母親たちのJAM(2)
少し前であるが、ヒナ氏の実家から手作りジャムが届いた。その数日後にわたしも母から手作りのジャムを渡された。正直にいうとめちゃくちゃ笑った。なんという偶然か。
しかも両者ともまったくメジャーでなく、調理法をしらべてもジャムしかないような植物(果実といえるのかも疑っている)のジャムをつくっていたのであった。ヒナ氏母のジャムはママレードみたいな見た目と粘性があり、トマトに近い味もしたけれど、なんだか罪深い味がした(同意は得られなかったけど)。母のジャムはブルーベリーに似た見た目と色であったが、水分が多くさらさらで、濃い紫色の液体はなににもとけずヨーグルトの上を這い落ちて墨汁を思わせた。口に入れると甘さがやってくるが、正月の黒豆に似ており、本体ではなく砂糖の甘さのようであった。
(お得です)
罪深ジャムは怖くて正直一度しか食べていない。よく考えたら他人の手作りのジャムってあんまり食べたくないなと思ってしまった。それは自分の母親でもちょっと気になったけどノルマと思ってその墨汁ジャムをフルグラとヨーグルトにかけて全部食べた。罪深いやつはいまだ冷蔵庫に眠っているが、それはヒナ氏のノルマだからわたしは知らないふりをする。
正月、実家に帰った折に完食した旨を伝えたら奥からもう一瓶出てきて持ち帰ることになった。これぞ母の愛……。そして大量にジャムをつくるときはその果実は持て余されているのだろうなと想像した。これはこの世の真理の一ではないだろうか。
またヒナ氏も実家にて罪深ジャムの元果実(果実とは思えないのだけど)のドライフルーツを饗されたとのことであった。保存される罪(でもあんまりおいしくなかったらしい)。やはり持て余されている。