ウェブ1丁目図書館

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身に着けた知識を活用するためにインバスケットをやってみる

知識はあるけども、それを実践に生かしきれいていないと感じている方は少なくないと思います。

よく勉強し、様々なことを知っているのに仕事で活用できないのは、なぜなのでしょうか。自分が身につけた知識が仕事や実生活で使えないのは、役に立たない知識ばかりを吸収しているようにも思えますが、それは大きな問題ではなさそうです。

持っている知識を十分に生かせないのは、アウトプットのトレーニングが、これまで行われてこなかったことが原因かもしれません。

インバスケットをやってみる

ビジネスパーソンのアウトプットのトレーニングの中にインバスケットという方法があります。

キャリアカウンセラーの鳥原隆志さんの著書『インバスケット実践トレーニング』では、「『インバスケット』とは、架空の立場になりきり、限られた時間内に多くの案件をより高い精度で処理するビジネスゲーム」と紹介されています。

例えば、自分が部長や課長になった場合、ある問題にどのように対処するのかをゲーム形式で考えるのがインバスケットです。本書では、ミニインバスケットがたくさん掲載されているので、職場で起こりそうな事態にどのように対処すべきかを気軽にトレーニングできます。

実際の職場では、限られた時間内に結論を出さなければなりません。インバスケットは、限られた時間でより多くの案件を精度高く処理する能力を鍛えるものなので、身に着けたインバスケット思考は、すぐに職場に生かすことができます。また、インバスケットは、今現在の自分の仕事を映す鏡ともなり、自分の思考の癖を知ることにも役立ちます。

インプットした知識が役立っていないと感じるのは、自分の思考に癖があり、その知識を上手に使えていないだけかもしれません。インバスケットを経験すれば、インプットした知識を上手にアウトプットできるようになることが期待できます。

緊急と重要のどちらを優先すべきか

では、本書に掲載されているミニインバスケットをいくつか紹介します。

仕事をする順番を決めなければならない場合、どれを優先するか迷うことがあります。

  1. 最も古い案件から片づける。
  2. 締め切りが近い案件から片づける。
  3. 簡単に終わる案件から片づける。
  4. 重要な案件から片づける。


上の選択肢の中から、1つ選ぶとしたら、どれを選びますか。

律儀な人なら、「2」の締め切りが近い案件を先に片づけるかもしれません。また、難しい案件は時間があるときに片づけるべきだと考えて「3」の簡単に終わる案件を優先する人もいるでしょう。

でも、この場合、優先しなければならないのは、「4」の重要な案件です。

パレートの法則という法則があります。これは、2割の優秀な従業員によって8割の利益が得られているとか、2割の得意先によって8割の売上がもたらされているといったように2割のものによって全体の8割の成果が出ているという法則です。

仕事においては、上の4つの案件を並列で扱うのではなく、最も重要な案件を優先することで、大きな成果が上がることが期待されます。例え、緊急性が高い案件であっても、重要性が低ければ後回しにしてもかまいません。

優先すべきは、最も重要性が高い案件です。

仮説で終わっていないか

商品の売上が落ち始めたとき、その原因が何かを考え対策を講じなければなりません。

その際、様々な仮説が思い浮かんできます。商品のブームが過ぎたのではないか、他社が同種の商品を販売し始めたのではないかとか。

会議に出席しているメンバーが、「きっとそうだ」と言っているから、売上減少の原因はブームが過ぎたことだと決めつけてはいけません。なぜなら、それは仮説であって、事実を何も調べていないからです。妄想ということもできます。

仮説は検証しなければ意味がありません。売上が落ちているのであれば、地域別や性別などで、実際の売上を調べる必要があります。若者向けの商品であれば、年代別にも売上を確認する必要があります。仮説を立てたら、必ず、それを立証する行動をとることを覚えておきましょう。

また、情報の種類には、定性情報と定量情報があることも知っておかなければなりません。定性情報は、聞き手により性質の異なる情報です。「少し」「もうすぐ」などは人によって受け取り方が違ってくるので定性情報になります。一方の定量情報は、事実を伝える情報です。売上高100億円や従業員数50名といった情報が定量情報にあたります。

意思決定は、定量情報に基づいてなされなければなりません。「少し」や「たくさん」などの定性情報では、例えば100個が多いか少ないかの判断が受け手によって変わり、誤った意思決定をする危険性があります。

最終的な意思決定は、定量情報に基づく自分自身の判断が大事です。


多くの知識を持っていても、それを十分に活用できていないのは、アウトプットのトレーニングを今までに行ってこなかったことが原因かもしれません。今まで行ってきた意思決定が、漠然とした情報に基づくものであったなら、それはアウトプットの仕方に問題があったと言えます。

本書は、ミニインバスケットでアウトプットのトレーニングをすることができますが、鳥原さんは、自分の判断スタイルについて「ほとんどの方が9割は変えなくても良い」と述べています。実際に本書に掲載されているミニインバスケットをやってみれば、8割や9割は妥当な答えを導き出せると思います。僕も、やってみましたが、42個のミニインバスケットのうち妥当な答えにたどり着けなかったのは、3問か4問でした。だから、9割は今のままでも問題ないと言えます。

ただ、ほんの一部を付け加えたり、省いたりすることで、より良い意思決定ができるようになりますから、ミニインバスケットをやってみて、自分の意思決定の癖を知り、1割だけ修正してみましょう。