くろいぬの矛盾メモ

旧・はてなダイアリーから移行しました。現在は「モフモフ社長の矛盾メモ」 をたまーに更新しています。

【新s】ニュースの格付け作業なんて専門家にアウトソースすべき

新聞社3社連合が作った、「新す(あらたにす)allatanys」(http://allatanys.jp/)が面白い。
古生代の海洋生物の学名っぽい凝ったネーミングも、個人的に気に入った。

「allatanys.jp → all at anys → a(朝日)n(日経)y(読売)の全て」
そして、「News → 新+s → あらたにす」。
字面は微妙だが、意味づけと響きは良い。


しかし、世のブログやソーシャルブックマーク界隈では、かなり叩かれている。
いわく、「RSS配信も無いのか」、「個人のマッシュアップサイトかと思った」、「Googleニュースで充分」。

はっきり言ってしまえば、「あらたにす」は間違いなく失敗する。かつて共同通信と地方紙連合が立ち上げた47NEWSと同じくらい、過疎状態になる。なぜダメかと言うと、RSSに対応していないのも驚いたが、構成自体が新聞といったマスコミの論理から1ミリも抜け出せていない。

■マスコミの人間が決定的に理解できないネットの本質 〜朝日、日経、読売3社連合「あらたにす」を見ての感想〜


かくいう自分も、一瞬そう思ったのは確かだ。
しかし、しばらく見ていて、その考えを改めた。


「あらたにす」は、『トップニュースの順位が固定されたニュースサイト』だ。
ランキングではないので、2面記事はどんなにアクセスが集まっても2面記事のままだ。
そして、その順位は各新聞社が威信をかけて、格付けしたものだ。


リアルタイムの新着順や人気順ランキングといった、「格付けアルゴリズム」に頼りきった
凡百のネットニュース群の中で、編集者が責任を持ってつけた「不変の順位付け」というのは
それだけで充分存在価値がある。


ニュースソースに対する「編集と格付けの権威」としての新聞社がやるべきことを、
しっかりやろうとしていて好感が持てる。


だから、RSSを配信しないのは「編集と格付け」にこそ、サイトの存在価値があるのだという
純粋な「意志」による判断だと思う。
(これで、思い出したようにRSS対応しちゃったら、単なる買いかぶり過ぎだったことになるが)


逆に、ユーザーやマッシュアップサイトに編集権を渡したらGoogleニュースなどに取り込まれるだけ。
どこのニュースサイトにもある、細切れのニュースソースとしての価値しかなくなる。
いや、細切れのニュースソースに価値が無いと言ってるわけではない。
ニュースソースをネタに、ユーザーが作るコンテンツだって、共感が持てるしすごく面白い。
どんな動画でもネタにして盛り上がれる、ニコニコ動画みたいなもんだ。


ただ、最近は、

「自分の頭で雑多な情報を格付けすること」
に疲れて来た。



毎日RSSをチェックして、面白いエントリーははてなブックマークに入れて、コメントして。
でも、すげー無駄な作業をしている気がする。「情報収集している」行為に酔ってる気がする。
そもそもニュースの格付けって、専門家にアウトソースすべき部分じゃないのか? ってこと。


もし、自分に近いセンスを持ち、興味分野が重なっていて、なおかつ情報収集に
精力的なブックマーカーがいたら、自分でRSSをチェックする日々の儀式なんて辞めて、
そいつのソーシャルブクマだけをRSSで購読したい、と思ったことはないか?


いわゆるコンシェルジュって奴だ。
しかし、自分と同じ価値観で抽出した情報だけだと、偏ってしまい進歩が無い気がする。
だったら、その道の権威が抽出して、責任を持って格付けした情報が欲しい。
特化したジャンルなら、その道の専門家のブログやブックマークを見ればいい。
でもニュース一般を、ニュースの専門家の目で抽出して欲しいとしたら?


あれ、これって一回りして、旧メディアに戻ってないか?
コンテンツとしては、戻っている。ただし、ウェブで配信されている。そういうことだ。
メディアや技術の進歩ってのは、何度も一回りして同じところに戻る。
そして、すこしづつ上っていく。そうだ、螺旋階段だ。天を突くドリルだ!


こう例えてみよう。
ミシュラン・ガイドがオンライン化したら、どうなるだろうか?
きっと、コメント機能や、リアルタイムのランキング機能は絶対に実装しないだろう。
そんなことをしたら、格付けの意味がなくなってしまう。



新聞社は、長年続けてきたニュースの編集・格付けのエキスパートだということに、
もっと自信を持っていいと思う。
今までは、ネットに対抗して、手っ取り早く儲かる部分=コンテンツ販売や広告配信、
ってとこだけに目を向けすぎてたんだと思う。


ただ、ネットユーザーの開拓はすごく大変なのは間違いない。
CGM、SBM、マッシュアップ大好き!のいわゆるギーク層には、全く受けないだろうから。
専門家によるニュースコンシェルジュの価値を一回り回って理解している層なんて、もっと少ないだろうし。
そうなると、ネットではYahooしか見ないようなユーザー層を中心に呼んでくるしかないわけで。
下手すると、新聞を購読している客を減らすことにもなりかねない。


強みを活かす戦略としては悪くない。競合と同じことやっても意味が無いし。
ただ、市場開拓とか啓蒙とか、そういうレベルから始めないといけないのは厳しい。
SWOT分析は出来ているが、マーケティングをもっと頑張らないと、って感じ。
ていうか、一番の課題は集客だな。


次の一手は、どうするべきか。
自分が運営者なら、あらたにすトップページと全く同じ画面のHTMLメルマガ配信サービスをする。
「朝刊、夕刊配達!3誌の記事が読める購読無料のWeb新聞」とか称して、ビジネスユーザー向けに。
営業職で毎日の商談用のネタ集めとかをするなら、ネットニュースやRSSで一覧するより、
ダイジェスト版ニュース配信の方が効率いいでしょ。
もともとメルマガって、すごく新聞に近いメディアだと思ってたんだよね。


そんなわけで、あらたにす。
ランキングアルゴリズム 対 新聞記者、の編集対決。
Googleニュースへの正式な果たし状。
願わくば、採算があわなくても、しばらく続けてほしい。


今後も注目です。

※なんとなく、あらたにすは踏み台になってつぶれて、フォロワーのどっかが成功しそうだが。