映画のルール、殺人の消費 スクリーム4 ネクスト:ジェネレーション
勢い止まらない「仮面ライダーフォーゼ」だが7、8話は「ブレックファスト・クラブ」がモチーフに、そして9、10話は「ザ・クラフト」がモチーフになったエピソードだった。で、その「ザ・クラフト」に出演していた(魔女グループの一人)ネーヴ・キャンベルの代表作が「スクリーム」。今年その約10年ぶりとなる新作「スクリーム4: ネクスト・ジェネレーション」が公開された。
これを見た日は一日の映画の日ということで実に3本映画をはしごしたのだが、思い出すと一作目の「スクリーム」も3本はしごしたうちの一作だった。当時一緒に観たのは「仮面の男」と「リーサル・ウェポン4」。きしくも今「三銃士」も公開されてるので一緒に見ると当時の再現になるのだが「三銃士」はその予告編があまりにしつこすぎて完全に見る気をなくしてしまったのでスルー。つまらなくはないと思うが予告編が食傷気味。今回は「キャプテン・アメリカ」の2回目、「ミッション:8ミニッツ」とはしごしたのだった。
物語
ウッズボローの惨劇から15年。事件を基にした映画「スタブ」シリーズもすっかりB級ホラーとなり若者にとっては過去の出来事になっている。
過去の事件の生き残りシドニーが事件のことを書いた著作の宣伝活動のためにウッズボローに帰郷。時を同じくして再びゴーストフェイスによる殺人が起きる・・・
映画はまずとある家で映画を見ている二人の女子から始まる。ああ、いつもの始まりだな、と思って見ていると電話がかかってきて謎の声で「好きなホラー映画は?」とかかってくる。やがて殺人鬼のナイフが襲い・・・とここで「スタブ6」とタイトルが。つまりここまでの出来事は劇中劇でした!そしてまた、二人の女子が映画を見てる場面、おお、今度はアナ・パキンとクリスティン・ベルだ。豪華だな、とか思っていると、突然、クリスティンがアナの腹をナイフで刺す!そして「スタブ7」のタイトルが!これまた劇中劇か!そして3度目の女子二人の画面へ。この時点で「もしかしたらこれが一生続くんじゃないか」という不安に駆られる。同時に本家本元の「スクリーム」のはずなのに「最終絶叫計画」シリーズを見ているような錯覚に陥る。
1作目の「スクリーム」はスラッシャー映画の中興の祖であり、僕が「学園映画」の面白さに目覚めた作品でもある。過去のホラー映画の薀蓄を語りながらホラー映画そのものを脱構築する。たとえば「すぐ戻る」は殺される伏線だ、とか。犯人のゴーストフェイスは同じ仮面の殺人鬼でもレザーフェイスやジェイソン・ボーヒーズ、マイケル・マイヤーズのような超人ではなく普通の人間(瞬間移動したように見えたりするのは複数犯だったりするからだ)。
冒頭のドリュー・バリモアが「13日の金曜日」第一作目の殺人鬼は誰だ?と電話で質問されて「ジェイソン」と答えたために殺されてしまうシーンは有名(実際の答えはジェイソンの母親パメラ、2作目以降(例外あり)がジェイソン)。
ネーヴ・キャンベルやコートニー・コックスはこの作品でブレイクした。(追記:ブクマで指摘をいただいたのだけどコートニー・コックスはこの前にTVシリーズ「フレンズ」ですでにブレイクしていた。そういえば当事、無名キャストの中で唯一のスター!みたいなふれこみがあったのを思い出した。また彼女だけギャラの桁が違ったとか言われてたはず)
一番重要なのはそれまでいそうでいなかった作品に突っ込みを入れるオタクキャラでランディを演じるジェイミー・ケネディ。彼が観客と同じ立場に立っているので分かりやすくなっている。
脚本はこの作品で一躍有名になったケビン・ウィリアムソンで、本シリーズの後も「ラストサマー」や「ドーソンズクリーク」などを手がけている。僕は2作目までは劇場で観たがウィリアムソン脚本でない3作目は未見。
で、主人公は命を狙われる側であるシドニーで、1作目では高校生だったが2作目では大学生、3作目は社会人と成長を続けている。今回の4作目はシドニーがウッズボローに戻ってきて母の姉のところに厄介に。そこには高校生の従姉妹がいて、という展開でその従姉妹ジニーを中心に、シドニーやデユーイ、ゲイルといった過去のキャラクターと同時に新しいティーンを前面に出している。
ネーヴ・キャンベルは相変わらず力強い美しさ。一時期肝っ玉母さんみたいに太ってた気がするが、ティーン役の俳優たちと並んでも全然問題なし。もともと華奢とは縁遠い筋肉質なタイプだとは思うけど。
逆にちょっと心配なぐらいの痩せ方をしていたのがゲイル役のコートニー・コックス。この人はTVシリーズ「フレンズ」が有名だけど個人的なベスト作品は「スコーピオン」。とはいえ、かつてのリポーターとして活躍し「スタブ」の原作者として活躍した過去に対して田舎でくすぶってる現在に耐えられない、という神経質な様子はよく表現されているかも。
で、ゲイルの夫で頼りない保安官補だったデューイは保安官に出世。あからさまに彼に色目を使う美人保安官代理がいたりと何かと頼られる存在に。しかし!ネタばれ上等だがデューイはまったく頼りにならない!デューイはどこまで行ってもデューイ!ちなみにコートニー・コックスとデューイ役のデイヴィッド・アークウェットはこのシリーズでの共演がきっかけ結婚しました。
ティーン役の俳優たちはジニー役はエマ・ロバーツ。シドニーを受け継ぐ黒髪地味系美少女。後半とある出来事以降はベッキーに良く似ている。そのほか「ヒーローズ/HEROES」の不死身のチアリーダーことヘイデン・パネッティーア*1。そして常にマリファナを決めたような眠たい顔をしている見覚えのある顔があったのだがこれがカルキン兄弟の末っ子*2。そのほか有象無象の輩がたくさん。
劇中で「スタブラソン大会」があるように「スクリーム2」で登場した劇中劇「スタブ」が重要な要素となっている。このシリーズ、ホラー映画とかに詳しいオタクが欠かせないのだが、地元発のホラーシリーズ「スタブ」が一般に消費され続けた結果若い子を中心に地元の人間はみんなそこそこホラー映画に詳しくなっているのだな。一応二人組みの映画オタクが登場するのだが女の子や警官とかもホラーの法則を知っていたりするのだ。警官二人が「すぐ戻る。・・・くそ”すぐ戻る”って言っちまった!」とか会話してたりする。電話によるホラー映画クイズも過去最高の正解率。
ただ、彼らにはやはりランディのときのようなホラー映画に対する情熱が感じられないのだな。携帯もネットもそれほど普及してなかった15年前と現代では情報と知識の重さが決定的に違う。広く浅く。
ちなみに「スタブ」第一作目(原作はゲイル)はロバート・ロドリゲス監督作、ドリュー・バリモアの役にヘザー・グラハム、シドニー役にトリ・スペリングという設定である*3。実際に見てみたいかも。
先ほども述べたとおりこのシリーズの殺人鬼ゴーストフェイスは特定の個人ではない。そこで正体は誰なのか、というミステリーの要素もある(もちろん本格ミステリーではないので粗を探せばきりはない)。また劇中でも述べられるとおり、今回は1作目をなぞっている部分も多い。なので1作目を思い出しながら「誰が正体かな〜」とか考えながら見ていた。1作目はシドニーの恋人であるスキート・ウールリッチ(当時ジョニー・デップの再来とか言われたがその後特に目立った活躍なし)が犯人だったのでジニーの元恋人トレヴァーが怪しいなあ、とか保安官代理が怪しさ満開だなあ、とかいろいろ考えていたのだがある意味予想つかない展開。とはいえ犯罪思想の安っぽさはこのシリーズならでは!結局世代交代はあいまいになってしまうのだった!なので「ネクスト・ジェネレーション」て邦題はどうかと思ったよ!
なんだかんだ言ってもアメリカではハロウィンの定番コスプレとなっているようだし、「スクリーム」シリーズとゴーストフェイスは映画史に名を残す存在だろう。二つも殺人鬼シリーズ作ったウェス・クレイブンはやっぱり凄いね!
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劇中劇やホラー映画お約束の脱構築のしすぎでなかなか分かりにくいことになっているのだが作品自体は面白かった。2度目3度目見ればその都度新しい発見があるんじゃないかな。
でも、やっぱり、2作目でランディを殺したのはシリーズのシリーズ最大の失敗だったと思うのよ!