繰りができそうだったので、まずは住むところを決めて準備を整えてから売却活動をしようと決めました」

まず移住先を購入し、その後、売却活動をスタート

そこでまずSさんは新居探しを開始。2020年7月に窓から富士山が見える理想的なマンションと出会い、購入を決めました。築40年、600万円と資金的にも条件にぴったりでした。
新居の購入とリフォームの契約等が済んだ段階で、住んでいた足立区のマンションの売却活動を開始しました。

26年前に3700万円弱で購入したマンションで、購入後は周辺にマンションがどんどん増えたといいます。東京駅には最寄り駅から20〜30分、渋谷まで40分ぐらいで通勤利便性に優れています。

不動産仲介会社を選定するため、大手、中堅合わせて不動産仲介会社6社に簡易査定を依頼し、その中から3社に絞り、訪問査定をしてもらいました。
訪問査定の結果、A社が2216万円、B社は2230万円、C社が1967万円という査定額に。Sさんは大手不動産会社のA社に依頼することに決め、2020年12月に専属専任媒介契約を結びました。

「査定額が最も高かったのはB社でしたが、A社はサポート体制がしっかりしていると感じました。たとえば、引っ越し時のクリーニングや不用品処分のサービス、また、引っ越し後に不具合があり費用が発生した際の負担金など、他の不動産会社にはないものでした」

年末年始の内見者を見込み、12月中旬に売り物件情報をネット上に公開。売り出し価格は2350万円。査定額より少し高めの設定でスタートしました。

「はじめての不動産の売却なので、最初はいくらまでとかいつまでに売りたいといった明確なプランは持っていませんでした。契約したA社では、売り出し価格の目安を3パターン提示する方法を採用していました。1. 長期の売却期間でもいいので高く売りたい“強気設定”、2. 安くても短期で売りたい“スピード重視設定”、3. その中間の3パターンです。1. だと2480万円、2. だと2180万円、3. だと2280万円〜2380万円が目安とのことでした。特に希望がなかった私は、間をとり、2350万円の売り出し価格に決めました」

10年前に1LDKにリフォームしたことで、ファミリー層のニーズに合わず苦戦

売り出して約3カ月たちましたが、反響はほとんどありませんでした。

「1週間に1回、不動産会社から連絡が来るのですが、『問い合わせはあるが内見の申し込みはありませんでした』という報告が続きました。以前、他の不動産会社からも指摘されたのですが、10年ほど前、3Kを1LDKの独り暮らし向きにリフォームしたため、ファミリー層のニーズと合わなかったのが理由のようです。当時はずっとこのマンションに住むつもりで、まさか売却するとは考えていなかったので自分が住みやすいようにリフォームしたことが売却のハードルを高めてしまったようです」

不動産売却に不利なリフォームをしてしまい後悔

反響が薄いため、2月中旬頃、売り出し価格の引き下げを不動産会社と相談していました。そんなとき、担当者から「1900万円で3月末までに引き渡しができるのであれば購入したいという人がいる」と連絡がありました。

「最初、1900万円では査定額より低すぎると私も難色を示しました。とはいえ、何カ月も反応がなく、本当に売れるだろうかと心配にもなっていた頃です。もう少し高くならないかと担当者に聞いてみました。担当者を通じて価格交渉をした結果、1930万円でという申し出があり、結局、その価格で売却を決めました」

当初「査定額程度で売れたら」と考えていたというSさん。査定額より約300万円低い金額で売却を決めた理由は何でしょう。

「地方に引っ越すので、引き延ばすと手続き等で行き来するのが大変だなと思いました。価格を2350万円からもう少し引き下げて売り出しを続けてみてはという提案もありましたが、引き延ばせばマンションの管理費等がかさむし、すでに購入した富士市のマンションとの二重経費がかかることも避けたかったんです」

売買契約を結んだのは2月20日、新居のリフォームが完成したのも同日、引っ越しが2月24日だったことを考えると、いいタイミングだったと言えそうです。

■簡易査定と訪問査定

不動産売却時の売り出し価格を設定する際、不動産会社に依頼していくらで売れるかを判断してもらう不動産査定には、「簡易査定」と「訪問査定」の2種類があります。「簡易査定」とは、面積や築年数など簡単なデータだけで求める査定方法。「訪問査定」とは、不動産会社が現地を調査して行う査定方法です。
実際に不動産査定をしてもらう場合は、まず複数の不動産会社に簡易査定を依頼し、その中から良さそうな不動産会社を選んで訪問査定を依頼する手順が一般的です。
さらに訪問査定の結果、納得のいく不動産査定をしてくれた不動産会社を選んで媒介契約を結び、売り出すことになります。
媒介契約する会社は、訪問査定の対応の良さや査定額の根拠がしっかりしたところを選ぶのがおすすめです。

●不動産査定の流れ
(複数の不動産会社に)簡易査定を依頼
↓
簡易査定
↓
(良さそうな不動産会社に)訪問査定を依頼
↓
訪問査定
↓
(納得のいく査定をしてくれた不動産会社と)媒介契約
↓
売り出し

二重経費を回避し、スムーズにリタイア生活をスタート

「これほど不動産価格があがるとは予想していなかったので、今思えば少し早く売りすぎたかなと思いますが、売らずにいれば管理費や税金などの諸経費がかかり続けるデメリットもあります。どちらが良かったか判断するのは難しいですね」とSさんは振り返ります。

「依頼した不動産仲介会社は信頼できたので安心でしたし、大手のネットワークの広さを感じました。不動産売却は初めてでしたが、細かい部分まで丁寧に説明してくれたので助かりました。何カ月も反響がなかったとき、リフォームした方がいいかと相談したところ、お客様の好みもあるし費用もかかるのでリフォームはおすすめしないと、売り手の立場に立った回答もありがたかったです」

今は富士山の見える部屋に住み、天気のいい日は好きな時間に写真を撮影しにでかける毎日。「本当に楽しいです」と、晴れやかな笑顔を見せてくれました。

2020年11月 ・マンションの簡易査定(6社)を依頼
・訪問査定(3社)
2020年12月 ・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・2350万円で売り出し
2021年2月 ・購入検討者が現れる
2021年2月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 買い先行になると、マンション管理費や固定資産税など二重の経費がかかり、家計の負担がかさむこともある。
  • 売り出し後の反響が少なければ、売り出し価格を見直したり、購入希望者と価格交渉することも必要。
  • 自分の好みにリフォームした物件は売れにくいこともある。

取材・文/浅野真由美 イラスト/村林タカノブ

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