浮世の夢か 映画映画ベストテン!
早いものでもう12月、2018年も終わりです。来年は天皇代替わりで平成も終わりだとか。いやもう今年が平成何年なのかもよく知らない感じですが、そういうわけで、世間では色々節目の記事や催しが目立ちます。僕などは昨日、なぜか今が閏年の2月の29日だと勘違いして、明日で今月も終わる!と絶望していたら夕方辺りで「あ、今は11月だ。まだ明日も30日じゃん」と気づいてホッとする出来事がありました。いやあ疲れてるな。
今年はほぼブログ更新がストップして、2~3ヶ月分の映画観賞分をまとめてあげる、ということが中心になっています。なんとかしなきゃなあ、と思いつつどんどん更新頻度が落ちて行く・・・
さて、年末ということだと恒例のワッシュさん( id:washburn1975 )の映画ベスト企画です。
今年は「映画映画」ということで映画製作の現場が舞台だったり、主人公が映画人だったり。あるいは映画ファンの話でも良いとのことなので結構間口は広いけれど、例えば「プロデューサーズ」とかはあれは舞台ミュージカルの話だから対象外だし、と実は結構迷いました。でもトップ3を決めたら後はそれにつられてどんどん思い出して一気に決まった感じかな。今回は特にワッシュさんの決めたルール以外の自分で定めた制限は無し。全部無難に「映画映画」だと思います。それではまずはベストテン一覧を。
- エド・ウッド(1994年 ティム・バートン監督 アメリカ)
- キング・コング(1933年 メリアン・C・クーパー&アーネスト・J・シュドーザック監督 アメリカ)
- セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ(2000年 ジョン・ウォーターズ監督 アメリカ)
- ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲(2001年 ケビン・スミス監督 アメリカ)
- エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア(1994年 ウェス・クレイヴン監督 アメリカ)
- 喜劇王(1999年 チャウ・シンチー監督 香港)
- トロピック・サンダー/史上最低の作戦(2008年 ベン・ステイラー監督 アメリカ)
- イングロリアス・バスターズ(2009年 クエンティン・タランティーノ監督 アメリカ・ドイツ)
- 僕らのミライへ逆回転(2008年 ミシェル・ゴンドリー監督 アメリカ)
- スクリーム(1996年 ウェス・クレイヴン監督 アメリカ)
わりと年代的には 1990年代~2000年代に偏っています。一本だけ1933年という古い作品があるけれど、これは同時に2005年のリメイク版も込みなところがありますのでやはりこの年代15年ぐらいの間に収まっていますね。「映画映画」という以外のジャンル的傾向だと直接映画製作そのものを題材にしたノンフィクションは1位の「エド・ウッド」ぐらいで後は映画制作の現場で何かが起きる物語という感じでしょうか。それでは作品ごとに簡単な解説を。
ティム・バートン監督の白黒映画。「史上最低の映画監督」というありがたくない称号を持つ実在のB級映画監督エドワード・D・ウッドJr.の最も楽しかった頃を切り取った伝記映画。このエド・ウッドの監督作品は僕も「プラン9・フロム・アウタースペース」と「怪物の花嫁」は見たことがあるのだけれど、普通につまらないです。カルト映画を見てやろう、という気構えを持ってしてそうなのだから普通の観客には尚つらい。そんなわけなので映画監督としては成功せず、赤貧のうちに亡くなったそうなのだけど、のちに「アメリカ史上最低の映画監督」に選ばれたことでカルト的人気を博しそして作られたのが本作。脚本はこの後「ラリー・フリント」「マン・オン・ザ・ムーン」「ボブ・クレイン」そしてやはりティム・バートン作品となる「ビッグ・アイズ」など異能の人物の伝記映画の脚本を手がけたスコット・アレグザンダーとラリー・カラゼウスキーのコンビで本来はマイケル・レーマン(「ヘザース」「ハードロック・ハイジャック」)が監督、バートンは製作に回る予定だったらしいが題材があまりに好みだったため自分で監督したらしい(レーマンは製作総指揮)。
それも納得で、劇中のエド・ウッドと「魔人ドラキュラ」のドラキュラ伯爵として有名なベラ・ルゴシの晩年の友情と付き合いはティム・バートンとヴィンセント・プライスの関係を彷彿とさせるし、才能に決定的な差はあるものの、ウッドの作品はどう見たってバートン好みである。ウッドを取り巻く奇妙奇天烈な連中の描写も相まってとっても幸せなバートン映画だと思う。
またラスト近く行き詰まったエド・ウッドが逃げるようにある店に駆け込むとそこに何故かオーソン・ウェルズがいて彼に励まされてことを成し遂げる、というのはいぜんスタン・リーの追悼記事などでも紹介したケビン・スミスの「モール・ラッツ」のクライマックスにも共通するところ。
ちなみにこの時期長年コンビを組んでいたダニー・エルフマンと仲違いをしていたため、この作品は長編デビュー以降のバートン作品としては初めてエルフマン以外が音楽を手がけることと成る*1。でも担当したハワード・ショアの音楽が実にエルフマンしてるというか、見事に1950年代のSF映画っぽくて素晴らしい。
エド・ウッドは女装が趣味で特にアンゴラのセーターが好きだったらしいのだけど演じたジョニー・デップによるやっつけ女装も見どころ。
映画が誕生したのは1895年リュミエール兄弟のシネマトグラフによってとされる。それ以前にもエジソンが同じ原理の映写機(キネトスコープ)を発明していたが、これは一人一人が箱をのぞき込むとその中で動く映像が見れる、というもの。多人数に同時に観せる、というのがシネマトグラフの画期的なところであった。とはいえ当初は特に物語のないただそこにあるものを写しとる、ドキュメンタリー的なものばかりであったがフランスのジョルジュ・メリエスが特撮技術を見つけると、それを表現するのに物語性が求められ、いわゆる劇映画が誕生する。その後、サイレントを経て、トーキー、カラーと映画は進化していくのである。
1930年代、飛行機や旅客船などの発達で世界は大分狭くなったがそれでもまだ人々が簡単に海外旅行できる時代ではなく、映画は遠い外国の(できれば野蛮な方が良い)風景を観客に見せる役割も背負っていた。「キング・コング」はまさにそういう時代の作品。実際に作られた作品は海外ロケなどしていないだろうが、ウィリス・オブライエンの特撮技術がその代替となる。映画は山師的な映画製作者カール・デナムが食い詰めた女性アン・ダロウを連れ謎の島「髑髏島」へと映画を撮影しに行く。島の住民に目をつけられたアンはさらわれ島に住む巨猿コングへのいけにえとされる…
映画撮影が肝となっていて元々はゴリラとコモドオオトカゲを実際に戦わせる企画だったなどともいうし、監督コンビは実際にそういう世界中の未知をフィルムに収めてきた映画製作者であった。1933年のオリジナル版ではデナムは特に映画製作者として葛藤を見せてくれるわけではないが、その辺は2005年のピーター・ジャクソン版のジャック・ブラックが演じるデナムがいかがわしさもカリスマ性も備えたこだわりの映画監督として熱演しています。
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モンスターバースのリメイク版の時の感想記事。今後2020年にゴジラと戦う予定です。
さて、ここからは駆け足で。
- セシル・B/ザ・シネマウォーズ
悪趣味映画の帝王ジョン・ウォーターズの戦う映画映画。過激派映画監督セシル・B・ディメンテッドが仲間を引き連れ、テロなのか映画製作なのかほぼ区別がつかない過激行動を繰り返す。監督が何かのインタビューで、「でも彼らの映画が面白いとは思えないよ。だって彼らの中に編集がいないからね」というようなことをいたのが印象的。もちろん名前は大作映画の巨匠セシル・B・デミルから!
- ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
ケビン・スミス自身が演じるサイレントボブとその仲間ジェイ。この二人はこれまでケビン・スミス作品には欠かさず出てきた名脇役だったが、ついに主役へ。「チェイシング・エイミー」のベン・アフレックが自分たちをモデルにして描いた漫画「ブラントマン&クロニック」がハリウッドで映画化されるという。俺たちには何の連絡もなかったぜ!と二人はハリウッドに乗り込むのであった。タイトルは「スターウォーズ 帝国の逆襲」から。他にもスミスのコミック愛があふれていて、映画としてはわりとめちゃくちゃ。内容の過激度というか物議を醸した的な意味では「ドグマ」の方が上かもしれないがハチャメチャ度ではこちらのほうが上だろう。マーク・ハミル(拍手!)が自身が演じたコミックドラマ「超音速のヒーローフラッシュ」のヴィラン、トリックスターに似た悪役を演じる本人役として登場する。他にも本人役のカメオ出演が多数。この後2作品監督作が出てくるウェス・クレイヴンも出てます。
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- エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア
フレディ・クルーガーが夢の中で人々を襲うシリーズの番外編。「エルム街の悪夢」のリメイクが決定!かつてナンシー役を演じたヘザー・ランゲンカンプの周りで奇怪な出来事が起き始め、フレディ役のロバート・イングランドや監督のウェス・クレイヴンなどに相談。実はクレイヴンの書いたリメイク版脚本の内容が現実に起きていて、ついにフレディが・・・
という感じのまさに現実か虚構か、といった感じの一本。フレディ自体が夢の中の存在という劇中でも実在するのかいないのか曖昧なものであったがそれをさらに境界線を曖昧にした作品。
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続いて5~10位。
香港の喜劇スター、チャウ・シンチーの監督・脚本・主演作。この前の「食神」と本作で俳優としてだけでなく映画監督としても実力を付け「少林サッカー」でついに日本でもメジャーな存在となる。その一歩手前の作品なので、まだちょっと香港ローカルに特化しているというか、「少林サッカー」に比べるとチャウ・シンチーのどぎつい土着的な笑いの要素も大きく日本人が見てもちょっと引いてしまうかもしれない、でも売れない役者役のシンチーがブルース・リーの全力の完コピをするシーンなどは涙なしには見れませぬ。
- トロピック・サンダー/史上最低の作戦
戦争映画で成功しようと試みる俳優たちだが、ロケ地の本当の紛争に巻き込まれて、でもそれも映画撮影だと思い込んで…というベン・ステイラー監督・主演の戦争コメディ。ハンディキャップのある役柄で賞を取ろうとして顰蹙を買った落ち目の俳優や、白人なのに黒人の役をやろうとする演技派俳優などが出てきます。ベン・ステイラーでもお下劣系コメディの方なのでキツいと思う人もいるかも。ラストのトム・クルーズが全てをさらう。
クエンティン・タランティーノの映画は西部劇を除くと大抵映画への言及があり、ある意味でどれもが「映画映画」と言えないこともないんだけど、特に映画館そのものが舞台となっている事もあってこの超史劇「イングロリアス・バスターズ」を。クライマックスは映画館でのヒトラー暗殺(成功しちゃう!)。
まあでも本作は新たなスター、クリストフ・ヴァルツが世に出た作品として記憶されるでしょう。
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タランティーノも色々あったな…
レンタルビデオのテープが全部ダメになったので手作りで作り直し「スウェーデン製○○」として売り出したら大評判。という映画作りの楽しさを描いたような作品。映画紹介などでは「スウェーデン製と思い込んで…」みたいな言い方をされることも多いんだけど、借りる客側も分かった上で楽しんでるんだよね。あの大作がチープに生まれ変わる様子が楽しいです。
- スクリーム
スラッシャー映画中興の祖とも称されるウェス・クレイヴン監督作。これまでに作られたホラー映画のお約束をなぞったり逆をいったり。このシリーズは今のところ4作目まで作られているんだけど、続編ではこの1作目の事件が「スタブ」というタイトルで映画化されてて、それがシリーズを重ねている、というまたまたメタな展開。1作目は愛すべき映画うんちくキャラジェイミー・ケネディ演じるランディがいるので選びました。惜しい人を亡くした…
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「スクリーム4」の時の感想記事
こうしてみるとウェス・クレイヴン監督作が2作あるのは当然意識してたけど、なぜかジャック・ブラック出演作が多いですね(「キングコング」2005年版含む)。
世界にはまだ不思議なものがある。それを全世界の人に見せよう。取るのは映画の入場料金だけ。
カール・デナム(キング・コング)
記事冒頭のアンゴラ村長(違う)に対して記事を締めるのは「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)I Want to Break Free」の時の女王様たち。このPVでのクイーンの女装はフレディの発案だと思われがちだけどロジャー・テイラー発だそうです。どうりでロジャーだけ気合入っとる!でも髭のままやっつけのフレディの女装はエド・ウッドに通じるところもありますな。というわけで、次は「ボヘミアン・ラプソディ」感想書きます!
Bohemian Rhapsody - The Movie: Official Trailer
*1:その後バートンとエルフマンは元鞘に収まりもともとがミュージカル舞台だった「スウィーニー・トッド」以外ではエルフマンが音楽を担当している